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TRIP 腐的妄想

某5人組アイドルの腐的(BL)妄想小説です。成人女性限定でお願いします。

テ・アゲロ  the movie ⑨ scene25

テ・アゲロ  the movie


「シィ~、静かにね。みんな寝てるから。」

相葉は二宮を連れ、そっとダイニングに入って行く。

ダイニングにも隣のリビングにも誰もいない。

相葉はキッチンの電気を点け、鍋の蓋を開ける。

「あ、キムチだ。辛いの食べれる?」

二宮はうなずいて相葉を見上げる。

「よかったぁ。」

相葉は鍋に火を点け、冷蔵庫から豆腐を取り出す。

慣れた様子で鍋の用意をしていく相葉を、二宮はシンクに手をつき、ただ見つめる。

「すぐできるから。あ、そっちで待ってて。」

相葉はお玉で忙しそうに鍋を掻きまわす。

二宮は言われるままキッチンを周り、暗いダイニングに腰を下ろす。

明るいカウンター式のキッチンの中の相葉は、舞台に立つ俳優のように見える。

なぜ着いて来てしまったのだろう。

棚から皿を取り出す相葉を見つめる。

自分でも不思議でならない。

一人になりたくなかったのは事実だ。

だが、誰でもいいと言うわけにはいかない。

また、死体が増えてしまう可能性もあるのだから。

その点に関しては、大野には信頼感があった。

肉体的な強さと安心感。

あれだけ殴られても大した傷を受けなかった男だ。

もし自分が何かしても、大野ならなんとかしてくれるだろう。

そう思えた。

そして、一緒にいる時の穏やかな安心感。

理由はわからない。

気持ちが穏やかになっていくのは、今朝も感じた。

大野の胸で泣きたいだけ泣いたら、少し気持ちが落ち着いたのは、

大野の安心感も影響しているに違いない。

では、相葉はどうだろう?

店の客とプライベートで会うなど初めてだ。

店の外で会ったとしても、誰も声など掛けない。

暗黙の了解。

暗黙のルール。

トーマと出かけた先で、店で見かけた顔に何度か会ったこともあったが、

誰も何も言わない。

知っている雰囲気すら出さない。

そういう店だし、そういう客だ。

そう言えば一度だけ、トーマが客と会話したことがあった。

珍しく肉が食べたいと言い出したトーマに連れられ、

ホテルのレストランで食事した時のことだ。

最上階から見下す夜景に二宮が目を奪われていると、

通りすがりの男が何か落として、トーマが拾ってあげたことがある。

顔を見ると、店で何度か見たことのある顔で、二宮も数度、言葉を交わしたこともあった。

背の高い、温厚そうな初老の男だ。

といっても、まだ60手前だろう。

中折れ帽が似合いそうな男前だ。

ありがとうと一言だけ言って、知らぬ素振りで通り過ぎたが、

トーマが二宮の顔を見て、クスッと笑う。

「何落としたの?」

「小銭入れかな?」

トーマはシャンパンを口にする。

「あの人……政治家だよ。」

「政治家?」

「そう、とっても有名な。」

その後のトーマはとても上機嫌で、そのままホテルに泊まったのを思い出す。

そう言えば、あの男の顔、その後テレビで何度も見かけたな。

意識しないとおっさんの顔なんてみんな同じに見えるけど、

保守党の国会議員だったっけ……。

今も店に来てるのかな。

政治家が違法ギャンブルか。

でも、あの人は自分でやると言うよりは、誰かを連れて来てるって感じだった……。

賭け方も荒くなかったし……。

「お待たせ!」

相葉が両手に花柄の鍋掴みを付けて、鍋を持って来る。

「お腹空いたでしょ?食べよ、食べよ。」

カウンターに用意してあった取り皿と箸を取って、二宮に渡す。

「ありがと。」

二宮は箸を受け取り、相葉が鍋を分けてくれるのを待つ。

その間、改めてダイニングとキッチンを見回す。

キッチンから漏れる明りだけの室内。

雑多に積み上がった雑誌や紙類。

冷蔵庫に貼られたゴミ出しの分類……。

どうみても、あの店に通うような階層の人間には見えない。

どういう成り行きで一般人が紛れてしまったのか。

彼女、もしくは嫁がどこぞのお嬢様なのか?

