TRIP 腐的妄想

某5人組アイドルの腐的(BL)妄想小説です。成人女性限定でお願いします。

ナイスな心意気 ⑳-1

ナイスな心意気(5人)


「わ、わかったから!」

マサキが携帯片手にジャケットを引っ掛ける。

俺は片耳を立て、片目でマサキを見る。

サトシも気付いてるのに気づかないフリで、俺の足の間で寝たふりを決め込む。

「すぐ行くから待ってて!早まらないで!」

早まらないで……?

何?どうしたの?

「うんうん、わかったから。取りあえず、行くから。」

行くってどこへ?

マサキは鍵と携帯を掴むと玄関まで駆け出す。

「早まらないで~っ!」

バタバタと玄関を飛び出すマサキ。

マサキがこんなに慌てるの、久しぶりに見たかも。

最近じゃ、部屋が荒れてても、慌てる様子も怒る様子もない。

諦めてるのかな?

人間のサトシが来る時だけソワソワするけど……、それとはちょっと違う?

「マサキ、どこ行ったのかね~。」

カズナリが、ケケッと笑う。

「あの調子じゃ、辿り着くのに時間かかるよ~。」

ちょっと羽根を広げて、嘴で内側を整えながら、おかしそうに笑い続ける。

「あれはきっと女だね。」

水槽の金網を持ち上げて、ジュンが顔を出す。

「女!」

カズナリが大げさな声を出す。

「マサキもそろそろハニーを作んないとね。」

「そうそう!卵が産めない!」

「お前だって産めないくせに。」

ジュンがチロチロと舌を出す。

「私は産ませる方だから~。」

カズナリがバサバサと羽根を広げると、光沢のある羽根は光を浴びてキラキラ光る。

「ショウちゃんはいいよね~。散歩に行けば、その辺に相手がいる。」

ジュンがうなずくように、2度首を振る。

「そんなことないよ。」

俺が言い返すと、間髪入れずサトシが溜め息混じりに言う。

「あるよ。ドッグランに行くと、ショウちゃんモテまくり。」

「「モテまくり~?」」

一羽と一匹が同時に首を上げる。

「そうそう、メスが寄って来る寄って来る!」

サトシの目がキラッと光って、ニッと笑う口の端もキラッと光ってる。

キバ剥くの止めてよ~。

「ま、ショウちゃんはイケメンだからね?」

ジュンがサトシにウィンクすると、サトシは面白くなさそうに、ふんっと鼻を上げる。

「外に出るとオスのフェロモン出しまくりなんだよ!」

クワッとキバを剥くサトシ。

そ、そんなの出してないから~。

怖い顔しないでよ。

「ショウちゃんだって盛る時はある~。」

だから、カズナリ!サトシを煽んな!

「へぇ~。ショウちゃん、盛るんだ?」

「サ、サトシだって盛んだろ?」

「おいらはいいの!でも、ショウちゃんはダメ!」

「なんでだよ~。」

「なんででも!」

そりゃ俺だって盛るよ?

動物の性(さが)ってやつ?

本能なんだから、許してよ~。

「マサキ……大丈夫かな?」

水槽から抜け出したジュンが、俺の足の間にいるサトシの足の間に入る。

なんか、言葉にするとよくわかんなくなるね。

「大丈夫でしょ?ああ見えて、マサキはしっかりしてるから。

 しっかり者に見えてしっかりしてない犬もいるけどね~。」

「そうそ!体も大きくてしっかりして見えるんだけどね~。」

カズナリとジュンが顔を見合わせて笑い合う。

なんだよ。俺がしっかり者じゃないみたい。

サトシも、そこでうなずくな~!

俺らは、そんな感じでワイワイガヤガヤ、いつもの通り最後は追いかけっこで幕を閉じ、

ちょうどいい疲れを感じてみんな眠りについた。

カズナリは籠に戻り、ジュンも水槽に戻る。

荒れた部屋もいつも通り。

後で掃除、手伝わないと。

たまにはサトシも手伝えよ。

そう思って鼻でサトシを突っつくと、

冷たいのが嫌なのか、足の間から逃げ出し、ソファーに飛び乗る。

仕方なく、俺もソファーに移動し……。

サトシの隣で体を伏せた。

サトシは満足そうに体を丸める。

マサキが帰ってきたのは、太陽が沈んでからだったんだけど……。

ガチャッと鍵の開く音がして、いつものように玄関に迎えに行くと……。

「ショウ、そこで待って。」

廊下の真ん中辺りで待てと言う。

なんだろうと首を傾げ、それでも待つ。

マサキは飼い主だからね。

すると……。

マサキが入る前に髪の長い女の人が入って来た。

しかも、メスのゴールデンまで!

