「みんなと作ったお話」
the Deep End(やま)
the Deep End 4話 下
2016.02.13 *Edit
「それはよかった。」
翔君がグラスを構える。
おいらもグラスを持って、翔君に向かう。
「今日は……何に乾杯?」
翔君がおいらに聞く。
キラキラ輝くグラスの中の氷。
その奥の、もっとキラキラした翔君の大きな瞳。
「…………。」
その瞳に見惚れて、ぼーっとする。
「ん?」
翔君が小首を傾げる。
「あ……じゃ、は、初、翔君家に……。」
「ははは。そんなんでいいの?」
「うん。初めては最初しかないから。」
おいらがグラスを前に出すと、翔君がカチッとグラスを当てる。
「智君の、『初』俺んちに乾杯。」
「乾杯!」
翔君がゴクっとお酒を飲む。
その喉元、首筋、大きな手……。
おいらはお酒と一緒に、ゴクッと唾を飲む。
「じゃ、そのうち、智君家で俺の『初』乾杯してくれる?」
翔君の目が意味深に見えて、おいらはドギマギする。
翔君、期待しちゃうだろ!
「い、いいよ。」
「ホント?約束だよ。」
「いいよ、いつでも来いよ。」
翔君がもう一度、ゴクッとお酒を飲む。
「実は、松潤が行ったって言ってたの、羨ましかったんだ。」
「そんなの、言えばいいのに。」
おいらもお酒をゴクゴク飲む。
飲まないと、煩悩が顔を出して、どうにもならない。
静まれ煩悩!
「智君、ペース早くない?大丈夫?」
翔君が心配そうにおいらを見る。
「だ、大丈夫。この酒、旨っ!」
おいらは大げさにグラスを掲げて、また口へ運ぶ。
「気に入ってくれてよかった。」
翔君がシャツのボタンを二つ外す。
その手の動きを横目に見て、おいらはさらにグラスを煽る。
煩悩が、ニヤッと笑ったような気がした。
しばらく他愛無い話で盛り上がって、気付けばだいぶ飲んでたみたいで……。
「智君?大丈夫?」
翔君の声がちょっと遠い気がする。
目の前も……。
はれ~、おいら、どうしちゃった?
「智君?」
翔君の顔が、心配そうにおいらを見てるけど、その顔がグルグルして……。
「だいじょぶ。だいじょぶ。」
おいらは肩にかかった翔君の手を握って、笑って見せる。
「……泊まってく?」
翔君がおいらの前で跪く。
おいらのことをじっと見る翔君。
じっと見る……泊まる……?
「……泊……まる?」
「うん。その方がいいでしょ?」
翔君は一人でうなずいて、立ち上がる。
でも、おいらはどうしてか翔君の手を離すことができなくて……。
「智君?」
「しょぉきゅん……おいら…ね……。」
「うん?」
今度は翔君はおいらの隣に座る。
ああ……優しい笑顔……やっぱりイケメン……。
大好きだぁ。
おいらはもう片方の手で翔君の首筋を撫でる。
翔君の肌……気持ちいい……。
そのままピトッとくっついちゃえば?
おいらの頭の中で響く低い声。
そうだよね。くっついて抱きしめられたら気持ちいいだろうな……。
そうそう、そんで、翔君のシャツの間から手を入れて。
うんうん。気持ちよさそう。
上を向いてごらん。
ん?
おいらが見上げると、翔君が赤い顔して困ったようにおいらを見てる。
ほら、そのままチュ~しちゃってみなよ。
チュ~?
見えるだろ?赤い美味しそうな唇。
うん……見える……。
食べていいんだよ。あれ、お前のだから。
ほんと?
ほんと、ほんと!
ダメだ!
そこで甲高い声が響く。
まだ翔君の気持ち聞いてないだろ?
お前の気持ちだって伝えてないんだぞ。
いいのか?このまま翔君の優しさに甘えても。
……翔君…………。
まずはちゃんと伝えてからじゃないと。
うん……そうだよね。
いいのか?聞いて。
聞いたらあの美味しそうな唇、食べれないかもしれないぞ?
それは……。
お前なんか好きじゃない!キモイ!……なんて言われるかもよ?
そんな……。
おいらは泣きそうな顔をしてたかもしんない。
翔君がさらに困った顔で、おいらの頬を撫でてくれる。
大好きな翔君の、大好きな温かい手……。
おいら……。
大好きなんだから、ちゃんと伝えようよ。
高い小さな声がおいらの心に響く。
そんなの無視無視!
気持ちいいのが一番!
ちゃんと心が通じ合ってないのに、気持ちよさだけ求めたって、
本当の気持ちよさは味わえないよ?
おいらはじっと翔君を見つめる。
綺麗な目だな……。
ぷっくりして、ちょっとヤラシイ唇も、笑うと可愛いんだ……。
首筋を撫でていた手で、翔君の唇を撫でる。
「さ、智君……!」
「しょおくん……。」
おいらは翔君の唇を撫でながら言う。
「しょおくんは……おいらのこと……すき?」
「す、好きだよ……。」
翔君の親指が、優しくおいらの頬を撫でる。
「そのすき……は……。」
おいらは何て言おうか考える。
考えるけど……頭が回んない。
「チュ~してもいいやつ?」
「ちゅ、ちゅ~?」
「うん。」
おいらは翔君を見ながらヘラ~っと笑う。
だって、翔君のびっくりした顔が可愛かったんだもん。
「チュ、チュ~は……あんまりしないかな?」
「しちゃダメ?」
「し、してもいいけど……。」
「おいら、しょおくんにチュ~したい~!チュ~したくなっちゃうすき~。」
「えっ?」
おいらは正直な自分の気持ちを伝えたかったんだけど……。
これで伝わる?
ああ……全然頭が…回らない……。
「ご、ごめん……考えたことなかった……。」
考えたこと……なか…った……ってことは……。
おいら、振られたの?
やっぱり……男同士なんて無理なんだ……。
対象に入ることもできないんだ……。
「しょお…くん……。」
翔君の顔をじっと見ていたら、どんどん目の前が霞んできた。
「さ、智君、泣かないで。」
翔君の唇を撫でていた手が止まる。
え……おいら、泣いてる?
そら見たことかと、煩悩が鼻を鳴らしたのが聞こえた。
おいらは……
A 煩悩にしたがって、頑張って色気で攻め落す。
B リーダーにしたがって、誠意のある可愛さで翔君の気持ちを変える。
C 傷心のまま、家に帰る。
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