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明日に向かって(やま)

明日に向かって ⑳

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おいらは首を捻って考える。

……告白……どれが告白?

そんなおいらを見て、二宮さんが笑う。

「先生。どうやら伝わってないようですよ。告白。」

先生は、パソコンから顔を上げると、ムッとしたように眉を吊り上げる。

「私の告白を聞いていなかったのか?」

先生が怒っているようなので、おいらはうつむき加減でおずおずと答える。

「聞いてたけど……。どれが告白?」

小さな声しかでない。

「ばっ、馬鹿か?あんなにいろいろ言ったのに!」

先生の顔を見て、二宮さんが笑う。

「あはははは。ダメですよ?まだあげ初めし前髪の~なんて言っても。

 イマドキの人にはわかりません。」

「ばか。それは言うのを止めた……って、初恋じゃない!」

「初恋でしょ?明らかに。」

「違う!私の初恋は中学生の頃のスウェーデンの……。」

「だから、初めての恋、今してるんでしょ?」

先生が、ウッて、喉を鳴らして口をつぐむ。

二宮さん、すごい。

先生相手に一歩も引かないどころか、やり込めてる?

今度、その秘訣を教えてもらおう……。

「だったら、はっきり言ってあげないと。」

「な、何をだ!」

「何をって……わからないんですか?この恋愛オンチ!」

「失礼な!」

先生の眉がどんどん吊り上がっていく。

ああ、怒らせちゃったよ。二宮さん!

大丈夫なの?

「だいたいね。最初に大野さんに会った時から、そわそわしてたくせに。」

「そわそわってなんだ!」

「電話越しでもわかりましたからね?これは大変!原稿上がるのかって心配になって

 飛んできたんですから。」

二宮さんは 厳しい口調でしゃべり続ける。

「初めての恋愛なんですよ?心配にもなりますよ。案の定、来てみたら、

それは楽しそうに大野さんの話をするする!

 34にもなる男が、壁に相合傘、落書きしそうな勢いでしたからね?」

「……相合傘?」

おいらは先生の顔を見る。

「そ、そんなことはしとらん!」

先生の顔は強張って、徐々に赤くなっていく。

「しそうなくらいの浮かれ気分だって言ってるだけです!」

「え……って、先生34歳?おいらより年下!」

先生と二宮さんが同時においらを見る。

「え?大野さん、年上なの?全然見えないけど。」

「実年齢などどうでもいい。中身は十分、私より下だ。」

先生、おいら馬鹿にされてる?

「その中身年下の大野さんに翻弄されちゃって。覚えてますか?

電話で、キスしようとしたら怯えられた、あれは私を意識してるってことだよな?って。

 確認せずにはいられない34歳!

 普通、男に迫られて、びっくりしない男はいないでしょ?って言ったら……。」

「あ、ああ~~!二宮君、それ以上は止めておこうか?」

先生が突然大きな声を出す。

「じゃ、私がきらいなのか?って今まで聞いたこともないような声で!」

「そうなの?」

おいらが二宮さんを見ると、二宮さんは大きくうなずいて、

「その後にも、泣いてるんだが、どうしたらいいのかわからなかったって

オロオロ電話掛けてきて。」

面白そうにチラチラ先生を見る。

「可愛くて、つい加減がわからなくなる……。」

「ああ~っ!二宮君、ちょっと買い物に行ってくれないか?

 私は炭酸の入ったオレンジジュースが飲みたい!

 残念ながら、この旅館にはおいてないんだよ。」

二宮さんはクスクス笑いながら、おいらの肩を抱く。

「いいですよ。但し、大野さんもご一緒してもらいます。

 私、この辺の地理に詳しくないので。」

「それは……。」

先生がおいらと二宮さんを交互に見る。

「帰ってくるまでに書き終えてくださいよ?

 書き上がるまで、大野さんは連れ帰りませんから。」

二宮さんは、おいらを連れて、スタスタとドアに向かう。

「……ええい!わかった!あっという間に書き終えてみせる!」

先生のキーボートの音が響き始めると、二宮さんはクスッと笑って部屋を出た。

「すみませんねぇ。あんな先生ですが、よろしくお願いします。」

廊下を歩きながら二宮さんが軽く頭を下げる。

「い、いえ、こちらこそ……。」

「じゃ、私は買い物に行ってきますから、大野さんも仕事に戻ってください。」

「は、はい……。でも、大丈夫ですか?」

「大丈夫でしょ?先生は乗り始めたら、時間を忘れちゃうから。

適当な時間になったら伺いますので、一緒に先生のところに行ってください。」

「わかりました……。」

おいらは、先生のことを何でも知ってる二宮さんが羨ましくて、ちょっと口を尖らせる。

「ああ、私にヤキモチは必要ありませんよ。先生は全く好みじゃありません。」

「でも……。」

「私はしっかりノーマルですし、もし仮に男の人を好きになるとするなら……。」

二宮さんは、階段を上ってくる潤を見つけてピクッとする。

「そう!こういう顔!こういう人が好みです!」

おいら達と目が合って、潤が戸惑ったように立ち止まる。

「え?何?俺の顔に何か付いてる?」

「いいえ、何も!」

二宮さんはにっこり優しい笑顔を浮かべて潤に近づいて行く。

さっきまで先生をやり込めていた時とは、全然違う顔に、おいらはたじたじになる。

恋すると、人ってこんなに変わるんだ?

おいらはガラス戸に映る自分を見ながら、母ちゃんのいる帳場に向かった。










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