「奥さん……私なんて連れて来て、大丈夫?」

二宮が、おずおずと聞く。

相葉が、きょとんとした顔をして、すぐに笑い出す。

「あ~、大丈夫大丈夫。俺、独身。これ、お袋が作ってくれたやつ。」

「え、ここ実家?」

「そうだよ。じゃなきゃ、ご飯なんてあるわけないじゃん。」

相葉がよそった器を二宮に差し出す。

「一人暮らししてんだけど、ちょっと訳あって、実家に戻ってる。」

相葉は自分の器にも豆腐や肉を取り、嬉しそうにフゥフゥする。

「あの店には……なんで?」

「それは……。」

相葉は、あっと思い出したように立ち上がる。

「ビール飲む?あの店で働いてるくらいだから……成人してるよね?」

思いの外若そうに見える二宮に、不安を感じる相葉を見て、二宮が笑う。

「大丈夫。これでも24。」

「よかった~。改めて見たら、十代にも見えるから、焦った!」

「さすがに十代は無理でしょ。」

二宮がさらに笑う。

「そんなことないよ?十分見えるから!未成年略取誘拐とか言われたら、俺大変よ!」

「んはは、それは大丈夫。自分の意思で着いて来てるから。」

自分の意思……。

自分はなぜこの男に着いて来てしまったのか。

「ほら、食べて食べて。ちゃんと食べないと元気でないからね。」

相葉の言葉に、ふと首を傾げる。

「元気……ない?」

相葉が、ん?と顔を上げる。

「なさそうに見えた。さっきは。」

相葉はガツガツと肉を口に頬張る。

「今は、そうでもないけど!」

相葉が口いっぱいに頬張ったまま、ニッと笑う。

ああ、この人にもあるんだ……安心感。

二宮は、なんとなく腑に落ち、皿の中の豆腐を口にする。

「……おいし。」

温かさが体中に広がっていく。

そんな二宮を見て、相葉はさらにニコッと笑う。










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テ・アゲロ  the movie ⑨ scene24

テ・アゲロ  the movie



相葉は暗い階段を下りている。

この店の入り口は、裏手にあって、通りからも死角になっている。

前回貰った黒いカードを当て、扉を開ける。

扉が開くと、いかつい男がにこやかな笑顔で迎えてくれる。

偽物の身分証と先ほどの黒いカードを見せ、笑ってみせる。

あまり口を開くと、付け髭が引きつるので、少し微笑む程度だが、

その方がセレブらしく見える。

男はうなずき、中へと手を差し出す。

相葉はカウンターでチップを用意してもらっている間、店内を見回す。

変装して来てはいるが、工藤に会ったらバレる可能性が高い。

この間のディーラーのテーブルに着きたい。

そう思い、早い時間にやってきた。

だが、ディーラーの姿は見えない。

「では、こちらで。」

チップを乗せたトレイを手渡される。

「あの、可愛いディーラーはいないの?」

「可愛い?」

カウンターの女性が首を傾げる。

「色白で、小さい……ここにホクロのある男の子。」

相葉は顎を指さす。

女性が軽くうなずく。

「残念ですが、彼は今日、出勤しておりません。」

「そうなのか。残念。」

相葉はチップを受け取り、もう一度店内を見回す。

この間、工藤の話をした時のディーラーの視線の先……。

ルーレットの台で視線を止める。

今日もルーレットは同じディーラーだ。

相葉は真っ直ぐルーレットに向かった。

ルーレットのディーラー、トーマがすぐに気づく。

「どうぞ。」

トーマに近い席は客で埋まっている。

一番遠い席から客の様子を窺う。

工藤は来ていない。

隣の客を真似て、チップをレイアウトに置く。

時間を見つけては登録簿と押収品目録を調べているが、一向に埒が明かない。

端末で検索をかけてみたが、出て来るわけもなく、

塚本が偶然見つけた登録簿を探すしかない。

だが、資料が膨大すぎて、なかなか当たりは見つからない。

時間はある、いつまでかかっても構わない、でも必ず犯人を見つけ出す。

そう自分に言い聞かせてはいるが、気持ちは焦る。

もう一つの手がかりであるここには、後1、2回来れればいい方だ。

頼む、来てくれ!

