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青いエアーバイクが砂煙を巻き上げる。

砂漠の中にバイクを止め、砂の上に降り立つと、サトシはゆっくりゴーグルを外す。

砂埃の中、徐々に広がる視界。

村は、人が住んでるのが信じられないほど、砂によって埋め尽くされている。

サトシはキョロキョロ辺りを見回し、手袋を外しながら歩き始める。

家々の中に人のいる気配はしない。

辺りを窺いながら、村の中心に向かって進んでいく。

数メートル進むと、微かに人の声が聞こえる。

風が吹く度に掻き消される程度だが、確かに声がする。

サトシは声のする方角の、空に向かってゆっくり顔を上げる。

サトシの顔を撫でる風は、サトシの髪を巻き上げる。

小さな砂の粒が顔に当たって、ヒリヒリとした痛みも感じる。

「ここの渇きは……大きい。」

サトシは小さくつぶやいて、外した手袋をベルトの脇に引っ掛ける。

軽く手で顔を払って、柔らかい砂の上を用心深く進んでいく。

村の中心に近づいたのか、しだいに人々の声が聞きとれるようになってくる。

「……もう少し右……。」

「……ああ……水が……!」

「そこ……もっと掘って!」

「……伝説の……神だ……。」

「……ありがたい……。」

サトシは声のする方へ、小走りに駆け寄る。

村中の人が集まったのか、数十人の人間が輪になって何かを囲んでいる。

サトシは人込みをそっと掻き分け、その中に入っていく。

人と人との隙間から気配を消して覗いてみると、3人の男が大きな穴を掘っている。

穴の中に入ってスコップで砂を掘り出す者。

掻き出した砂をねこ車に乗せる者。

それをどこかに運んでいく者……。

その3人を人々はじっと見つめ、口々に何かつぶやいている。

「水……。」

サトシは色の変わった砂を見つめ、ポツリと言う。

「お前、見てなかったのかよ。」

10歳位の男の子が、振り返ってサトシを見上げる。

「ああ……ちょっと来るのが遅かったみたいだな。」

「すげかったんだぜ。伝説の少年!」

男の子はまだ興奮しているのか、目を輝かせ、早口でしゃべる。

「ほぉ~。どんな風にすげかった?」

「砂をぎゅって握ったら、そこから水が沸いてきた!」

「そこから……すぐに?」

サトシは優しく聞き返す。

「そうだよ。すげぇだろ?」

男の子は見たままをサトシの前で再現して見せる。

しゃがんで少し考えるように地面を触ると、ある一点で砂を掴んで持ち上げる。

「この時は何も起こんなくて、しばらくしたら、砂の色が変わっていって。」

男の子はニコッと笑う。

「神って言うんだって。」

「神?」

「うん。じいちゃんが言ってた。みんなを救う為に現れたきゅーせーしゅ。」

「救世主?」

「だって、そうだろ?水がなきゃ、人間は生きていけないんだから。」

男の子は男達が掘った砂を見て、大きくうなずく。

色の変わった砂は固まり、どんどん水分が多くなっているのがわかる。

「伝説の少年は……幾つくらいだった?」

「歳?」

男の子は小首を傾げてサトシを見上げる。

それと同時に、男の子の隣にいる中年の女性が、訝しそうにサトシを見る。

サトシは小さくうなずくと、男の子の背に手を当て、広場の端へ促す。

「若かった?」

「うん。オレより大きいけど、大人には見えなかった。」

「どれくらいだった?」

サトシは男の子の頭の上に手をかざす。

「この位?」

「ううん。もっと大きい。お前より大きいよ。」

「おいらより?」

「うん。……たぶん……いや、絶対大きい!」

サトシは首を傾げ、口をへの字に曲げる。

「顔は?」

「顔?」

「どんなだった?」

「ん~、キレイって言うのかな?」

「綺麗?男なのに?」

「うん。ああいうのを神々しいって言うんだって。」

「ふぅん……。」

サトシは親指で顎を触ると、砂を掘り続ける男達に目をやる。

少年も釣られて男達を見つめる。

「で、今、そいつはどこにいる?」

「そいつ?伝説の少年?」

サトシは視線を変えずにうなずく。

「もう行っちゃったよ。待ってる人がいっぱいいるからって。」

「行ってからどれくらい経つ?」

「ん~……3、4時間くらい?」

「移動は何だった?」

「え?歩き……じゃないの?」

男の子が逆にサトシに聞き返す。

「この天気の中、歩いて砂漠を渡ったら……人間なら死ぬな。」

「でも、伝説の少年だからね。きゅーせーしゅだから!」

サトシは小さく鼻で笑う。

「きゅーせーしゅは……一人だった?」

「ううん……5人くらい一緒にいた気がする……。」

「みんな救世主に見えた?」

男の子は大きく顔を横に振る。

「じゃ、救世主以外は死ぬな……。」

「だ、大丈夫だよ!救世主は神だから!」

サトシは男の子を見つめ、片方の唇の端を上げて笑う。

「この世に神なんて存在しない……。」

男の子は頬を膨らませて怒鳴る。

「じゃ、なんで伝説の少年を探してるんだよ。神だからじゃないのかよ。」

「……違うね。人間だから探してる。」

サトシはマントをパサッと払うと、男の子の頭に手を置く。

「おいらの弟……昔はぐれた弟を探してる。」

「弟?伝説の少年が?」

「ああ、いくつか似てるとこがある……。」

「似てるとこって……。」

サトシは男の子の頭をガシガシと撫でる。

「あいつは……あいつの時間はゆっくり進む……。」

「な、なんだよ!聞こえない!」

男の子は、ぐちゃぐちゃにされた頭をブンブン振って、手で撫でつける。

「おいらの弟もキレイだってことだ!」

サトシは周りを見回して歩き出す。

「待てよ!」

「じゃぁな。」

サトシは振り向かずに手を上げる。

風が吹き、マントが翻る。

「お前、誰だよ!」

男の子がサトシの背に向かって叫ぶと、サトシは少し考えるように歩を緩める。

それでも振り返らずに行ってしまうサトシに、男の子がさらに叫ぶ。

「答えろよ~っ!」

一陣の大きな風が、砂を舞い上げる。

男の子はたまらず、腕で顔を隠す。

風が止み、すぐにサトシの姿を探したが、もうその姿はどこにもなかった。










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