愛と勇気とチェリーパイ(5人)

愛と勇気とチェリーパイ #10 下

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「どうやら店長、その心配はなさそうですよ?」

ニノちゃんが、あたしの手提げの中を覗きながらニヤッとする。

「ね?」

ニノちゃんの小悪魔チックな笑い。

「う、うん。」

あたしは手提げから、みんなへのチョコを取り出す。

「みんな、たくさんもらってると思うけど……。」

そう言って、それぞれにチョコを渡す。

最後に店長へ。

店長のはみんなよりちょっと大きめ。

パンだからね?

それより、あ~んっ!

せっかく店長の本心、聞き出そうと思ったのに!

あたしがニノちゃんを見ると、ニノちゃんは営業スマイルであたしに笑いかける。

はは~ん。

ニノちゃんはあたしに店長の本心、聞き出して欲しくなかったのね?

それともニノちゃんが聞きたくなかった?

「うふっ。うまっ!」

店長がさっそくチョココロネを齧ってる。

「え?お店で食べちゃうの?」

「え?ダメ?」

店長が齧りながら、キョロキョロ周りを見回す。

みんなが、ダメって顔や動作で店長へ伝え、客から見えないように隠す。

そのやり取りが可笑しくて、あたしが声を上げて笑うと、キッチンからMJが出てきた。

「さ、バレンタインのケーキだよ~♪」

お店に入った時からいい香りがすると思ってたんだ!

今日のMJのケーキは……フォンダンショコラ。

まだ温かい分、香りも強い。

この香りだけで、誰かに恋したくなる、そんな甘い香り。

可愛いイチゴと生クリームが添えてあって、雪のように粉砂糖が降りかかってる。

白いお皿には、チョコでかかれたSt.Valentineの文字。

「いやん♪可愛い!!」

「さ、温かいうちに。」

MJがあたしと店長の前にケーキの皿を並べる。

あたしはじっくり目で楽しみ、ゆっくりナイフを入れる。

トロ~リと流れ出る濃厚なチョコレート。

一口分に切り分け、チョコレートをたっぷり付けて、口へ。

ああ……芳醇な香り。

思ったよりビターな味わい。

MJの恋はホロ苦ですか?

それでもやっぱり甘さもあって……。

口の中で溶けていく……。

「はぁ……美味しい♪」

あたしが思わずため息をつくと、MJが嬉しそうににっこり笑う。

「甘すぎたらイチゴにチョコつけて食べてみて。」

ああ!そういう食べ方もあり?

甘酸っぱいイチゴとチョコがベストマッチ!

「ほっぺが落ちそう……。」

「おいら、もう落ちてる~。」

店長が目を細めて、フォークを咥える。

なんて可愛いお顔を!

はぁ、癒される……。

なんて思ってるのは、あたしだけじゃないみたいで(笑)

隣でずっと見ていたショウ君が、これ以上ないくらいのデレ顏で店長を見つめてる。

いつもはクールなショウ君なのに!

これは確実に……。

あたしがニヤけていると、ニノちゃんがニヤニヤしながら、あたしの耳元で囁く。

「お姉さんは店長狙い?」

あたしがびっくりしてニノちゃんの顔を見ると、

「ライバル……多いよ?」

またニヤッと笑う。

あ~、ニノちゃん、あなたも店長狙い?

そして、99%間違いなくショウ君もね?

そう思ってみれば、MJだってアイバ君だって、店長狙いに見えてくる。

確かにライバル多し!

でも……ニノちゃん、あなたは間違っているわ。

あたしの本命は……店長でもショウ君でもなく、みんなの中にある

腐要素なんだから!

どれだけそれを見つけられるか、どれだけそれを確信できるか!

それが、あたしの本命なの!

だからね、たくさん絡んで仲良くしてくれたら、あたしはそれで大満足!

できるなら……それが真実であって欲しいけど……。

そこまで贅沢は言いません!

