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明日に向かって(やま)

明日に向かって ⑭

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「潤……。」

潤の胸に押し付けられた顔。

潤の温もりを感じて、潤の優しさを感じて、おいらは潤の背中に腕を回す。

「潤~!」

止まったはずの涙がまた流れ始める。

「はいはい。泣きたいだけ泣いたら、もっと冷静に考えて。」

「う、うん……。」

そうだ。思いっきり泣いたら……先生の恋を応援してあげないと!

先生までこんな思い……させたら可哀想。

できるかな?おいらに……。

いや、しないと!

好きな人の幸せが、自分の幸せだもんな。

先生が笑ってくれたら、おいらもきっと笑顔になれる……。

「う、うわぁ~ん……。」

おいらは声を上げて泣いた。

まるで子供だな。

でも、今は……子供になって思いっきり泣きたい……。

おいら、知らないうちに、こんなに先生のことが好きだったんだ。

大好きだよ先生!

でも、おいら、ちゃんと諦めるからね……。

おいらは潤にしがみついて、おいおい泣くと、潤がおいらの頭を撫でてくれる。

ほんと、いい男だよ、潤は。

だんだん声も、涙も収まってくると、潤の手がピタリと止まった。

ザッ、ザッと、誰かの足音が近づいてくる。

おいらはびっくりして、ゆっくりと潤の顔を見上げる。

潤は真っ直ぐにおいらの後ろを見ている。

「これはこれは。」

聞き覚えのある低い声。

まさか……?

振り返ると、先生が腕組みして立っている。

面白そうに唇の端を上げて、おいらと潤を見てる。

「先生……?」

でも、よく見ると、目は全然笑ってないみたい……?

先生、おいらを迎えに来てくれた?

「すみません。お客様にこんな見苦しいところをお見せしてしまって。」

潤が、またおいらの頭を撫で始める。

「いやいやいや。泣かせてしまったのはどうやら私のようだからね?」

先生がそう言うと、潤が小さく笑い始める。

「いえいえ、そんなことはございません。智が泣いているのは……俺のせいですから。」

「君の?」

「はい。智は……自分の想いに気づいたみたいで……。」

潤が、悪戯な天使のように笑う。

「男同士に未来はないなんて……。」

え?潤?何言ってるの?

おいらが首を傾げると、潤はおいらの後頭部をがっつり掴んで、

またおいらを胸に押し付ける。

ちょ、ちょっと待って!潤!

「だから、そんなことはないと、教えてあげてるとこなんです。

 先生ならわかってくれますよね?」

おいらは必至で足掻いてみるけど、潤の手は力強くて、おいらの頭はビクともしない。

「ああ、もちろん。だが……。」

「智は近年稀に見る鈍感で、しかも救いようもないほどお子様で。」

先生の言葉を遮って、潤がしゃべり続ける。

「湧き出る泉のように純粋で、意地悪な無理難題にも、素直にしたがっちゃう。」

……潤は何を言ってるんだ?

湧き出る泉って……おいら、そんなに純粋じゃないぞ?

「駆け引きや、根回しなんてとてもできるやつじゃないから、

 東京でもあんまり上手くいかなくて。」

潤……。

「そんな智を、俺は愛しいと思っています。」

潤……?

おいらが顔を上げようとすると、潤の手が、おいらの顔を胸に押し付けた。

「なるほど……。君たちは愛し合っていると……。」

え?ちょっと待って?

君たちって誰?おいらと潤?

「そうです。智を守って、大事にできるのは俺だけだと思っています。」

「そうか……。」

え~っ!潤、それ、どういう……。

って、先生にそんなこと言ったら……。

「彼は男同士に抵抗がないんだな。」

え?え~~っ!

先生、気にするとこ、そこ?

「智はそんな小さなこと、気にする男じゃありません。」

え?気にするよ、気にする!

気にするけど……好きになっちゃったんだもん……。

おいらは二人の話の展開についていけない。

普通、付いて行けるような内容じゃないよな?

先生は押し黙って考える。

「では私も……叶わぬ恋は止めて、苦難を乗り越える切ない恋を書こうかな。」

腕組みし直しながらそう言って、潤に向かってニヤッと笑う。

「その小説……残念ながら、ハッピーエンドになりませんよ?」

「それはどうかな……。苦難は、あればあるほど恋も盛り上がる。」

潤がクックと笑う。

え?潤でもこんな笑い方すんの?

「純粋な想いほど強いものです。苦難を……果たして乗り越えられるでしょうか?」

先生もクックと笑い、ニヤッと潤を見る。

そう!その笑い方は先生の笑い方!

ちょっと意地悪で、冷たく見えるけど……。

本当に意地悪だけど……だけど……。

……?

ただの意地悪……。

怖っ。おいら、意地悪さえもされたいと思ってる。

好きになったらあばたもえくぼって本当だ!

「乗り越えなければ話にならんだろう?」

「そんなことありませんよ。乗り越えられなくて、身近な幸福に身を委ねる……

 なんて言うのも、読者の心をくすぐるんじゃないですか?」

「新しいね。けれど、私向きの話じゃないな。」

「そうですか?新しいストーリーにチャレンジしてみるのも、いいかもしれませんよ?」

「なるほど……。では私の新しい小説の為に……。」

先生はおいらの背に向かって声を張る。

「すぐに私の部屋に来るように。

 君が途中で投げ出してしまったのでね。まだ仕事は終わっていないんだよ。」

先生を見ると、先生と目が合って……。

反射的に視線を逸らし、潤の胸に顔を埋める。

すぐに先生の足音が聞こえる。

どうしよう。おいら、先生のとこに行っても大丈夫かな?

また泣きたくなっちゃいそうだよ。

おいらが顔を上げて潤を見ると、潤がクスッと笑った。










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