TRIP 腐的妄想

某5人組アイドルの腐的(BL)妄想小説です。成人女性限定でお願いします。

つなぐ 二十六帖

つなぐ



「狐殿の言う通り、雅紀さんのご飯も食べ、青菜も飲み込み、

 すこぶる美味しい私ができあがりましたよ。」

櫻井がにこりと笑う。

「狐殿も……そろそろ本当の食事をしないと……。」

男は笑いながら、茶碗を片づけ始める。

「お前はそんなにわしに精気を吸われたいのか?」

「そうではありませんが……。」

櫻井も男に倣って茶碗を重ねる。

「それとも、口を吸われたいだけなのか?」

男がにやりと笑う。

「狐殿の体が心配です。」

男は、ふんと鼻を鳴らす。

「さっきだって、結局精気は吸われなかった……。

 突然倒れたりしても知りませんから。」

櫻井は全部の茶碗を盆に乗せると、土間へ下り、流しへ運ぶ。

その背中に向かって、男が声を上げる。

「お前に育てられているから、あいつがああなるんだ。」

「あいつ……?雅紀さんのことですか?」

「そうだ。あいつが周りに気を遣い過ぎるのはお前の影響だな?」

「そんなことはありません。雅紀さんは最初から心優しい、気の回る子でした。」

櫻井は、出会った頃を思い出したのか、懐かしそうに優しく笑う。

「泣いて、私にしがみつくあの子はとても可愛らしかった。」

男はまた、ふんと鼻を鳴らす。

「その可愛い子は……鬼の子だ。」

「わかっています。この先、あの子がどんな道を辿るのか、

 それは私にもわかりません。でも……。」

「でも?」

櫻井は流しに茶碗を置き、両手を掛ける。

「あの子が一人でも強く生きていけるように……。

 星があの子を導いてくれる……。」

「その前に、お前だ。」

男は櫻井の後ろに立つ。

「わしに精気を吸われれば……お前の寿命は短くなる。

 ……わかっているのか?」

「……わかっています。

 それでもあなたは生きなければいけない……。

 それが星の決めた運命(さだめ)……。」

「いいのか?それで。」

「はい……。私ごときが何を言っても狐殿には理解できないかもしれませんが……。」

櫻井は振り返って男を見つめる。

その頬に、そろっと指先を這わせ、手の平で包む。

「生きて欲しいと、私が思うのです。

 たとえ、私の命が尽きようとも……。

 そして、あの子を……見守ってあげて欲しい……。」

男は片頬を上げ、櫻井を見つめる。

「全てはあの鬼っ子の為か?」

櫻井はクスッと笑ってもう片手も頬に添える。

「最初はそうでした……。

 どうあがいても、私はあの子より先に逝ってしまう。

 あの子は鬼の子であるだけでなく、珍しい……治癒の力も持っています。

 あの子の作る薬は、ただの薬ではありません。

 薬草本来の効能よりもより高い効果を発揮する……。

 良き人と一緒にいれば、それは良き力となるはず。

 ですが、もし、そうでなければ……。」

「悪用されることを恐れているのか?」

櫻井は小さくうなずく。

「それもあります。それよりも、その力を巡って争いが起こることが……怖いのです。」

男は櫻井の手の中で溜め息をつく。

「鬼の寿命は長い。軽く人間の3倍は生きるぞ。」

「はい。だから、狐殿に会いに行ったのです……。」

「なんだ、やはり鬼っ子の為か……。」

男は櫻井の気持ちを推し量るように、じっと瞳を見つめる。

「最初は……。」

櫻井は困ったように笑って、男の頬を撫でる。

「あなたくらいの力があって、あなたくらい生きられれば、

 あの子の力になれる……そう思っていました。

 もちろん、今もそう思っていますよ。」

櫻井の指先が優しく男の頬をなぞる。

「あなたへの任が下りた時、星も輝いていました。