相葉は祈るような気持ちで店内を見回し、工藤を探す。

「どなたかお探しですか?」

一番遠い席にいたはずのトーマが隣に来て声を掛けて来た。

「あ……この間いたディーラーを探していて。」

相葉は咄嗟に二宮のことを口にする。

「この間?どんな子でしょう?」

「色白で、小さくて、ここにホクロのある子。」

カウンターの時と同じように顎を指さして見せる。

「ああ、申し訳ありません、今日は来ていませんね。」

「やっぱり。残念だなぁ。」

相葉は残念そうに首の後ろを掻く。

「気に入りました?」

「ああ、この間、丁寧に教えてくれたんで。」

「そうでしたか。彼が来たら、伝えておきますね。

 お客様がいらしたこと。」

「俺のこと、覚えててくれるかなぁ。」

「覚えてると思いますよ?その髭、お似合いですし。」

トーマがニコッと笑う。

ドキッとした相葉が口髭を撫でる。

「とっても評判悪いんだけど……。」

「そんなことございませんよ。とてもお似合いでございます。」

慇懃にそう言うトーマから、遠ざかりたい気持ちをグッと押し戻す。

「すっごく勝つ人とかいるの?」

「そうですね。時々おりますが、皆様穏やかに楽しんでくださっております。」

「じゃ、逆にすっごく負ける人とか?」

「そんな方もおりますが、ゲームですから。」

トーマが店内を見回す。

「皆様、分をわきまえた良識ある方ばかりでございます。」

低いジャズの音色と人々のざわめき。

さほど広くない店内に、人が増えて来る。

「では次のゲームを始めましょうか?」

トーマは笑顔を浮かべて戻って行く。

相葉はメガネを上げ、滑るフレームで初めて汗を掻いていることに気付く。

「あいつ……なんか、怖いな……。」

ボソッと呟き、トーマを見ないよう目を逸らしながらレイアウトにチップを置く。



早々にチップが無くなり、しばらく店内をブラブラしていた相葉が店を出たのは1時過ぎだ。

もう電車は走っていない。

しかたなくタクシーを拾い、家の近くのコンビニで降りた。

少し腹が減っている。

ポテトチップと菓子パン、プリンを手にし、レジへ急ぐ。

プリンは小春へのお土産だ。

塚本もこうやって小春の土産を買っていたのかと思うと、グッと胸を締め付けられる。

レジ袋を手にコンビニを出ると、真夜中だと言うのに、フラフラしている人影がある。

女性かと思い、目を凝らす。

猫背の雰囲気は女ではなさそうで、ホッと息をつく。

だが、その雰囲気に見覚えがある。

「あ、あれ?」

相葉の声に、下を向いていた人影が顔を上げる。

「え……?」

相葉はレジ袋を揺らし、掛け寄って行く。

「まさか、こんなところで会えるとは!」

にっこり笑ったその顔を見て、首を傾げたのは二宮だ。

「こんなところでって……?」

二宮がじっと相葉を見つめる。

「あ、わかんないかな。」

相葉はハッとして、指を髭のように当てる。

「あ、この間の!」

二宮は相葉を指さし、目を丸くする。

「こんなところで何してるの?」

「晩飯買いに。」

「こんな時間に!?」

「あなたに言われたくないよ。」

二宮が相葉のレジ袋をチラッとみる。

「ああ、これ?夕飯ならウチ来る?」

「え?あなたんち?」

「今日は鍋だって言ってたから、あっためたらすぐ食べれるよ。

 俺もこれから食べようと思ってたんだ!」

そこまで腹が減ってるわけではなかったが、ここで二宮と別れるわけにはいかない。

「行こ!」

相葉は強引に二宮の手を掴む。

「こっち!」

二宮は相葉に圧倒され、断る術もなく、相葉に引きずられるようについて行った。










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テ・アゲロ  the movie ⑨ scene23

テ・アゲロ  the movie



「いや、違う!トーマと寝るのなんて、何十回、何百回としてる!

