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明日に向かって(やま)

明日に向かって ⑱

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「せ、先生?」

おいらは先生の前で膝をついて、先生に抱きしめられている。

おいらを抱きしめたまま、おいらの首筋に顔を埋め、先生はピクリともしない。

先生の耳のところの髪が、おいらの頬をくすぐって、ほわ~っとするのに、

どうして抱きしめられてるのかわからなくて……。

「ど、どうしたんですか?」

先生の香りに包まれて、先生の体温を感じて、おいら、もう……。

でも、あんまり先生が動かないから心配になってくる。

「先生……具合、悪い?」

おいらが先生の顔を覗き込もうと首を動かすと、先生のクスクス笑いが聞こえてきた。

「クックック……。」

「せ、先生?」

「叶わない恋がしたかった……。」

「先生?」

おいらは先生の顔を覗き込む。

「でも……。」

先生がちょっと顔を上げて、目だけでおいらを見る。

悪戯っ子のように楽し気で、悪魔のように魅惑的な瞳。

おいらはドキッとして視線を逸らす。

先生はすかさず、おいらの頬を両手で包むと、じっとおいらを見つめる。

おいらは恥ずかしさで視線が合わせられない。

そんなにじっと見んなよ!

「叶わない恋なんて糞くらえだ!

 好きなやつが他の男の隣で笑ってるなんて、虫唾(むしず)が走る!」

「え?」

……どういう意味?

「まして、泣くなんて言語道断!」

おいらは先生が何を言ってるのかわからない。

泣くって……さっきのおいらのこと言ってる?

え?

「君は……。」

先生の瞳が揺れて、おいらの顔を隅々まで見回す。

「私が好きなのだから、いつでも私の隣で笑っていなければいけない。」

先生がこれでもかと優しく笑う。

そんな顏したらおいら……。

「泣く時も……。例え私に泣かされたとしても……。」

え?また先生、おいらを泣かせようと思ってる?

おいらがビクッと身を引いても、先生とおいらの距離は変わらなくて……。

「先生?」

むしろ、どんどん先生の顔が近づいてくる。

「ちょ……先生……。」

おいらが背中を逸らせても、先生の顔は遠のくどころか、さらに距離を縮める。

「私が好きなのなら……一生、私の隣にいればいい。」

それって……どういう意味?

先生の言うことは、全然おいらにはわからない。

「無理だよ……。」

「どうして?」

「だって……。」

おいらは小さく唾を飲む。

だって、先生には好きな人がいるんでしょ?

おいら、先生の為に、隣で応援しなくちゃならなくなる……。

そんなの、辛すぎる!

……いや、違う。

好きなら応援してあげなくちゃいけないんだよね……?

先生には嫌みな顔で、ずっと笑ってて欲しいから。

好きな人の幸せを願ってあげなきゃいけない……。

「先生のこと応援……する。」

「応援?」

「先生が、好きな人と幸せになれるように……。

 叶わない恋が叶うように……。」

先生の顔が固まる。

え?先生、おいら何か間違ったこと言った?

好きな人の幸せを願ってあげるのが、好きってことだよね?

おいら、間違ってないよね?

「……馬鹿か?」

「へ?」

「お前は馬鹿か?」

「え……。」

おいらは戸惑って、先生の顔から何か読み取ろうと頑張ったけど、

やっぱりおいらにはわからなくて……。

「お前は、私の話を聞いていなかったのか?」

「き、聞いてたけど……。」

おいらは視線を下ろして、先生から顔を背ける。

でも、先生は頬に当てた手を離してはくれない。

「好きなやつが、自分以外のやつの隣で笑ってて、いったい何が楽しい?」

先生の声はちょっと怒ってるみたいで……。

「でも……それが先生の幸せなら……。」

「だったら、お前が私を幸せにすればいい。」

「え?」

おいらはおもわず先生の顔を見上げる。

先生は目尻を垂らし、目を細めておいらを見てる。

くしゃっと顔を歪めた、おいらの好きなあの顔で。

「おいらが……?」

先生が、優しい顔のままうなずく。

「でも、先生、好きな人がいるって……。」

「気にするな。」

先生はおいらの顔にさらに顔を近づける。

もう、あと3センチくらいで顔がくっついちゃうよ!

「気、気にするよ!」

「私が気にしなくていいと言ってるのに、何を気にする必要がある?」

先生の顔が後1センチまで迫る。

「先生が両想いになったら、おいら、先生の隣にいられなくなる。」

「どうして?」

先生の鼻がおいらの鼻とぶつかる。

「どうしてって……。それでも先生の隣にいなきゃいけないの?」

「当たり前だ。君は一生私の隣にいるんだからな。」

「先生は……本当に意地悪だ……。」

「意地悪?馬鹿を言うな。こんなに優しいやつもいないだろ?」

「意地悪だよ。おいら、先生が好きなんだよ?

 その先生が、他の人とイチャイチャしてるのを隣でずっと見てなきゃならないんだよ?

 そんなの地獄だよ。」

「だったら君が私とイチャイチャすればいい。」

先生の唇がおいらの唇にくっつく。

先生の唇は柔らかくて、温かくて、しっとりしてて、

おいらの唇を優しく包んで、すぐに離れる。

「え?」

おいらはびっくりして、目をパチクリする。

「両想いになったら、それこそずっと隣にいなけりゃならないだろ?」

「え?……ええっ?」

おいらがさらに目を見開くと、先生はクスッと笑って、また顔を近づける。

「本当に、愛しいくらい馬鹿だな。」

先生の唇がまたおいらの唇を包み込んだ。










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