 これは天命なのだと思いました。」

「ふん、わしに天命など、糞くらえだ。」

櫻井は微かに笑って、男の頬を撫で続ける。

「あなたなら、そう言うと思ってました。」

撫でていた指を目の形に合わせて添わせる。

「でも、あなたに会って……、星の輝きの意味が違うことがわかりました。」

「なんだ、何が言いたい?」

「雅紀さんのことだけではなかったのです。」

「……どういう意味だ?」

「それは……きっとあなたにもわかっているはず……。」

櫻井はそう言って男の唇に唇を重ねる。

男が軽く口を開くと、櫻井の両手に力が入る。

男の顔を固定し、愛おしそうに舌を絡ませる。

柔らかく、優しく、男のそれと絡め合いながら、徐々に奥へと忍ばせていく。

男の舌も、愛撫するように緩急を付けて櫻井の舌を転がしていく。

唾液が溢れ、クチュッと音がすると、男の頬を押さえていた櫻井の手が男の背に回る。

男の腕も櫻井の腰を抱き、二人は縺れるように唇を合わせ続ける。

「んっ。」

「……ぁっ。」

次第に激しくなる口づけに、男は櫻井をじわじわと居間の方へ押しやる。

ゆっくり後退りする櫻井の背が戸板に当たると、

二人の体がよろめきながら畳の上に重なり合った。










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つなぐ 二十五帖

つなぐ



遅い帰宅に雅紀の小言が一通り続く。

「もう、いいですから、さっさと食べてください!片付かないんだから。」

「はいはい。」

櫻井が笑って、並べられた夕餉の前に座る。

男も続いて胡坐をかく。

雅紀も茶碗を持って、櫻井の隣に座る。

三人で囲む夕餉。

「こんな時間じゃお腹も空いてるでしょ?たくさん食べてください。」

怒っていたはずの雅紀が二人を気遣ってくれる様が、妙に可愛らしく、男の笑みを誘う。

「ほら、翔さん、ちゃんと青菜も食べてくださいね。

 そうやってすぐ避けるんだから!」

雅紀が櫻井の皿を覗き、目を吊り上げる。

「はははは。お前は鬼っ子にやられっぱなしだな?」

笑い過ぎた男が、飯粒を飛ばしそうになって、慌てて口元に手を添える。

「そうなんです。雅紀さんはしっかりしてるから。」

櫻井は、楽しそうにご飯を頬張る。

「まぁ、生きてる年数はそう変わらないからな?」

男は、口に着いた飯粒を摘み、雅紀と櫻井を交互に見る。

「そうですねぇ、鬼は成長が遅いから。」

モグモグと口を動かし、愛おしそうに雅紀を見つめる。

「体の成長は遅いかもしれないけど、翔さんよりは生活能力ありますよ。」

「その通りです。私は雅紀さんにずっと助けられっぱなしです。」

櫻井がにっこり笑うと、雅紀の頬がポッと染まる。

「そうそう、雅紀さん、お願いがあるのですが。」

雅紀は箸を止め、櫻井に視線を向ける。

「なんでしょう?」

「明日、お使いに行って欲しいのです。」

「お使い……ですか?」

「はい。薬を持って行ってもらいたいのです。

 和也殿がいらっしゃるから、渡してもらえれば……。」

「どなたか……お加減が悪いのですか?」

「ええ、まぁ……。」

櫻井はチラッと男を見、男も櫻井に視線を返す。

この国の帝の容体が悪いなど、口に出していいことではない。

二人の様子を見て、これ以上の詮索はしない方がよさそうだと、雅紀は味噌汁に手を伸ばす。

「わかりました。明日、早い時間に行って来ます。」

「雅紀さんは賢い。」

櫻井が楽しそうに笑うと、雅紀は味噌汁を見つめ、静かに口を開く。

「そんなことありません。翔さんと一緒にいると、いやでもそういうのが身に着くんです。」

