明日に向かって(やま)

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先生は両肘を付いて手を組むと、そこに顎を乗せておいらをじっと見る。

細く長い小指だけは重ならず、空に浮いて、軽く曲がる。

「告白……。」

「別に構わないだろ?本人に告白しろと言ってるわけじゃない。」

先生のニヤリ顔が、さらに意地悪く歪む。

先生は知らないけどさ。

本人に告白だから……。

「私の原稿の為だ……。それくらいはしてくれるよね?」

先生の目が光る。

ふん……いいよ。

してやるよ。

おいらの告白……。

こんなことでもなければ、先生に告白なんて、一生できるわけないんだから。

おいらの最大級の勇気を振り絞って。

でも、絶対相手に伝わらない告白!

「わ、わかりました……。」

おいらは真っ直ぐに先生を見て、大きく息を吸う。

先生はなおも面白そうに両手に顎を乗っけたまま、おいらを見てる。

「おいら……。」

「おいら?」

先生がちょっと首を傾げる。

「……私……先生が……好きです。」

ありったけの想いを込めて、女の気持ちになってみる。

先生を見つめていたら、だんだん目が潤んで、視界がぼやけてくる。

おいらの精いっぱいの告白。

「そんなストレートな告白?」

「ス、ストレートじゃダメですか?」

「ダメだろう。それじゃ小説にならない。」

ダ、ダメって言われても……。

「じゃ、じゃあ、どうすれば……。」

「そうだな……まず、シチュエーションからいこうか?」

先生は立ち上がると、座卓を回って、おいらの隣にやってきた。

「せ、先生?」

「女は、男の家に初めてやってきた。もちろんお互い好きなんじゃないかと思ってる。

 でも、最後の一歩をなかなか男が踏み出してくれない。」

先生は小説の話をしながら、窓枠に腰かける。

「二人で窓の外、夕焼けの空を見ながら語り出す。」

窓の外はまだ夕焼けには程遠い。

先生がこっちへ来いと手招きする。

おいらは恐る恐る立ち上がる。

「女は告白する決心を固めているんだ。例え相手が自分の姉の恋人でも。」

や、やっぱりキンダンの愛……!

先生が無理やり好きになったのも年上の?

例えば……母ちゃんとか?

…………イヤイヤ、ナイでしょ。いくらなんでも年上すぎ!

でも、先生、いったい幾つなんだろう?

「断られることはわかってる。でも、ちゃんと告白して、振られたい。

 淡い恋心を持っていても、それはダメだよと言われたい……。」

先生の顔が優し気においらを見る。

待っているのは姉の恋人として?

だからそんな優しい顔をするの?

先生の側へ行くと、先生がおいらを見上げて腕を組む。

きっと、おいらも言われた方がいいんだよね?

先生にはっきりと。

「おいら……先生が好きだよ?」

組んだ腕の、右手の小指にそっと手を添える。

さっき、先生の顎を支えてなかった小指が、おいらとなんだか重なって、

小指なら、触れてもいいような気がして……。

先生はその、おいらの手をじっと見て、微動だにしない。

「意地悪で、嫌みで、上から目線で、おいらのことなんか全然考えてくれない我が儘で、

 サザンカも知らなくて、でも、そのサザンカが健気でいいって教えてくれて……。」

おいらは小さく息を吐く。

先生はおいらをそっと見上げる。

「おいらの涙をシャツで拭いてくれて、くしゃっと笑う横顔が可愛くて……。

 さっきも心配しておいらのこと探しに来てくれたんだろ?」

先生の、見上げる目が澄んでいて、とっても綺麗。

本当は優しくて、あったかい人なんだよね?

ちょっと素直じゃないだけで……。

「そんな先生が、おいらは大好きみたいで……。」

おいらは先生の小指をぎゅっと握る。

握って先生の顔を真っすぐに見る。

先生の言葉を待って、ゴクリと唾を飲むと、先生はおもむろに口を開く。

「……みたいってなんだ?」

「…………。」

「はっきり好きだとは言えないのか?」

「い、言ったじゃん。」

「言ったか?」

「言ったよ。」

「じゃ、もう一度はっきり聞こうかな?」

「も、もう言えない……もう無理。」

おいらは首を振って、先生から離れようと振り返る。

すると、先生がおいらの腕を掴んで引っ張る。

「好きなのか?きらいなのか?」

先生がニヤリと笑って聞いてくる。

「…………。」

おいらが何も言えないでいると、先生が腕をさらに引っ張る。

先生との距離が5センチ位になる。

ダメだ。

これ以上はもう……。

「君の口から、もう一度聞きたい。」

いつになく真剣な声に、おいらはぎゅっと目を瞑ると、つぶやくように言う。

「だ、大好きだよ。」

「誰が?」

先生の言葉に、目をぎゅっと瞑ったまま答える。

「……おいらが……。」

「誰を?」

「……先生…を……。」

「本気で?」

「……本気…だよ……!」

「……本当だな?」

おいらは目を開けて先生を見る。

先生は、顔をくしゃっとさせて、びっくりするほど可愛く笑ってる。

「せ、先生?」

「それは……私の小説とは関係なしに、好き……ということでいいんだね?」

「そ、それは……。」

先生の小説にかこつけさせてくれよ。

でないとおいら……もう先生に会えなくなっちゃう。

「ええいっ。もう遅い!」

先生はおいらの腕をグイッと引っ張った。

「え?……あれ?」

おいらがびっくりしていると、先生はおいらをぎゅっと抱きしめた。










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