 だから偶然そういうことになっただけで……。」

二宮は髪を振り乱して首を振る。

二人目、三人目の時も思い出そうとするが、靄が掛かって思い出せない。

それでも思い出そうとすると、頭が痛くなってくる。

「ん、つぅ……。」

左のこめかみを押さえる二宮に、大野がスマホを取り出す。

「ちょっと調べてみっか?……何トーマ?」

「え?あ……芹沢……。ね、何してんの?」

二宮がスマホを覗こうとすると大野に肘で払われる。

「歳はお前と変わんねぇよな?」

「二つ上だけど……。ね、何してんの!」

「なんもしてねぇよ。知り合いに聞くだけ。」

不器用そうに文字を打ち込み、送信ボタンを押す大野を見て、

二宮は徐々に不安になってくる。

「トーマに迷惑がかかるのはダメだ!」

「迷惑なんてかかんねえだろ?知ってるかどうか聞くだけだ。」

「誰に?」

「だから、知り合い!」

「知り合いって?」

「知り合いは知り合いだ、うっせぇな。」

「うっせぇってなんだよ!」

「うっせぇだろ?抱くぞ?」

大野の目が光る。

猛獣が獲物を目の前にしたような目。

二宮は体を引いて仰け反る。

「何ビビってんだよ。抱いてくれって泣いたの、お前だろ?」

大野はスマホを隣に投げ出し、二宮ににじり寄る。

「抱いて欲しくて泣いたわけじゃないよ。」

「嘘つけ、入って来るなり抱いてって叫んだくせに。」

「そうだけど、泣いたのはそのせいじゃないじゃん!」

「似たようなもんだろ?」

「似てない!」

「変わんねぇ!」

「変わる!」

二宮は、大野に負けじと睨み返す。

ここで負けたら襲われる。

そう思い、それ以上下がらず踏ん張る。

「あはははは、なんて顔してんだ!」

大野は笑って、体をベッドヘットに戻す。

いつもの大野に戻ってホッとすると、二宮の体から力が抜ける。

「お前、なんて呼ばれてんの?」

「大抵は……ニノって呼ばれてるけど……。」

カズと呼ぶのは母とトーマだけだ。

友達や知り合いはみんなニノと呼んでいた。

「ニノか。呼びやすいな。ニノ。ニ~ノ、ニノニノニノ。」

大野がふにゃっと笑う。

「ワンコみたいに呼ぶなよ。」

「あははは、ワンコみたいじゃん、お前。」

「はぁ~?どこが!」

二宮が反撃しようとした時、大野のスマホが光る。

「おっと、来た。」

大野はスマホを開き、タップする。

「ふぅ~ん、大したことはわかんねぇな。」

二宮は大野の隣に並び、スマホを覗き込む。

「母は銀座のクラブのママ。父はわからず。」

大野が読み上げる。

似たような境遇も二宮が惹かれる一つの要因だった。

同じ気持ちを共有できたことが、心を開くきっかけになった。

「母に似て、美しい顔立ちとスタイル。

 大学を卒業後、カジノバーを始める。

 母の上客のみを相手に始めた会員制バー。

 上客たちは政治家、官僚、上場企業社長と錚々たる面々。」

そこに書かれているトーマの情報は二宮も知っている程度のことだった。

最後にトーマの写真が添付してある。

少し垂れ目の外国人のような目鼻立ち。

短い髪がクリンと巻かれ、天使のような笑顔を向けるトーマ。

「あ~、あの店か。」

大野が思い出したように、声を上げる。

「来たことあんの?店。」

「ああ、由紀子に連れてってもらったことがある。」

「ヤクザの情婦でしょ?入れる?」

「今のヤクザは企業家が多いかんな。