この部屋に、メス(女)が入るなんて、前代未聞!

あ……運動会の後だけど……大丈夫?










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wanna be… 下-2

短編(いろいろ)


音のする方を見ると、角を曲がってきたトラックの前を、猫が走り抜けるところで……。

え?と思う間もなく、トラックがこっちに向かって突っ込んでくる。

あ、まずいパンがつぶれちゃう。

トラックにひかれたら、つぶれるのはパンだけじゃないのに、

なぜかそんなことを思って動けなくなった。

トラックがスローモーションで近づいてくる。

今ならまだ間に合う!

逃げろ!

頭の中でそう叫んでるのに、足がすくんで動けない。

あ、ああ~~~っ!

ひかれるっ!!!

思いっきり目をつぶり、パンだけでも助けようと両手を上げる。

ドンッと大きな音と、激しい痛みが背中を走る。

「う、ううっ……。」

しばらく息ができないほどの痛み。

痛い……。

でも、痛いってことは生きてる……。

そして、重っ……。

そっと目を開けると、おいらに覆いかぶさっているのはトラックじゃなく、

営業の男の人で……。

え?あれ?

男の人はゆっくり体を起こすと、確認するようにおいらを見る。

「だ、大丈夫ですか?」

青ざめたその顔には、さっきまでとは違う、するどさが備わってる。

ドクンと心臓が鳴る。

ああ、大丈夫だ。おいら生きてる。

ドクドクドクドク。

心臓がこんなに鳴ってんだから、死んでるわけない。

おいらは小さく頷いて、袋を持ったまま手を着いて起き上がる。

「とりあえず、救急車呼びます。」

おいら、もしかして……助けてもらった?

この人に……?

名前……なんだっけ……?

名刺もらったのに……。

救急車を呼び終えた男の人が、また電話を掛ける。

「もしもし?櫻井だけど……。」

さくら…い……さん?

櫻井さんの横顔が逆光でシルエットになる。

あれ……おいら、櫻井さんに会ったこと……ある?



目の前にはいく筋もの道。

でも、途中から崩れてる道ばかりだ。

真っ黒いフードを被った男が、おいらに問う。

「どう?そろそろ最後にしたら?」

おいらが答える。

「……まだだ。まだわかんない。」

男がクスクス笑う。

「だから言ってるじゃない。何を選んでも……。」

「いいから!」

男の言葉を途中で遮る。

「……いいよ。何も言わなくて。

 おいらの道はおいらが選ぶ。でないと……。」

「でないと?」

「何かのせいにして、仕方ないって生きるのは嫌なんだ。

 翔君の……せいにするのはもっと嫌だ。

 だから、翔君に出会わない道を……。

 出会わなければ、翔君のせいにしなくて済む。

 翔君を好きにならなくて済む。

 翔君に……迷惑かけなくて済む……。」

黒いフードの中で、男がふふっと笑う。

「なら歩んでごらん。あなたが選んだ道を。

 でもね?何を選んでも、何になっても、変わらぬものもある。」

「変わらぬもの……?」

「そう……変わらないもの。」

真っ黒い男が、フードの下からサッと腕を上げ、パチンと指を鳴らす。

すると、いく筋もの道が、ガラガラと崩れ出す。

「あっ……。」

また、目の前には一本の道。

「いくらでも選び直せばいい。何を選ぼうと、どんな道を歩もうと、

 行きつく先は……同じだ。人はそれを運命と呼ぶ。」

真っ黒い翔君がそう告げて、消える。

おいらはまた一歩を踏み出す。

道の先……。

その遥か彼方は……同じ?