ズズッと味噌汁を啜る雅紀に、櫻井が困ったように眉を下げる。

「いや……ですか?」

男が声を立てて笑う。

「そりゃそうだ。こいつはなんだか隠し事が多そうに見える!」

「そんなことはありませんよ。雅紀さんにも狐殿にも、隠し事なんかありません。」

「本当か?」

男が雅紀に目配せする。

雅紀も額に皺を寄せ、首を捻る。

「本当ですよ!雅紀さんも狐殿も信じてくれないんですね!」

「信じられるか!」

「信じてください。私は嘘はつきません。」

「嘘はつかなくても。言わないことはあるだろう?」

櫻井は苦笑いし、青菜をひとつまみ口に咥える。

口に広がる青菜の苦み。

櫻井の表情がどんどん曇っていく。

「ちゃんと飲み込んでください。出ないと栄養になりませんよ?」

雅紀に見つめられ、櫻井は無理やり味噌汁で青菜を飲み込む。

ゴクンと、喉が動く。

「ちゃ、ちゃんと飲み込みましたよ。」

櫻井は渋い顔で笑って、さらに味噌汁をかっ込む。

男はクスクス笑い、雅紀も顔中を笑顔にする。

「な、なんですか。二人して。」

「いやぁね、可愛いなぁと思ってね。」

櫻井は口を尖らせ、男を見つめる。

「そりゃ、1000年を生きる狐殿から見たら、私なぞまだまだ赤子のようなもの。」

「そうでもないぞ?」

男がふふんと意味深に笑う。

その視線に、まるで丸裸にされたような恥ずかしさを感じ、櫻井の頬が染まる。

「明日もいろいろとやることがあります。

 さっさと済ませて床につきましょう。」

櫻井は最後の味噌汁を飲み込んで、雅紀を見る。

さっきまでは怒っていて、そうでもなかったが、この時間だ。

腹に食べ物が入った雅紀は、さすがに眠そうだ。

「狐殿の蒲団の用意は私がしますから、雅紀さんは先にお休みなさい。」

櫻井がにこっと雅紀に笑いかける。

「でも、洗い物も……。」

「いいさ、それくらいわしがやっておいてやるわ。

 子供はさっさと寝てしまえ。」

雅紀はどうしたものかと櫻井の顔を見る。

櫻井はにっこり笑って小さくうなずく。

「では、お言葉に甘えて……。」

雅紀は箸を置き、立ち上がる。

「お前は気を遣い過ぎる。」

男が雅紀を見上げる。

雅紀は不安そうな顔で男を見返す。

「……私は……翔さんに助けられたから……。

 少しでもお役に立つなら……。」

「そんなこと、考えなくていいんですよ。

 雅紀さんはいるだけで私の役に立っているんですから。」

「いるだけで……?」

「そうですよ。いてくれるだけでいいんです。」

櫻井が穏やかな笑みを湛えると、雅紀はカッと頬を染め、逃げ出すように部屋を出て行く。

「あいつ……お前に気があるんじゃないのか?」

「……雅紀さんの星は私に向いておりません。」

櫻井は魚をちぎって口に運ぶ。

「じゃあ、どこに向いてるんだ?」

「それは……。」

「お前の星も……どこへ向いている?」

櫻井はそれ以上答えず、庭の先に見える空を見つめる。

月が昇り始めた頃、西に輝く星は、今は見えない。

ふぅと小さく息をつき、男に視線を向けた。










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Love so sweet №85

Love so sweet(やま)【81~ 】



「今日はさ、しゃけと~、冷ややっこと、焼き茄子。」

「なに?焼きもち妬いてくれるの?」

「違う、違う。焼き茄子!生姜のせていい?」

「いいねぇ。ビールがすすむ!」

「焼き茄子ってさぁ、焼いて、熱い内に皮剥いて……。」

「皮、剥いちゃう?(笑)」

「(ムッ)剥くのは茄子!」

「ごめんごめん。」

「……熱いのを頑張って綺麗に剥くじゃん?