でも、もし、仮に万が一!

店長とショウ君が付き合う……なんてことになったら、

あたしはたぶん、一度心臓が止まる!

そして、ゾンビのように復活し、二人を生涯祝福し続けるから!

あ~、ほらほら、MJがカウンターの中で、

こっそりアイバ君の口にケーキをいれてあげてる!

「マサキのケーキの食べ方……そそる。」

MJがアイバ君の耳元で囁いてる声に、あたしの耳がダンボになる。

そうかと思ったら、店長がニノちゃんの口にケーキを入れてあげてる。

あ……ニノちゃんの口の端からチョコレートが……。

トロリと伝うその流れ方……。

しかも!ニノちゃん!その唇を店長に差し出してる?

何?舐めて欲しいの?

そうでしょ?そうなんでしょ!

あたしがニヘラッと見惚れていると、ショウ君がおしぼりで乱暴にニノちゃんの口を拭く。

「ショウちゃん、乱暴!私の柔肌が傷つく!」

「大丈夫。ウチのおしぼりは柔らかいって評判だから。」

ショウ君がプリプリ怒った声でそう言うと、ふにゃりと笑った店長がショウ君を見上げる。

「なんだ、ショウ君も食べたかった?」

店長が一口分をフォークに乗せてショウ君に差し出す。

ショウ君がチラッとあたしを見て、照れたように笑うと、大きな口を開ける。

その時、フォークを持った店長の手をガシッと掴んで、

カウンターの向こうのMJに向けるニノちゃん。

すかさずそれを口に入れるMJ。

「う~ん、我ながら上出来。」

MJが満足そうに口を動かす。

「え……ええ~っ!」

ショウ君のがっかりした顔!

それを見た店長が再度、フォークに乗せると、今度はそれをアイバ君がパクリ。

残念ながら、最後の一切れ。

ショウ君の顔が、泣きそうな顔に変わっていく。

顔色まで悪くなって……相当、残念だったんだね。

「俺も……味見したかった……。」

「味見なら、まだあるから!」

MJが楽しそうに笑う。

違うよね?店長から食べたかったんだよね?

「じゃ、ショウ君は最後の……。」

店長が頬をショウ君に向けて差し出す。

「おいらの口についたチョコ……じゃダメ?」

店長が頬を膨らませてショウ君に突き出す。

見る間にショウ君の顔色が変わっていく。

満面の笑みなんてもんじゃない!

血流まで戻ったか?

でもそこで、どんなに嬉しくたって、仕事中に店長の頬なんて舐められないショウ君。

真面目なんだよね~。

そこは周りが見えなくなってもいいのに!

それがわかっていてやってるのか、戸惑ってるショウ君を見ながら、ふにゃりと笑う店長。

「やっぱ、ダメだよね~。」

店長が、いつの間にか置かれたコーヒーに口を付けると、

ショウ君は悲しそうな顔をしながら、そっと店長の肩に手を添える。

それに気づきながらも、コーヒーを飲み続ける店長。

してやったりの顔で、お客さんに呼ばれて行ってしまうニノちゃん。

ケーキをお客さんに持っていくMJ。

ガリガリとコーヒー豆を挽くアイバ君。

みんなが離れていくのを見て、店長がコーヒーを置く。

一瞬、肩に添えられた手を、頬で撫で、ショウ君を見上げる。

それって、それって……。

店長の本命は、やっぱりショウ君!?

これはショウ君だと思ってもいい?

いいよね?

でも、まだ何も始まってないようにも見える……。

え?始まらないこともある?

ええ~!それはダメでしょ?

せっかく気持ちがあるんだから!

あ、それも、もうちょっと確認が必要?

これは……要観察……と。

あたしは今日のノートに書き込んで、残りのケーキをゆっくり食べる。

ああ、やっぱり、ここは妄想の宝庫♪

ビバ!バレンタイン♪









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