目を開けるとふんわり優しい顔でおいらを見てる翔君。

「お目ざめですか?」

万年筆を指に挟んで、人差し指でおいらの頬を突っつく。

いつの間にか寝てたんだ……。

ソファーの上で丸くなるおいらに、ブランケットがかけてある。

ローテーブルで何か書いてる翔君の瞳は澄んでキラキラで。

思わず見入っちゃうと、翔君がさらに笑う。

「そんなに見られたら、穴が開いちゃう。」

「そ、そんなに見てねーし。」

「そう?」

翔君が、サラサラと何か書き始め、おいらは遠慮なく、翔君の顔を堪能する。

カーテンを揺らして、柔らかい穏やかな風が吹く。

その風は翔君の髪を撫で、前髪が微かに動く。

「なんか……怖い夢見た……。」

「怖い?どんな?」

翔君は万年筆を動かしながら、耳だけおいらに傾ける。

「目の前に道があって……それを選ぶんだけど、どれを選んでも失敗で。」

「失敗?」

「そう。命の危険にあったり、怖い思いしたり。」

「ふふふ。それは災難。」

「あ、これはダメだ。あ、これもダメだって、次々選んで……。

 それでもダメで、黒い人が言うんだよ。」

「黒い人?」

「うん。翔君にそっくりな黒い人。」

「智君の夢に出演できるなんて嬉しいね。」

翔君がちょっとだけ視線を上げる。

「何になっても……運命は変わらないって。」

翔君は万年筆を置いて、う~んと伸びをする。

「そうだね。」

頭の上で手を組んで、思いっきり体を伸ばす翔君の瞳はおいらを見つめる。

「智君が何になっても……、画家になっても、ダンサーになっても、

 それこそアイドルになっても……俺と智君は出会って恋をする。

 それがきっと運命ってことなんだね?」

翔君の指がおいらの頬を撫でる。

優しい指に頬を預け、また目をつぶる。

翔君のいない人生……。

選びたかったけど、選べなかった。

夢でも現実でも。

何になろうと、どこへ行こうと……。

それがおいらの運命。

それが、なりたいおいらの未来……。










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wanna be… 下-1

短編(いろいろ)



目の前にはいく筋もの道。

何本か、途中から崩れてる道がある。

真っ黒いフードを被った男が、おいらに問う。

「そろそろしっかり決めちゃってよ?」

おいらが答える。

「……そんなこと言われても……。」

男がクスクス笑う。

「何を選んでも……。」

「いいよ!」

男の言葉を途中で遮る。

先を聞いたら、きっと選べない。

「……いいよ。おいらが選ぶんだから。今度はこれ!」

黒いフードの中で、男がふふっと笑う。

「なら歩んでごらん。あなたが選択した道を。」

真っ黒い男が、フードの下からサッと腕を上げ、パチンと指を鳴らす。

すると、おいらの前にあったいく筋もの道が、ガラガラと崩れ出す。

「あっ……。」

男は消え、目の前には一本の道。

おいらはまた一歩を踏み出す。

道の先は……。

おいらは見えない先に目を凝らす。



ピピピ、ピピピ。

目覚ましの音で目が覚める。

「ん、ん~っ。」

午前4時。

まだ外は暗い。

おいらの仕事はパンを焼くこと。

焼きたてのパンの香りは格別。

笑顔の食卓においらのパンが並ぶ。

その光景を考えるだけでうっとりする。

今日は休日。

きっと家族連れが多く買いに来るはず。

カメのメロンパンとクマのクリームパン、ちょっと多めに焼こっかな。

天気はどうだろ?

おいらはスマホを開く。

おっ?晴れマーク!予報も変わってない!

クロワッサンとバタールも多めに焼くか。

今日は公園で食べても気持ち良さそうだ。

おいらは起き上がって、コーヒーを淹れる。

コーヒー飲んだら……パン達がおいらを待ってる!

ちゃんと発酵してるかな?



朝一のパンが焼き上がって、こんがりきつね色のパンがトレイに並ぶ。

そろそろ店を開けるか。

そう思って、看板を出そうとすると、バイトの二宮君がやってくる。

二宮君はまだ高校生。

すっごくゲームが上手いらしい。

土日だけのバイトだけど、覚えは早いし、人当たりもいいから、

超助かってる。

パンって、値段書いてないじゃん?