 由紀子もいいとこのお嬢みてぇだし。」

「それでなんでヤクザの情婦なんて。」

「好きなんだろ?」

二宮は変な顔をする。

「じゃ、あなたは?大野さんは何なの?」

「寂しい時の遊び相手だろ?知るか。」

「え?それでいいの?」

「それでいいのって、お前、それ以上だったら困んだろ?」

「そりゃそうかもしれないけど……。」

二宮には理解できない関係に、肩を竦める。

「おいらより、こいつの方がおかしいだろ?」

「おかしい?」

二宮が首を傾げる。

「大学出て、このルックスなら仕事なんてなんでもありそうなもんだろ。」

「あ~、薬学部だしね。」

「薬学部~?ならなおさらだ。なんでカジノバーなんて……。」

「本当は、薬学部も反対されたんだって。お母さんに。」

「反対?なんでまた?」

「法学部か政経にしろって言われてたらしいよ。

 それを無理言って薬学部にしてもらったから、

 卒業後の進路は反対できなかったんだって。」

二宮にはその気持ちがよくわかる。

母一人子一人で育った二人にとって、母の存在は大きい。

「ふぅん、そんなもんかねぇ?せっかく学んだ知識が台無しじゃねぇか。」

「そうなんだけどね。」

大野はじっと考えて立ち上がる。

「ちょっと出て来るわ。」

「え、ちょっとって、どこ?コンビニなら私が行くから!」

「ちげぇよ。野暮用。」

大野がニヤッと笑う。

「やっと動けるようになってきたからな。少し動いておかないと。」

大野は伸びをして、肩甲骨を回し、背筋を伸ばす。

「お前はここで待ってろ。」

「え……嫌だ。一緒にいてよ。」

二宮の縋るような目に、大野が優しく笑い掛ける。

「大丈夫、すぐ戻ってくっから。お前はここでじっと待っとけ。な?」

「また……一人で……。」

知らない死体の前にいるかもしれない。

二宮は想像して身震いする。

「大丈夫、大丈夫だ。お前は一人でも大丈夫。」

大野が暗示をかけるように繰り返す。

「安心して待ってろ。」

二宮を抱き締め、背中をポンポンと叩くと、ベッドから立ち上がる。

「大野さん……。」

「すぐ戻る。」

大野はスマホと財布をポケットに突っ込み、部屋を出て行く。

その背中が消え、ドアが閉まるのを心細そうに二宮が見つめる。










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テ・アゲロ  the movie ⑨ scene22

テ・アゲロ  the movie



二宮はカーテンの隙間から見える月をぼんやり見つめる。

頬にかかるトーマの腕。

大好きな人の大好きな温もり。

トーマの腕の中からそっと抜け出し、窓の外を見つめながら、カーテンを重ねる。

暗くなったベッドの上を見ると、意を決して部屋を出る。

ずっとこのままでいたい気持ちと、またいつ何をするかわからない自分。

やっているのは自分じゃないと言う証拠が欲しい。

自分じゃないと言う確証。

もし、本当に自分がやっているのだとしたら……。

原因が知りたい。

どうしてこんなことをしているのか。

二重人格なのか、夢遊病なのか、何か原因があるはずだ。

二宮は音がしないよう、そっとドアを閉め、トーマの家を出る。

それと同時にトーマの目が開く。

トーマもまた、ベッドの上から隙間のないカーテンを見つめた。



ドンドンとドアを叩く。

こんな深夜だ。

