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「ショウ!」

後ろから声がして、ショウは振り返る。

見ると、トーマが口を尖らせて立っている。

「どうしたの?そんな顔して。」

「今度もまた一人で捜査に行くんだって?」

ショウはシッと口に指を当て、トーマの肩を抱いて部屋の隅へ移動する。

「どこで聞いた?」

「それは教えられない。」

トーマは口を尖らせたままショウを見上げる。

「どうしていつも一人で行くんだよ。俺はショウのパートナーじゃないの?」

「これは……極秘事項なんだ……。その内課長から話があると思うから……。」

「先にショウが話してよ。ちゃんと説明してくれないと、俺、浮気しちゃうよ?」

トーマは整った顔をさらにキメてウィンクする。

「あはは。好きなだけ浮気してくれ。」

ショウはトーマの肩を叩いて歩き始める。

「待てよ。冗談はさておき、本当はどうなんだ?」

「どうって?」

トーマもショウの隣に並んで歩き始める。

「捜査は二人一組が原則。本当なら、俺がショウと一緒に行くのが筋……。

 なのに、この間も今回も、ショウは一人で行動してる……何を調べてる?」

「だから、それは課長からの話を待って……。」

「待てない。」

トーマは歩みを止め、ショウの肩を引っ張る。

「ちゃんと話してくれよ。俺はお前のパートナーじゃないのか?」

ショウは困ったように眉尻を下げ、キョロキョロと辺りを窺う。

誰もいないのを確認し、トーマの背中に手を当て、裏口から外へと促す。

本庁裏の駐車場。

昼間、この辺りに人が来ることは滅多にない。

「ちゃんと話してくれる気になった?」

人のいないこの駐車場で、トーマの声はやけに響く。

「シッ。静かに。」

ショウの目つきが変わる。

「わかったよ……。俺は、人を探すよう言われてる。」

「人?凶悪犯?」

「そうかもしれないし、違うかもしれない……。」

「どういう意味?」

トーマの声も小さくなる。

ショウは壁に背をもたれて、煙草を1本口に咥える。

「神風からこっち、世界各国で砂漠化が広がっているのは知ってるよな?」

「あぁもちろん。ニュースでもやってるし……もうすぐ中国とも陸続きになるって……。」

ショウは空を見上げる。

ビルの間から見える空には、薄い雲が東から西へと伸びている。

「こんなに水で潤ってるのは日本だけだ……。」

ショウは口から煙草を離すと、長い煙を吐き出す。

「日本だって、水の供給は制限されてる。」

「……でも、シャワーだって浴びるだろ?」

トーマはショウを見つめ、眉間に皺を寄せる。

「前回は……どこに行ってた?」

「…………ニューヨーク、ワシントン……アメリカを回った。もう見る影もないよ。」

小さく首を振り、また煙草を口に咥える。

「道を歩く人も、街の明かりも……。」

「でも、ニューヨークは隕石が直接落下したところだから……。」

「まぁな。都市機能がマヒしても仕方ない……でも、もうすでに砂が積もってた。

 砂が覆い尽くすのも時間の問題だ。」

トーマはショウの口から吐き出される煙をじっと見つめる。

「それで、どうしてショウが?俺らは警察だ。日本の治安を守るのが仕事……。」

ショウは口に煙草を咥えたまま腕を組む。

「もう……国が国としての機能を全うできていない……。」

煙草を指に挟んで、また空を見上げる。

「どの国も……いや、人間は、水がなければ生きていけない……。」

「ショウ……。」

トーマは心配そうにショウを見上げる。

「国からの……命令なのか?」

ショウは小さくうなずく。

「内閣調査室……どうやら人手が足りないらしい。」

ショウはクスッと笑って煙草を落とす。

足でもみ消すと拾い上げ、携帯灰皿にそれを入れる。

「で……誰を探してる?」

ショウは携帯灰皿をポケットにしまい、小さく溜め息をつく。

「……伝説の少年……もう少年じゃないと思うけど。」

ショウはまた空を見つめる。

薄い雲はさらに薄く空に広がっていく。

「伝説の少年って……神風の時の……?」

トーマは一歩踏み出し、ショウに近づく。

「今……噂になってるのは知ってるか?」

「噂?」

「伝説の少年が指さした場所から水が溢れ出す……。」

「まさか……。」

ショウはニヤッと笑って腕を組む。

「まさかだよな?そんなことあるわけない……。

 ハイテク機器を使っても見つけられない水脈を、

 人間が見つけられるなんてあるわけない?

 でも、世界各地でそんな噂が囁かれてる。」

トーマは黙ってショウを見つめる。

「神と崇めるやつも出始めた……。」

ショウはまたニヤリと笑う。

「危険な感じがするだろ?」

トーマはショウの脇の壁に腕を付く。

「大丈夫なのか……お前は?」

「まだ危険な目には合ってない……。」

ショウは首を竦めてクスッと笑う。

「これから合うんだな?」

「それは……まだわからない。」

トーマはもう片手をショウの反対側の壁につく。

「俺も行く。」

「……無理だ。」

「課長に掛け合う。」

「……だから言いたくなかったんだ。」

ショウはトーマの頭をポンポン叩く。

「お前はここで仕事してろ。これは俺の仕事だ。」

そう言って、トーマの腕をすり抜け、元来た道を戻って行く。

「ショウ!」

「いいから、大人しくしてろ!」

ショウは振り返らずそう言って、ドアの中に消えて行った。










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