だから覚えるまで、かかる人は結構かかっちゃうんだ。

スーパーのレジなら、ピッで終わるのにね。

「おはようございます。あ、俺やりましょうか?」

「あ~、おはよ。二宮君はレジ開けてくれる?」

おいらは看板を出して空を見上げる。

雲一つない快晴。

今日は売れるな。

さっさと次の成型しなくっちゃ。



朝のピークが終わって、おいらと二宮君は、交互に休憩を取る。

お昼時間は忙しくなるから、早めのお昼。

今日はおいらが先に休憩。

店の奥の休憩室に行こうとして、二宮君に声を掛けられる。

「あ、店長!このお客さん、あるだけ欲しいって言うんですけど。」

あるだけ?パンを?全部???

店に戻ってレジに向かうと、二宮君が、どうしたもんかと困った顔でおいらを見つめる。

「すみません、突然……。」

そう言って、二宮君の前に立つ、スーツ姿の男の人が名刺を差し出す。

「ARSクッキング教室……?」

男の人は人好きのする顔を、さらに柔和にしておいらに笑い掛ける。

「はい。お昼から小学生向けのクッキングイベントを企画してるんですけど、

 手違いでサンドイッチ用のパンが用意できなくて……。

 急遽、近くのパン屋さんで探してるんですが……。」

男の人は店内を見回し、バタールを指さす。

「あのパンをあるだけ……お譲りいただけませんか?」

なんだ、店のパン全部かと思ってびっくりした!

「あれで足りるの?」

「他の者も回ってるので、たぶんなんとか……。」

「サンドイッチにするんなら、ブールとか、カンパーニュとかもあるけど……。」

おいらは売り場を回って、ブールのトレイを持ち上げる。

「今から焼いてもいいんだけど、焼きたては薄く切れないから。」

おいらはそれをレジのカウンターに置く。

「いいですか?ありがとうございます。」

誠実そうな男の人が、勢いよく、直角に頭を下げる。

何もそこまで下げなくても……。

「じゃ、これ、切るね。どれくらいの厚さがいいの?」

男の人は、親指と人差し指で厚さを示す。

不器用な感じ。

営業みたいだから、よくわかんないのかな?

サンドイッチ用か……。

1センチくらいでいいかな?

「ちょっと待ってて。」

おいらはカウンターの奥のパン用カッターを調節する。

「でも、この量、一人で持って帰れる?」

二宮君が切り終わったパンを袋に詰めながらつぶやく。

おいらも、ん~と考える。

切ったパンは柔らかいから、あんまり重ねたくはない

「じゃ、おいらちょっと行って来るよ。

 駅前でしょ?」

最後の言葉は男の人に向かって。

男の人がうなずいて、でも、それじゃ悪いと言う様に頭を振る。

「こんなに買ってもらうんだもん、これくらいサービスです。」

おいらは切り終わったパンをそっと袋に入れる。

「……すみません、お願いします。」

男の人はまた、直角に頭を下げた。

律儀な人……なんだろうな?



二人並んで店を出る。

おいらはコックコートを脱いでジーパンとシャツ。

空が澄んでて気持ちい~!

男の人は携帯でしゃべりながら、おいらを誘導してくれる。

駅までなら、おいらだってわかるのに。

だって地元だよ?

笑って男の人に着いて行くと、携帯を切った男の人が、不思議そうに首を傾げる。

おいら、よっぽど楽しそうに笑ってるんだな。

「どうだった?間に合いそう?」

「お蔭さまでなんとか。」

また頭を下げようとするから、パンの袋を持った手で男の人の肩を掴む。

「もう十分お礼は言ってもらったよ?急ご。」

おいらが笑うと、男の人もホッとしたように笑う。

あ、さわやかな笑顔。

「お店は長いんですか?」

「父ちゃんの代からだから、30年くらい?