寝ているかもしれない。

そう思いつつ、遠慮なくまたドアを叩く。

ドンドンドンドン。

しばらくしてドアがカチャッと開く。

「ふぁ~い。」

欠伸を噛み殺しながら、大野が出て来る。

「……ただいま。」

二宮が小さな声で言うと、大野は寝ぼけた顔でにっこり笑う。

「おかえり。」

その笑顔を見て、グッと何かが込み上げてくる。

二宮は、大野に抱き着くように部屋に入って行く。

「どうした?」

大野はドアを閉め、抱き着く二宮の背を撫でる。

「なんでもいい。なんでもいいから、抱いて!」

「お?いきなりか?」

「抱いて欲しかったら言えって言ったよね?」

「気分が乗ったらって言わなかったか?」

「気分なんて、すぐその気に……。」

二宮が大野の唇に唇を押し当てる。

「ん、ん~、やめっ。」

ベッドに膝裏が当たり、大野の足が浮く。

縺れるようにベッドに押し倒される。

「いてっ!病み上がりなんだぞ!」

「病気じゃないでしょ。怪我なんだから。」

「まだ痛ぇとこあんだぞ。」

「我慢して。」

「我慢できるか!」

大野がじっと二宮を見つめる。

「なんだ、泣いてんのか?」

「泣いてなんか……。」

二宮は両手で両目を拭う。

「泣いてんじゃん。」

大野が笑って、腰を引き、ベッドの上に胡坐をかく。

「泣くほど抱かれたかったか?」

「違っ。」

二宮の頬を、後から後から涙が伝う。

「しょうがねぇなぁ。」

大野は、二宮の頭を掴むと、自分の胸に押し付ける。

「泣きたいだけ泣け。ほら、胸貸してやっから。」

「違っ。」

「違わない。」

大野は押し付けた二宮の頭を撫でる。

「泣きたい時は泣くのが一番。泣きたいだけ泣いてすっきりするのがいい。」

大野は二宮の頭を撫でながら、優しく笑う。

「だろ?」

二宮はその顔を見て、込み上げてくる想いを押し殺せなくなる。

「うっ……ぐっ……。」

声を上げて泣く二宮の頭を、大野はただ撫でる。

涙はなかなか止まらない。

大野は二宮の嗚咽を聞きながら、煙草を一本咥えた。



灰皿に吸い殻が3本溜まった頃、二宮が大野の胸から顔を上げる。

「泣き止んだか?」

二宮は腫れぼったい瞼で、小さくうなずく。

「も、大丈夫……。」

「そっか。」

大野は煙草に火を付ける。

「聞かないの?」

「何を?」

大野は胡坐の足を伸ばし、首をコキコキ鳴らす。

「泣いた理由……。」

「言いたくなったら言えばいい。」

大野は、だろ?と言うように首を傾け、煙草を咥える。

大野の笑顔に、二宮の胸のつかえが取れて行く。

「私……人を……殺してるかもしれません。」

大野の目がぎょっと開く。

「人を……?」

「はい……。」

「しれません……って、何?」

二宮は大野に、自分に起こっている一部始終を話して聞かせた。

なぜかいつも死体の前に自分がいること。

記憶がはっきりせず、あいまいなこと。

だから、見張って欲しいとお願いしたこと。

「不思議な話だな。」

大野は煙草を灰皿に押し付け、考え込む。

「やっているのが私なら……もうトーマの所には帰れない……。」

二宮が、何度も首を振り俯く。

「その事件、ニュースで見たが、お前にそんなことできるのか?」

「わかりません。でも……いつも気付くと死体の前にいるんです。」

大野はスマホをタップし、スクロールする。

「こいつなんて、結構ガタイがいいぞ?

