「ココロチラリ」
ココロチラリ(やま)【58~Last】

ココロチラリ その後(60) - タイムカプセル side story -

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いつもの通りシーツをベランダに干して、買い物に出たら、エレベーターホールで

お隣の奥さんと一緒になった。

お隣は新婚さんで、引っ越しして来た時に挨拶に来てくれたきりだったかな?

「こんにちは。」

おいらがにっこり笑うと、奥さんはちょっと頬を染めて会釈した。

「こんにちは。」

何を話していいかわからない、緊張した空気が流れる。

「あ、あの……。」

奥さんが言いづらそうにチラッとおいらを見る。

「お友達……ですか?」

「え?」

おいらはすぐに何のことかわかったけど、どう答えるのが一番いいのか……。

「……違います……。」

とりあえず、小さな声で答える。

「……恋人……?」

奥さんはゴクリと唾を飲む。

聞いちゃいけないような、でも聞いてみたいような、そんな感じ。

おいらはふぅと息を吐いて答える。

「はい。」

にっこり笑うと、奥さんもほっとしたように笑顔が広がる。

「そうですよね?だって、毎朝ラブラブなんだもん。」

奥さんは思い出したのか、クスクス笑う。

「あ……うるさくてすみません……。」

「うふふ。行きたくなさそうに、何度も振り返りながら仕事に行ってますよ?」

「は、はぁ。」

おいらは恥ずかしくて、後頭部を掻く。

「ウチ、まだ新婚なのに……そんな感じ、全然なくて羨ましい。」

奥さんが頬を膨らませると、エレベーターがやってくる。

「付き合ってる期間が長かったのがいけないのかな……。」

奥さんがエレベーターに乗り込むと、おいらも後に続く。

「長いんですか?」

「うん。中学からだから……。」

「すごい。」

「もちろん、別れた時期もあったけど、最後はあいつかなって思っちゃって。」

奥さんが照れたように笑う。

「おいら達も……幼馴染なんです。」

「え?私達より長いんじゃない?」

「でも付き合い始めたのは1年位前だから……。」

なんか、こういう会話……照れる……。

そう言えば、恋の相談も、されたことはあったけど、したことってあんまりなかったかも。

言えない恋だったから……。

「そっかぁ。ずっと好きだったの?」

おいらは恥ずかしくて答えられない。

でも、おいらの顔が答えてたみたいで……。

「実ってよかったね。」

奥さんが優しい顔で笑ってくれた。

おいらも小さくうなずいて笑うと、エレベーターが1階についた。

マンションの前には、幼稚園バスを待つ親子連れが仲良さそうに立っている。

「おはようございます。」

奥さんが声を掛ける。

おいらも小さな声で挨拶する。

「おはようございます。」

親子連れは振り返って、一緒に返してくれる。

「おはようございます!あ、ママの好きな人~!」

女の子がおいらを指差して、楽しそうにお母さんの顔を見る。

「こら!シッ!」

お母さんは顔を赤くして、女の子の口に手を当てる。

「す、すみません。っもう、この子は。」

「だって、いっつも言ってるよ?あのお兄さんカッコいいって。

 あたしはもう一人のお兄さんの方が好き~。」

おいらは女の子に向かって笑う。

「うん。ショウ君、カッコいいもんね。」

「やだ。ノロケ?」

奥さんがおいらの顔を見て笑う。

あはは。そうだよね。

これ……ノロケだ……。

恥ずかしい……。

すると、女の子がおいらの上着の裾を引っ張る。

「ねぇねぇ。お兄さん、いくつ?」

「う~んと、31歳だよ……。」

おいらは右手を3本、左手を1本指を立てて見せてあげる。

「マリナと……。」

女の子は指を折って数える。

マリナちゃんていうんだね。

二つに結わいた髪が可愛い。

これはパパ、メロメロだね?

「いっぱい違う~!」

女の子がお母さんを見ると、お母さんは苦笑いして女の子の手を掴む。

「ね?もう一人のお兄さんはいくつ?」

「ショウ君?おいらと同い歳。」

おいらはちょっと腰を屈めて女の子を見る。

「マリナね、もう一人のお兄さんにチョコ、あげてもいい?」

「あ、バレンタイン?んふふ。いいよ~。きっと喜ぶよ。」

おいらが笑うと、マリナちゃんはちょっと恥ずかしそうに頬を赤くする。

「あのねぇ、マリナ、ケンタ君にもあげるんだ。ママと作るの!」

「いいね~。楽しそう。ケンタ君は……マリナちゃんの好きな男の子なの?」

「うん!幼稚園で一番イケメンで、背が高いの!」

おませなマリナちゃんは自慢げに話し続ける。

それを見ていた隣の奥さんとお母さんは、おいらに向かってすまなそうに頭を下げる。

「マリナ、お兄さん、忙しいからね?」

「大丈夫ですよ。」

おいらが笑顔を向けると、お母さんが顔を赤くして下を向く。

「ママ~、どうしてお兄さんの顔見ないの?恥ずかしいの?」

「ほんとに、いいから!」

マリナちゃんは、大げさに顔を縦に振ると、大きな声で言う。

「わかった!お兄さんのこと好きになっちゃったの?

 マリナ、パパに内緒にしてあげる~!」

「ほんとに!もうそれ以上しゃべらないで。」

お母さんは、マリナちゃんの手を引いて、道路を渡った向い側に行く。

すると、ちょうどいい具合に幼稚園のバスがやってくる。

マリナちゃんは元気よくバスに乗ると、窓を開けて、力いっぱい手を振ってくれる。

「あのパワーで来られたら……取られちゃうかもよ?」

奥さんがクスクス笑う。

「うん。取られちゃいそう。」

おいらもクスクス笑う。

「じゃ、この辺で……。」

奥さんは軽く会釈して行ってしまう。

「そうか……バレンタイン……。」

おいらは、う~んと考える。










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