明日に向かって(やま)

明日に向かって ㉑

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「ほら!原稿!」

先生はUSBを二宮さんに投げる。

「はい。確かに。」

二宮さんは満足そうにニヤリと笑うと、先生の腕を掴む。

「じゃ、帰りますよ?ウチには先生を遊ばせるお金は一円もありません。」

「え?ええ~っ?」

掛けてあるハンガーから洋服を適当に引っ掴むと、二宮さんはそれを先生に押し付ける。

「ほら、すぐ着替えて。」

「せめて一日!一泊だけ!」

「ダメです!ほら、すぐに用意して!また来たかったら、新しい小説、考えてください!」

先生はその日の内に、引きずられるように帰っていった。

原稿が上がったら、それは帰らなければならないってこと……。

仕方ないんだよね……。

また……きっとすぐに来てくれる……よね?

おいらの目がじんわり滲んでくる。

先生……。

すると、携帯が鳴る。

「もしもし……。」

目の前が霞んで、相手も確かめずに携帯に出る。

「ああ、私だ。」

「……私……。」

「そうだ。私だ。」

聞きたかった声。

「……先生。」

「すぐに……来るから。それまで寂しくても浮気せずに待っているように。」

「え……おいら達、付き合ってる……の?」

「当たり前だ。愛し合う者同士、付き合うのが当然だろ?

君は、金輪際、私から離れることを認められない。」

おいらはなんだか笑いがこみ上げてくる。

我が儘で不器用な先生。

「っふふ。でもおいら、好きって言われてないし……。」

「なんだ、そんなことが聞きたいのか?」

「……うん。」

「……わかった。次に会った時に……言ってやる。

 だから、浮気もダメだが……泣かずに待っていてくれ。

 私は君に泣かれると……困る。」

先生……。

「……わかった。おいら泣かない。浮気もしない。

 だから、早く……。待ってるから。」

「ああ。約束だ。」

「うん……。」

2人の間に沈黙が流れる。

おいら達はどうしていいかわからず、じゃ、と言って電話を切った。

うん。先生もおいらが好きだってわかったから、待ってられる。

遠距離恋愛みたいになっちゃったけど、おいら、頑張って待ってるから!

それまでに、今まで以上に仕事も覚えて……そうだ。

絵も描こう。

諦めかけた夢だけど、先生見てたら、もうちょっと頑張ってみたくなってきた。

先生だって頑張ってるんだもんね。

おいらは空を見上げた。

先生と一緒に昼間見た空は、堕ちて来そうな星でいっぱいになっていた。



1週間後、二宮さんと先生がやってきた。

「今日から一応、1週間の予定です。よろしくお願いします。」

二宮さんが笑顔で母ちゃんと手続きに行く。

「本当に早かったね。」

「ああ、速攻で新しい小説考えた。」

「って、最後の追い込みとかで籠るもんなんじゃないの?」

おいらは先生の荷物を持って、いつもの2階の部屋へ案内する。

「今回は……特別だ。」

部屋に入ると、先生がおいらを後ろから抱きしめた。

「特別って?」

おいらは先生の荷物を置くと、前に回された先生の腕に頬を付け、手を添える。

先生の温もりと匂いに包まれて、先生が来てくれた実感が沸いてくる。

「今度の小説……新しいジャンルにチャレンジしようと思ってね。」

「新しいジャンル?」

先生の唇がおいらの耳の下をくすぐる。

「そう……新しい……。」

あんまりくすぐったくて、おいらは首をすぼめて先生から離れる。

おいら、なんとか心の準備、してみようと頑張った……。

「先生……おいら……。」

でも……やっぱりまだちょっと無理みたい?

先生、来るのが早すぎなんだよ!

「ダメだ。小説の為に手伝ってもらわないと……。」

おいらの顔を見て察したのか、先生が口を尖らせる。

「また……?」

「そうだ。」

先生はニヤリと笑って、おいらを抱きしめる。

「今回は……男同士がテーマ。」

え?

おいらが顔を上げると、楽しそうに先生が笑う。

「そう。新しいジャンル。BLにチャレンジ。」

「え?ええ~っ?」

おいらはびっくりして目をパチクリする。

「そんなの二宮さんが許すわけ……。」

「あいつも恋する生息子……。今頃は松本君のところに行っているはず。」

「え?ええ~~~っ!潤と?」

「まだ片思いらしいが……。これで最大の敵が最大の味方になったわけだ。」

二宮さんと潤……想像できない。

おいらはグルグルと二人のことを考えてみる。

「あいつらのことはいいから……。」

先生の唇がおいらの唇に重なる。

ああ、先生のしっとりした唇……。

待ってたからかな?

前とは違ってゾクゾクする!

心臓が飛び跳ねる!

「智……。」

「ん……?」

先生は微かに唇を合わせたまましゃべるから、くすぐったくてかなわない。

2人の熱い体温が、唇を通して同じ温度になっていく。

ああ……おいら、こんなに会いたかったんだ……。

先生の唇が、ゆっくりとおいらの首筋に移動する。

「……実践……。」

「へ?」

首筋の、鎖骨の上辺りを先生の唇が這うと、おいらの背中がビクッとする。

「さ。小説の為だ。覚悟を決めたまえ。」

「そ、そんなこと言われても……。」

先生の手が作務衣の紐を解く。

逃げようとするおいらを容赦なく抱きしめる。

「今日は、逃がさないよ?」

先生がニヤリと笑う。

せ、先生!

先生の指が、作務衣の内側の紐も解く。

あ、あ~れ~~~っ!

先生は器用においらを一回りさせながら、作務衣を脱がしていく。

おいら……おいら、大丈夫なのか~っ?

「そんなに縮こまらないで……可愛がってあげるから。」

先生がニヤリと笑う。

おいらは慌てて、尻を両手で隠す。

「あはははは。本当に君は面白いね?」

ねぇ!先生、大丈夫なんだよね?

「大丈夫。」

先生がおいらの髪をゆっくりと撫でる。

「……智…………好きだよ……。」

「え?」

おいらは、自分の耳を疑う。

「今、なんて?」

まさか、先生からそんなストレートな言葉が出てくるなんて、思ってもみなくて。

「実践でなら……何度でも聞けるだろ?」

先生の低い声が意地悪く響き、その綺麗な指が、ズボンのボタンを外す。

おいらが体を引くと、先生は満面の笑みで、おいらを抱きしめる。

「さぁ、禁断の世界へ!」

おいらの明日に、明るい未来はある?

あるの?

あるよね?

先生~~~っ!

先生は眉尻を下げ、今まで見た中で一番の優しい顔でおいらを見つめる。

「愛してるよ……智……。」

先生……ずりぃ!










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