 学生時代にラグビーやってたらしいからな。お前の細腕でできるか?」

大野が見せたのは三番目の被害者、杉浦圭一の学生時代のユニフォーム姿だ。

二宮の腰ほどもありそうな腕をしている。

「シリウス……だったけ?その連続殺人魔の名前。

 お前、聞き覚えないの?」

「さぁ……。」

二宮が首を傾げる。

「じゃあさ、お前、記憶が無くなる前、何してた?」

「記憶の無くなる前……?」

二宮は思い出そうと首を捻る。

一番鮮明な記憶は男女の死体……。

その前の記憶は……。

「わからない。」

二宮は大きく首を振る。

「何も思い出せない?」

「わからないんです。トーマと一緒に寝てたはずなのに。」

「トーマってのは恋人か?」

二宮がうなずく。

「恋人とやってたってわけだ。」

「違うから!」

と言ったものの、違うわけはない。

そうだ、トーマとして、気持ちよく寝てたはずなんだ。

あれ……トーマと……。

靄のかかる記憶を、一生懸命手繰り寄せる。

一人目の時も……。

「トーマと……寝た後?」

二宮が質問するように大野を見ると、大野の目が細くなる。










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テ・アゲロ  the movie ⑨ scene21

テ・アゲロ  the movie



「いい?流すよ~。」

相葉がシャワーの温度を確かめながら、小春の顔を覗く。

目をギュッとつぶった小春が、大きくうなずき、下を向く。

「あ~、ここ、もうちょっとかな。」

小春の耳の後ろをゴシゴシ擦り、泡が全体に行き渡ったのを確認する。

「かゆいとこない?大丈夫?」

「ありません!大丈夫です!」

相葉は小春の頭の上からシャワーを流す。

小春は、泡が顔を伝うのを嫌がったか、両手で顔を覆う。

「大丈夫、すぐ終わるから。」

小春は大きくうなずいて、じっと動かない。

相葉はすかさず、小春の小さな頭にシャワーを回し、泡を流していく。

早く終わらせてあげないと、小春は息も止めていそうだ。

「ほら、もう終わる、終わるからね~。」

全体を流して、泡が残っていないのを確かめる。

終わったところで小春の背中を流し、背中に残った泡も流してあげる。

「ほ~ら終わった!」

小春が両手で顔を拭って、前髪を上へ上げる。

「温まって10数えたら出ていいよ~。

 おばちゃんがアイスあるって言ってたから、先に食べといで。

 髪は俺が上がったら乾かしてあげるから。」

「はい!」

小春が嬉しそうににっこり笑う。

お風呂に入り、生真面目に肩まで浸かる姿が可愛い。

相葉は笑って、自分の頭にシャワーを掛けた。

シャンプーを頭で泡立てていると、小春がアヒルで遊びながら、数え始める。

浮かべたり、沈めたり、突いたり。

小春は両親が死んだことはきっと理解していないだろう。

でも、会えないことだけは子供ながらにわかっているようで、

時折寂しそうな顔をすると、胸が締め付けられるほど哀しくなってくる。

と、同時に湧き上がる犯人への憎しみ。

カジノバー。

今はそれしか工藤に繋がる手がかりはない。

工藤の写真を見せた時のディーラーの視線の動きは、明らかに工藤の顔を知っていた。

何度か通う必要がある。

だが……相葉に、あの店へ何度も通えるほどの余裕はない。

先輩のツテを借りて、なんとか潜り込むことはできたが……。

今度は一人で行けるとは言え、行けて後2回が限度だろう。

その間に工藤が現れてくれれば……。

もしくは……。

湯船で数えていた小春が立ち上がる。

「じゅ~うっ!」

「ちゃんとあったまった?」

「はい!」

相葉は泡が小春につかないよう、体を小さくして小春の通り道を作る。

「俺もすぐ出るから。ちゃんとタオルで拭くんだよ?」

「はい!」

「できなかったらおばちゃん呼んでいいんだからね?」

「大丈夫です。小春、一人でできます!」

小春は、赤くなった顔をにっこりさせてバスルームを出て行く。

相葉は、ドアが閉まったのを確認して、頭からシャワーを流す。

白い泡が、肩から腕に流れてくる。

もしくは……あのディーラーが何か教えてくれれば……。

小春の頬のように、白かったディーラーの顔を思い出す。

柔らかく、滑らかそうな白い肌。

「小っちゃくて、女みたいに可愛かったな……。」

喋れば十分男っぽいのに、見た目の可愛さはきっと客を惹きつける。

そういう客も多いんじゃないだろうか?

男も、女も。

相葉はそう考え、ブンブンと首を振る。

あの店はそういう店じゃない。

カジノバーも違法だが、まさか……。

もう少し、外からも調べてみる必要があるかもしれない。

ギャンブルには暴力団が関わることも多い。

昨今は暴力団だけじゃない。

どこにだって、金に群がる輩は必ずいる。

セレブ相手の会員制カジノバーなぞ、恰好の餌食じゃないか?

金だけではなく、弱みまで握ることができる。

相葉は流した髪を掻き上げ、耳の後ろをなぞる。

シャワーを止めると、磨りガラス越しに脱衣所を出て行く小春の姿が見える。

「絶対に見つけるから。」

小さくつぶやいて、湯船に体を沈め、ゆっくり目を閉じた。










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tepo

Author:tepo
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嵐の大野君が大好きで、山LOVEです♪
腐っているので、ご理解のある方、
また成人女性限定でお願いします。

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    ↓
  果てない空

の順で続いています。
それぞれでも楽しめるようになっていますが、順番に読むと5人の成長がよりわかるのではないかと思います。

コメント等は受け付けていません。
何かありましたら、
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