 指先が熱くってさ。」

「智君、熱いの苦手だもんね。」

「(笑)手間がかかるのに、小鉢みたいな扱いで~。」

「俺は智君、メインディッシュよ?いつも!」

「……だ~か~らぁ~!(キッ!)」

「ごめん、ごめん!続けて……(シュン……)。」

「……食べるとさ、二口くらいで無くなっちゃうくらい旨いじゃん?」

「そうだねぇ、俺はじっくり味わいたいけど……。」

「……翔君、また違うこと考えてる?」

「いえいえ、焼き茄子の話よ?智君の茄子の話じゃないよ?」

「……翔君?(ジロッ)」

「ごめんなさい……もう言いません……。」

「絶対だかんな?」

「はい……(シュン)。」

「(チラッ)……食べるとさ、茄子の汁が、ジュワッと広がるのがまたいいんだよね~。」

「し、汁……?ジュルッ?」

「……もういい。」

「ごめんごめんっ!智君とゆっくりできるの、久しぶりだから、ついさ。

 ……ね、こっち向いて?

 ……もう言わないから~。

 ……智君?」

「さっきもそう言わなかった?」

「本当!もう絶対言わない!」

「(チラッ)本当に、もう言わない?」

「言わない、言わない!」

「……おいらね、こうやって、穏やかな普通の日が、

 これからもずっと続いて欲しくてさ。」

「そうだねぇ。続くといいね。」

「翔君と向かい合ってご飯食べて、ビール飲んで。」

「智君と一緒にシャワー浴びて、ベッドに入って……。」

「(ギロッ)……翔君?」

「え、いや……本当のことじゃん。それが俺らの穏やかな日常でしょ?」

「そうだけど……。」

「これからも、そんな日が続くように、ビール出しますか?」

「ふふ、いいねぇ。」

「嵐も結成18年。」

「19年目もどうぞよろしくお願いします(ペコ)」

「こちらこそ(ペコ)」

「「かんぱ~い!」」

「じゃ、食べて飲んだら、シャワー浴びますか!」

「まだ、食べ始めたばっかじゃん!(笑)」

「穏やかな時間は、できるだけゆったり過ごしたいじゃん?」

「あ……しょぉく……。」

「……ゆっくりのんびり……。」

「ん、んんっ……。」

「(クチュ)穏やかに……。」

「……これは……穏やかじゃない方が……あんっ……いぃ…か……もっ!」

「ふふふ。じゃぁ、激しく、大胆に、19年目も……。」

「ぁあんっ。」



『ピンポーン』



「(ムクッ)……誰?」

「まさか……。」



『来たよ~っ!』

『今日はリーダーんちって言ったじゃん!』

『二人でしっぽりしようとしたって、そうはいきませんよ!』

『早く開けて!いろいろいっぱい持ってきたんだから!』



「しょうがないなぁ。」

「いいよ、いいよ、ほっておけば。」

「来ちゃってるのに?」

「勝手に来た方が悪い!」

「いいじゃん。結成18周年だもん。みんなでお祝いしよ。

 まだ焼き茄子も残ってるし。」

「……智君は、三人に甘すぎる!」

「そうかな?」

「そうだよ!」

「おいらは……翔君に一番甘いと思うけど?(チュッ)」

「智くぅ~ん♪」

「(ニコッ)入っていいよ~。翔君もみんなとお祝いできるの、嬉しいってさ。(ポチッ)」

「俺、一言もそんなこと言ってないけど。」

「顔が言ってる!(チュッ)」

「智くぅ~ん♪」



「やっと入れた!」

「お祝いお祝い!」

「結成18周年、おめでと~!」

「「「「「おめでとう~っ!!」」」」」



「今年も、みんな健康で!」

「俺と智君の邪魔はしないように!」

「そんなの無理っしょ?」

「邪魔してる気はないんですけど~。」

「ひゃひゃひゃ、邪魔なのは翔ちゃんの方でしょ?」

「う、うるさいっ!帰れ、帰れ!」

「「「絶対帰らないっ!(笑)」」」

「ハモった~(笑)」

「さすが、18年も一緒にいると!」

「せーの!しなくても合う~!(笑)」

「ささ、大野さん、夜は長いですから……。」

「お、ありがと。ニノ。」

「おおちゃん、この茄子、旨い~!」

「だろ?翔君、全然そういうこと言ってくれないから~。」

「そ、そんなことないよ。智君の作ったものはなんでも旨い!」

「だから、翔さん、そう言うのがダメなんだよ。

 全体じゃなく、もっと具体的に言わないと。

 例えばさ……リーダーの唇、食べちゃいたいくらい可愛いね。(ウィンク)」

「やんっ。松潤♡(ポッ)」

「離れろ離れろ!」

「リーダーリーダー、今度さ釣りの……。」

「大野さんの好きそうなゲーム、見つけて来ましたよ?」

「ええいっ!お前ら、智君から離れろ!」

「んふふ。19年目も、こうやってみんな一緒に楽しいといいね?」

「「「うん♪」」」

「……翔君は?(チロッ?)」

「…………俺も……思ってるよっ!」

「んはははは。みんなと一緒で、おいら嬉しい!」



いつまでも、5人でわちゃわちゃしていられるといいね!










