明日に向かって(やま)

明日に向かって ⑯

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先生はしばらく黙って考え込んでいた。

じっとおいらを見据えて、唇に当てた指をゆっくり動かす。

指の動きと唇の赤さに……おいらの頬が熱くなる。

おいらが恥ずかしくなる必要はないよね……?

先生!何考えてんの?

おいらはいたたまれなくなって、下を向く。

先生のクスッと笑いが聞こえる。

「そんなにビクビクしなくても……。」

声に反応して顔を上げると、先生は薄ら笑いを浮かべておいらを見てる。

え?先生、辛い恋で苦しんでるんじゃないの?

先生はパソコンに目を向けると、腕組みをする。

「今ね、主人公の女が好きな男に告白するとこなんだよ……。」

顔色を変えることなく、おいらに言う。

「ちょっと、やってみてくれないかな?」

やってみるって、何を?

告白?

先生に告白?

「おいら……告白なんてしたことないし……。」

先生がパソコンの脇に肘を付いて、湯呑をすする。

「……そうか。」

先生はクスクスと笑う。

「君が……今まで付き合ってきた人は、相手の方からやってきて、

 相手の方から去って行った……。そういうことかな?」

い、言いにくいことをはっきりと……。

そうだよ。

好きって言って近づいてきて、なんか違うとか言って去っていく。

みんなそんな感じだったよ。

おいらだって、最初はそんなに好きじゃなくても、だんだん好きになっていくもんだろ?

で、まったりしてくると、みんな離れていっちゃう。

そ、そんなに経験あるわけじゃないけど……。

「つまり、君は本気で人を好きになったことはない……。」

「そ、そんなことないよ!」

おいらは先生を見つめ、声を上げる。

「そうかな?」

「そうだよ……。今……好きな人……いるし……。」

声がだんだん小さくなっていく。

先生は右眉を上げ、ニヤリと笑う。

「ああ、さっきの男?確かにイケメンだったけど、あれは女がほっておかないだろ?」

「ち、違っ!っていうか、どうしておいらの好きな人、男にするんだよ!」

「違うの?」

おいらは先生のするどい視線に下を向く。

ち、違くないけど……。

相手、男だけど……。

潤じゃないし……。

おいらは尖っていく口を意識しながら、手を握り締める。

「ち、違います。おいらが好きなのは……。」

おいらはその先が癒えなくて、言いよどむ。

言えるわけないよ。

好きな人目の前にして……。

「じゃ、女なの?」

先生の声が上から降ってくる。

女じゃないって言ったら……引かれるかな?

でも、先生だって、好きな人がいるんだ。

好きになったら男も女も関係ないって、おいらの気持ち、わかってくれる?

「黙ってるとこを見ると……やっぱり男なんだね?」

先生の声は、引くと言うよりは、面白がってるように聞こえる。

それとも機嫌が良いだけ?

おいらがチラッと先生の顔を見ると、先生はククッと笑って、

人差し指と中指で唇を撫でている。

おいらは急いで顔を隠す。

少なくとも引かれてはいないみたい……。

「あいつの……どこがいいの?」

先生の声が低く響く。

そんなこと言われても、おいらの好きなのは潤じゃないし……。

「私よりイケメンかね?」

先生の声が少し柔らかくなって、おいらはまた、チラッと顔を上げる。

先生は顎を撫で、両眉を上げて、キリッとポーズを取る。

「先生、その顔……。」

「ん?知らないか?芥川龍之介のイケメンポーズ。」

見たことあるような、ないような?

「君は、中原中也に似ているね。丸顔だが、イケメンだぞ。」

おいら、知らないし!

「で、どうだね?私の方がイケメンじゃないかね?」

「そ、それは……。」

おいらから見たら、相手がだれでも、先生が世界一のイケメンだよ!

なんて、口に出しては言えない……。

「私の声もなかなか人気があるんだが……。」

知ってるよ。先生の声、ズンってきて、ゾクゾクして……。

そんな声で甘いこと囁かれたら、落ちない女なんていないだろ?

「どうだい?私はあんまり魅力はないかな?」

先生がおいらを見て、困った顔をする。

「先生は……。」

おいらは膝の上の手をぎゅっと握って肘を突っ張る。

「イケメンだし、声もカッコいいし、頭もよくて、

 おいらの知らないこといっぱい知ってて……。」

「違う違う。私が聞いてるのは、あの男よりイケメンがどうかだ。」

先生が真剣な目でおいらを見る。

「潤は……作る料理も旨くて、顔もあの通りカッコ良くて、優しくて、男気もあって……。

 でも……先生の方が……イケメン……。」

「ん?最後がよく聞こえない。」

先生が大げさに耳を傾ける。

おいらは大きく息を吸って先生を見る。

「先生の方がイケメンです!」

先生はニコニコ笑って、満足そうに腕を組む。

「そうだろ、そうだろ。では、そのイケメンに向かって告白してみてくれるかな?」

先生が意地悪そうに笑った。

やっぱりそれは忘れてくれなかったか……。








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