 町の小さなパン屋さんだよ。」

「でも、すっごくいい匂い。間違いなく美味しい!」

「あはは。まだ食べてないのに。」

「食べなくてもわかりますよ。こんないい匂いのパンが美味しくないわけがない!」

さすが営業。

口も上手い。

おいら達がしゃべりながら歩いていると、キキーッと嫌な音が響く。










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wanna be… 中

短編(いろいろ)



目の前にはいく筋もの道。

一本だけ、途中から崩れてる道がある。

真っ黒いフードを被った男が、おいらに問う。

「今度はどの道を選択する?」

おいらが答える。

「……そうだな……、これかな?」

男がさらに聞く。

「その道は……怖いかもしれないよ。いいの?」

「いいよ。おいらが選んだんだから!」

黒いフードの中で、男がふふっと笑う。

「なら歩んでごらん。あなたが選択した道を。」

真っ黒い男が、フードの下からサッと腕を上げ、パチンと指を鳴らす。

すると、おいらの前にあったいく筋もの道がガラガラと崩れ出す。

「あっ……。」

振り返ると案の定、男は消え、目の前には一本の道。

おいらはまた一歩を踏み出す。

道の先がどこに続いているのか……。

やっぱりおいらには見えない。



「ん、ん~。」

なんだろう……。

腕が重い……。

薄目を開けて天井を見る。

霞む視界には大きなシャンデリア……。

あれ?

ここどこだ……?

目を擦って頭を振る。

徐々に焦点が合ってくる。

どうみてもおいらの部屋じゃない……。

まさか……。

隣を見ると、乱れた長い髪……。

ハッとして蒲団を捲る。

まずい……何も着てない……。

と言うことは……。

隣をチラッと見る。

長い髪の間から見えるのは白い肌……。

やっちまった。

完全にやっちまった!

ああ、おいらとしたことが!

「ん、んんっ……あ、起きたの?智……。」

女の指が、おいらの指に絡む……。



おいらは新宿の「STORM」って店のホスト。

喋りベタでイケメンってわけじゃないけど、なぜかそこそこ売れてる。

癒し系の笑顔と八重歯が可愛いらしい。

マダムキラーなんだってさ。

だからおいらの客の年齢層は高い。

だけどその分、金も落としてくれる。

若い女より、マダムの方がお金は持ってるもんね?

ヘタに結婚とか言われなくていーし。

昨日は雅紀と一緒に店のナンバーワンの客に付いた。

ナンバーワンが不在だったからなんだけど……。

あ、雅紀は俺と同じくらいに店に入った、いわば同期ね。

ナンバーワンの客はさすがって感じ。

若いのに、羽振りがいい。

やけに飲ませ上手な女で、元々あんまり強い方でもないから……。

断ることもできねーし、気付いたらぐでんぐでん。

あれ?おいらタクシーに乗って帰ったんじゃなかったっけ?

「智……昨日のこと、覚えてる?覚えてないでしょ?」

ふふっと女が笑う。

「タクシー降りた智を私が拉致ったの。」

女がクスクス笑い続ける。

ナンバーワンの上客は、どこぞの社長令嬢らしいけど……。

ホストに貢ぐくらいだから、大した女じゃない。

「私とこんなことになって……バレたら怒られる?」

…………!

そうだ。

客を寝取るなんて、そんなことバレたら……。

ナンバーワンは普段穏やかなのに、キレると相当ヤバイって話だ。

落とし前って言って、殴られて鼓膜が破れたって聞いたことがある。

あ、笑いながら爪を一枚一枚剥がされたって話も!

その道の人?

中国の皇太后?

このままじゃおいら、東京湾じゃね?

ヤバイ!

ヤバすぎる!!

「大丈夫。バレなきゃいいんだから。」

女がおいらの腕に腕を絡める。

それをササッと避けてベッドから下りる。

「やん、帰っちゃうの?帰ったら、言っちゃうよ。昨日のこと。」

女が意地悪そうに笑う。

「いや、でもまずいっしょ?」

「まずくない、まずくない。私がいいって言ってんだから。」

女がおいらの手を引っ張る。

「もうちょっと、楽しも?」

女がシナを作っておいらを見上げる。

マジかんべん~っ。

おいらまだ命が惜しい!

痛いのも嫌い!

バレる前に縁を切る!

店も辞めた方がいいかな?

結構いい仕事だったけど……。

ええいっ!

命さえあれば、何をやっても生きていける!

「バレたらってスリル、ゾクゾクするね!」

女が喜々とした顏でおいらの腕を引っ張る。

マジ、逃げねーと!