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つなぐ 二十四帖

つなぐ



「腹が減ったな。」

男は月を見上げながら、腹を擦る。

帝は二宮に付き添われ、寝室に薬司を呼ばれた。

薬司では、帝の容体はわからないであろうが、

ボロボロの内臓を元に戻すには、養生するしか方法はない。

あるいは……。

櫻井はそう考えて男に目を向ける。

城からの帰り道、櫻井と男は川沿いに差し掛かかったところだ。

「雅紀さんが美味しいご飯を作って待っていますよ。」

「それまで待てん。」

櫻井はクスッと笑って、男を見つめ、立ち止まる。

男も釣られて立ち止まる。

「今日はありがとうございました。

 おかげで何事もなく妖を退治することができました。」

頭を下げる櫻井を見て、男が、ふんと鼻を鳴らす。

「わしは仕方なくやったまでのこと。

 約束は覚えているな?」

「はい、もちろん。結界も解除いたしましょう。」

「だが、その前に……。」

男が櫻井に近寄り、顎を掴む。

「わしは疲れておる……。」

男の顔が櫻井に近づき、唇が重なる。

重なった唇が、軽く開くと、男の舌が櫻井の舌を絡めとる。

繊細な舌先の動きに、櫻井の腹の奥が、ズクッと疼く。

掻き混ぜるように蹂躙し、味わうように舌先で櫻井を刺激し続ける男の舌に

思わず声が漏れる。

「ん、んんっ……。」

櫻井の呻き声が、さらに男を煽る。

男の舌先が、喉近くの上あごをくすぐると、櫻井の体がビクッと跳ねる。

気を良くした男が、櫻井の背に回した腕を腰の辺りまで下げ、グッと力を込める。

背が、弓なりに反らされ、口の中を男に良いように弄ばれたが、

櫻井は抵抗することなく、むしろ、誘うように舌を転がす。

櫻井の右手が、男の頬を包み、男の右手も櫻井の頬を包む。

愛撫するように唇を沿わせ、唾液を貪る。

絡めた舌から伝わるゾクゾクするような刺激が、二人を昂らせ、

頬に感じる手の温もりに、二人の胸の奥が掻き乱される。

男は絡めた舌を外し、唇が触れるほどの距離で櫻井を見つめる。

「お前は……旨いな。」

ふわりと笑う男の顔に、櫻井も笑い返す。

「狐殿も……。」

「ふふふ、お前ら人にはわかるまい。人には味がある。」

「味?」

「そうだ。こうやって吸ってみればすぐわかる。」

男はまた櫻井に唇を当て、舌先で歯列をなぞり、チュッと吸い付く。

「あっ……。」

不意をつかれ、無防備に合わせられた唇は微かに震える。

すぐに唇を離され、男がクスッと笑う。

「お前のは……甘く、いい香りがする。わし好みだ。」

好みと言う言葉に、櫻井の頬が染まる。

「狐殿は……口吸いが上手でございますな。」

「ふん、わしにとっては食事と変わらん。」

櫻井はクスクスと笑う。

「けれど……、まだ私の精気を吸ってはいないでしょう?」

図星を突かれ、男が櫻井から離れる。

「今すぐ吸ってやってもいいが……。」

男は一歩足を踏み出す。

「お前が一番旨い時に吸いたいからな?