おいらが女から逃げようともがいていると、ガチャッと部屋のドアが開いた。

ビクッとして、おいらも女も身動きできない。

開いたドアの前に立ってたのは……。

「智、いい度胸してんな?」

黒いスーツに薄いピンクのシャツ。

襟足長めの茶髪に、片耳ピアス。

「来な。」

ナンバーワンが人差し指でおいらを呼ぶ。

「しょ、翔さん……。どうしてここが……。」

「雅紀に聞いてね。一部始終。」

翔さんがニヤッと笑う。

「翔!」

女が裸の体にシーツを纏って叫ぶ。

泣きそうな顔で翔さんを見上げ、おいらを見て震えるように体を縮める。

え?

それはもしや……。

おいらに無理やりやられたって、そう思わせようとしてる?

えぇ~~~っ!

ちょっと待ってよ!

違うでしょ?

どっちかってーと、おいらの方が無理やり……。

おいらは翔さんと女を交互に見る。

翔さんは女に目もくれない。

まっすぐおいらを見て、おいらを呼ぶ。

「ほら、来い、智!」

ああ、もうダメだ。

一巻の終わりだ!

おいら、東京湾に沈められる~~~っ!










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wanna be… 上

短編(いろいろ)


目の前にはいく筋もの道。

真っ黒いフードを被った男が、おいらに問う。

「あなたはそっちの道を選択するの?」

おいらが答える。

「……そうだよ。何かモンクある?」

男がさらに聞く。

「そっちの道は難しいよ。いいの?」

「いいんだよ。おいらがそう決めたんだから!」

黒いフードの中で、男がふふっと笑う。

「なら歩んでごらん。あなたが選択した道を。」

真っ黒い男が、フードの下からサッと腕を上げ、パチンと指を鳴らす。

すると、おいらの前にあったいく筋もの道がガラガラと崩れ出す。

「えっ?これじゃ……。」

戻ってこれないじゃん、と思って振り返ると、

いつの間にか男は消え、目の前には一本の道。

仕方なく、おいらは恐る恐る一歩を踏み出す。

道の先がどこに続いているのか……。

おいらには見えない。



「ん、ん~。」

目を覚ますと、ぼやんといつもの天井。

なんか、すっげー怖い夢見てた気する……。

目を擦って天井を見つめる。

段々焦点が合ってきた。

うん。

代わり映えしない、おいらの部屋の天井だ。

おいらは顎と視線を上げて、枕元にあるスマホを探す。

確認すると、20時32分。

やべっ。

バイトに遅れちゃう!

慌てて飛び起きた。



「ありがとうございました~。」

笑顔で釣銭を渡す。

バイト先のコンビニ。

深夜だから客も少ない。

この店、深夜は二人体勢だから、おいらがレジに入ってる間は潤が品出しをする。

おいらもレジ内の掃除。

狭いけど、結構あんだよ、掃除するとこ。

「かったりぃなぁ。明日、休もっかなぁ。」

潤が頭を掻きながらモップを押す。

「おい、休むなよ?お前が休むとおいらが入らなきゃならなくなるじゃん。」

「あ、智、明日休み?」

「やっすみ~!」

おいらがVサインを出すと、潤がむくれた顔になる。

「ずっりぃの。俺は仕事だってのに!」

「ずるくない、シフト!」

おいらと潤はフリーター。

深夜はおいらと潤と店長と、たまに入る大学生で回す。

潤はモップを押してはぶつくさ言い続ける。

何と言われようと、明日は休みだ!

久しぶりに釣りに行ける!

そう思うだけで、ちょっとテンションも上がる!

自動ドアが開いて、ピコンピコンと音がなる。

男が一人入って来た。

赤いキャップにグレーのフード。

キャップまでフードを被せてる……。

顔はほとんど見えない。

ちょっと怪し気?