 鬼っ子の飯を食ってからのがいいだろう?」

櫻井はクスクス笑い続ける。

「それはそうですが……。

 家に帰ってからでは、雅紀さんがいます。

 子供には目の毒……。」

櫻井が言い終らぬ内に男がクルッと振り返る。

「では、今、この場でいいんだな?」

男の手が櫻井の肩にかかる。

「そ、それは……。」

「なんだ、不服か?」

「不服と申しますか……。」

櫻井は恥じらうように視線を逸らす。

「なんだ、言ってみろ。」

男は櫻井の顎を掴み、自分の方へ向けさせる。

櫻井は躊躇うように下唇を舐め、男に視線を向ける。

「私の精気は……人より強くはありませんか?」

「……そうだな。確かにお前の気は強い。」

男が小さくうなずく。

「大事に使えば、当分の間、狐殿を満足させられやしませんか?」

「……だが、人とわしでは時の感覚が違いすぎる。」

「もちろん、人として、私が生きている間……と言う意味です。」

「ふん……。」

男には櫻井の言わんとすることがわからない。

イライラし出す男の首筋に、櫻井の手が伸びる。

「私が生きている間は……私以外から精気を吸わないで頂きたいのです。」

「…………。」

男は無言で櫻井を見つめる。

「私だけに……してはくださいませんか?」

櫻井の唇が男の唇に落ちる。

男は櫻井にされるままになりながら、ただ櫻井を見つめる。

男がじっと見ていることに気付いて、櫻井が唇を離す。

「いやですか?」

「いやではないが……、お前の寿命が短くなるぞ?」

「だから……ゆっくり味わってくださいな……。」

再び、櫻井の唇が男の唇に落ちる。

今度は男の腕も、櫻井の背に添えられた。










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つなぐ 二十三帖

つなぐ



音と同時に、白い物体が裂け、中から男が飛び出してくる。

「ったく、手間のかかる……。」

男は手を開いたり閉じたり、足を上げて動かしたりして、

自分の体が思う様に動くことを確認する。

男の足に着いている、割れた勾玉がシャラリと揺れる。

「狐殿、封印を解いたのですから、後はお任せしましたよ。」

「ふ……ん、封印は……ちゃんと解けているみたいだな。」

男は首をコキコキと鳴らす。

「封印さえ解ければ、箸を持ち上げる程度のこと。」

男が不敵な笑みを浮かべ、櫻井に向かって視線を送る。

それを見て、櫻井も笑い返す。

「ふざけるなっ!」

二人のやりとりを見ていた牛鬼が、また糸を吐き出す。

男は、一瞬の内に糸から逃げると、牛鬼の頭の上に飛び乗る。

「早いっ!」

思わず二宮が叫ぶ。

男の手が牛鬼の頭に翳され、軽く動かすと、牛鬼の体が痙攣し始める。

「う、うわぁ!」

「お前から手を出したのだ。仕方あるまい。」

牛鬼の体が徐々に小さくなっていく。

「や、やめてくれ~っ!」

「後悔しても遅いわ。」

男は、牛鬼の頭が小さくなり、足場が無くなっていくと、トンと飛び上がる。

空中で舞って飛び降りると、櫻井がほぅと息を漏らす。

「ぅあ~~!助けてくれ~っ!」

見る間に牛鬼の姿は無くなり、牛鬼のいた場所に残ったのは、小さな蜘蛛のみ。

蜘蛛は長い足を使って、フワフワと逃げて行く。

その蜘蛛を、二宮が追いかける。

「よくも帝を!」

「放っておけ。もう何もできぬわ。」

男が二宮を制する。

「しかし、また帝の前に現れては……。」

「心配するな。もう妖力も残っていまい。ただの蜘蛛に過ぎぬ。」

男は蜘蛛に向かって、フッと息を吹きかける。