おいらはチラッと潤に目配せする。

気づいた潤もモップを両手に持ち替える。

男はまっすぐ酒類の置かれた冷蔵庫に向かう。

深夜のコンビニ。

客は様々。

いかにも怪し気なカップルや、

昼は家から一歩も出ないだろう色白のゲーマーもやってくる。

男は500の缶を2本、脇に抱えておいらの方に来る。

正面から見ても、口元しか見えない。

あれでまっすぐ歩けるのが不思議。

カウンターの上にバラバラと缶を落とし、おいらの後ろの煙草を顎でさす。

「それ、103番。」

おいらが振り返った拍子に、

ポケットに入りっぱなしだった男の手が、おいらの肩を掴む。

「振り返るな。俺の手に何があるかわかるか?」

背中にチクンと何かが当たる。

ヤバイ……、これ、マジでヤバイやつ……。

おいらは小さくうなずく。

「黙ってレジから金を出せ。」

「で、でも、このままじゃ……。」

おいらが言うと、男の手が肩から離れる。

ゆっくり振り返ると、男の手にはキラッと光るナイフ。

ドクンと心臓が鳴って、手が震え出す。

「お前、一人か?」

おいらは震えながらうなずく。

「変なこと考えんなよ?さっさと金だせ。」

男は言いながら、ナイフを軽く振る。

慣れたその仕草に、思わず息を飲む。

ヤバイ……潤!気づけ!

心の中で念じ、震える手でレジを開ける。

「さっさとしろよ?俺は短気なんだ。」

男の口元がニヤッと笑う。

おいらはさっき潤がいた辺りを見る。

ダメだ。潤はいない。

気付いてないのか?

気づけ!潤!

レジが勢いよく開く。

ナイフが、札を取り出せと指示する。

おいらは札を何枚か掴んで、無造作に重ねる。

手は震え続ける。

上手くまとまらない。

何枚か落とし、拾おうとすると、ナイフが突き出される。

「拾うな。いいから早く出せ。」

少しイラつき出した男が、おいらの前で片手を広げる。

掴んだ札束を男の方に差し出すと、男が札束を握る。

その瞬間、水しぶきが飛んでくる。

ガツンッ!

ナイフを持った男の手が、おいらの方に突き出される。

反射的にそれを避け、両手で手首を掴む。

もがく男の手をこれ以上ないってくらいの力で捩じる。

「いてててて……。」

見上げると、モップを振り上げ、必死な形相の潤。

振り上げたモップがまた男の頭に落ちる。

「い、いてぇっ!」

暴れ出す男。

ナイフをなんとか取り上げようとするおいら。

モップで叩き続ける潤。

「智!警察!」

潤の叫び声で、ハッと思い出す。

そうだ!警察!

男の腕をガンガンレジにたたきつけ、ナイフが落ちたのを確認して電話する。

暴れる男を二人でなんとか取り押さえていると、すぐに電話は繋がった。



「一時はどうなることかと思ったよ。」

疲れ果てた顔で潤が笑う。

「とりあえず、無事だったことを祝して。」

おいらも笑って缶コーヒーで乾杯する。

でも……たかがバイト。

されどバイト。

こんな怖い思い、二度としたくない。

「おいら、このバイト、辞めるわ。」

「え~、辞めちゃうの?」

「バイトで命落としたくねーもん。」

「そりゃそうだけど……。」

潤は不満そうに眉間に皺を寄せ、コーヒーを飲む。

「すみません、ちょっと調書取らせてください……。」

駆けつけてくれたお巡りさんが、おいら達の方に近づいてくる。

若いイケメンのお巡りさん。

小さい頃から刑事に憧れて、お巡りさんになりました……そんな感じの人。

「お名前から……。」

「大野智です……。住所は……。」

おいらと潤は聞かれるままに答え、怖かった思いを手ぶり身振りでお巡りさんに伝えた。

真面目なお巡りさんは、真剣に話を聞き、頷き、調書を取っていく。

一通り話が終わると、お巡りさんは調書を見直し、ボールペンを胸ポケットにしまう。

「駅前派出所勤務の櫻井です。この件で何かありましたら、私の方までご連絡ください。」

櫻井さんはニコッと笑う。

その顔……。

あれ?

どこかで見たことある……?










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嵐の大野君が大好きで、山LOVEです♪
腐っているので、ご理解のある方、
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kissからはじめよう
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 Step and Go
    ↓
  果てない空

の順で続いています。
それぞれでも楽しめるようになっていますが、順番に読むと5人の成長がよりわかるのではないかと思います。

コメント等は受け付けていません。
何かありましたら、
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よろしくお願いします。

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