小さな風が舞い上がり、蜘蛛を乗せてどこかへ連れて行く。

圧倒的な力の差。

これが1000年を生きる白狐の力なのか。

櫻井は男を見つめ、溜め息をつく。

部屋の四隅に貼られた人型の紙が、パラパラと落ちてくる。

「さて、これでわしに用は無かろう。」

男が櫻井の前までやってくる。

「……はい。お約束通り、結界も解除いたしましょう。」

「待て、櫻井!それでは……!」

叫ぶ二宮に、櫻井がゆっくり首を振る。

「心配しないでください。もう、狐殿は人に悪さをしたりしません。」

「そんなことわかるか!妖だぞ?」

「大丈夫ですよ。狐殿は精気を吸う為に人を騙しておりました。

 もう、その必要はないでしょうから。」

櫻井はにっこり笑って男を見つめる。

「お前……。」

「ん……んん……。」

二宮の言葉が終わらぬ内に、帝が顔をしかめ、声を盛らす。

「帝!」

それに気づいた二宮が帝に駆け寄る。

「お体は!?」

「……少し頭が痛いが、大事ない。」

帝はその場に座り直すと、右の頭に軽く手を添える。

「帝!」

二宮が、いろいろな角度から帝の体を確認していく。

「私は……どうしていたのだ?頭がぼぉっとする。」

櫻井は、帝の前に跪き、静かに口を開く。

「帝の……お優しさに妖が憑りついたのでございます。

 そうして、帝の精気を吸い続けておりました。」

「なんと……。」

「帝の体は弱っておいででございます。

 十分に療養を取って、体を御休めくださいませ。

 後ほど、私が薬を調合して参ります。」

「わかった……。疲れやすくなっていたのはそのせいか?」

「はい。体の内が疲れているのでございましょう。

 しばらくは、御政務もほどほどにし、養生することに励んでくださいませ。」

「うむ……そうすることにしよう。」

櫻井はゆっくり頭を下げ、立ち上がる。

「母上の夢も……全て妖の仕業だったのか?」

帝が櫻井を見上げる。

「はい……。」

櫻井は頭を下げ、目を伏せる。

「そうか……。」

帝は二宮の肩を掴み、立ち上がる。

「夢でも良いから……母上に会いたかった……。」

帝の悲しそうな顔に、櫻井がにっこり笑い掛ける。

「藤壺様は、いつでも帝のお側に……。」

櫻井が胸元から人型の紙を取り出すと、それにフッと息を吹きかける。

人型は大きくなり、藤壺の姿に変わっていく。

「母上……!」

「潤……、寂しがる必要はありません。

 わたくしはいつでもあなたと一緒におりますよ。

 そして……あなたにも、きっと愛する人が現れますから……。」

「母上!」

藤壺の体はスッと消え、人型がハラリと落ちる。

帝は、落ちた人型から視線を動かせず、二宮も寂しそうに人型を見つめた。










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嵐の大野君が大好きで、山LOVEです♪
腐っているので、ご理解のある方、
また成人女性限定でお願いします。

a Day in Our Life
    ↓
kissからはじめよう
    ↓
 Step and Go
    ↓
  果てない空

の順で続いています。
それぞれでも楽しめるようになっていますが、順番に読むと5人の成長がよりわかるのではないかと思います。

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何かありましたら、
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