「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the action (5人)

テ・アゲロ  the action ⑥ -21-

 ←テ・アゲロ  the action ⑥ -20- →テ・アゲロ  the action ⑥ -22-

「そんなわけないでしょう?」

託也は二宮をまっすぐに見つめる。

「自分の父親が、考えそうなこと、想像してなかった?」

託也は黙って二宮を見る。

二宮の鋭い視線に、託也は観念したのか、大きな溜め息をつく。

「想像……したよ。」

託也は隆子と真実の手をぎゅっと握る。

「きっとマスコミにバレたら、駆け落ちってことにするだろう、

 真実のことは伏せて……何より、国民感情が大事だからね。親も党も。」

「託也さん……。」

隆子が託也を見上げる。

「池上先生にはそうすることのメリットはあまりない……。

 だから、裏で交渉が行われるはず……。

 この件で、俺は爆弾になったからね。

 でも、運のいいことに、俺達3人はそこそこの有名人。

 そのまま不発弾として処理することもできない……。」

「認めるしかなくなるはずだと……。」

二宮は両肘をつき、唇の前で両手を組む。

「もしくは……力づくで引き離すか……。」

託也は冷えたコーヒーをすすり、ちょっと嫌そうな顔をする。

「で、力づくで引き離されそうになっていたんですね?」

二宮はチラッと黒服の男達に目を向ける。

「そう……俺の親の差し金だろう。池上先生は、隆子さんが思ってる以上に

 隆子さんを愛してる。俺の親達とは違う。」

「そんなこと……。」

隆子は不満そうに託也を見る。

「本当だよ。早くに奥さんを亡くされて、心配で仕方ないんだよ。

 情熱的で頭のいい方だけど……不器用なんだな。愛することに。」

隆子は父のことを思い出す。

確かに母を見る目は優しかった。

けれど、言葉や態度で表すことはほとんどなかった、

そのぶっきら棒な優しさを、母はちゃんと気付いてた。

「お父さんは愛情が深いから……。」

母は口癖のようにそう言っていた。

幼い隆子にはわからなかったが、今ならわかるような気がする。

託也と知り合ってからの隆子なら……。

だからといって、父の強引なやり方に、付いていくことはできない。

「やり方を間違えてる。」

隆子が小さくつぶやく。

「それは、あなた達も同じでしょ?」

二宮は組んだ両手に顎を乗せて、三人を見比べる。

三人は顏を見合わせてバツが悪そうに視線を外す。

「こうするより仕方なかったの。父は私の縁談を進めてたし……。」

「真実は、仕事でパリに行くことが決まってる。」

託也は真実を見つめ、切なそうに眉根を寄せる。

「俺がいけないんだね……別れようって言ったから……。」

真実が顏を歪ませ、託也の視線から逃げる。

「二人は別れちゃいけない。」

隆子が思わず叫ぶ。

「こんな純粋な愛、私は知らない。」

「隆子さん……。」

真実が隆子を見つめると、二宮が、ははと乾いた笑いを浮かべる。

「あなた達の茶番に付き合う気は毛頭ないから。」

三人はハッとして二宮に向き直る。

「いい歳した大の大人が、あなた達のせいで振り回されてる。

 しかも、あなた達もいい歳した大の大人だ。」

二宮は口の前で組んだ指をゆっくり広げていく。

「あんた達がしでかしたことで、お金も動く。人も動く。

 政治も……動くかもしれない。」

二宮は鋭い視線で託也を見つめる。

託也はちょっと戸惑いながらも、二宮を見返す。

「それでも俺達は……三人でこれからも生きていきたいと思ってる。」

託也が言い切る。

「そこに、隆子さんは本当に必要?」

二宮の言葉に、隆子は息を飲む。

「いいんじゃないの?御村さんと真実さん、二人で生きていけば。」

「これ以上、隆子さんに迷惑はかけられないよ……。」

真実は託也を見て、うなずきながら言う。

「迷惑なんて思ってない……。」

「でも……。」

「隆子さん……。」

託也が何か言いかけると、大野の声が響き渡る。

「ああ、もういいから!」

大野がベッドから立ち上がる。

「勝手に好きにやってくれ。この場所ももうバレてる。

 計画通り逃げ切れたら、子供でもなんでも作ればいい。

 三人で暮らす?やってみればいい。

 一人の男を巡って、悶々とする日々に耐えられるか。

 自分の血だけが入らない子供と一緒に暮らせるか。

 二人の間で板挟みになって、苦しくならないか。」

部屋中が静まり返る。

「俺は、けぇる。」

大野はドアに向かって、スタスタと歩き出す。

「ちょっと大野さん。」

二宮も立ち上がる。

「俺も帰る!」

松本も後に続く。

「潤!」

輝が声を掛けると、松本はちょっと考えて、チラッと三人に視線を向ける。

「え~、俺やだよ。」

輝が不満をもらすと、松本は頼むと言うように、顏の前に手を立てる。

二宮は西田の顏を見て、目配せする。

「はい。私は残って三人の行方を見守ります。

 楓様に報告しないといけませんし。」

二宮はニコッと笑って大野を追う。

ドアを出ようとしたところで振り返ると、託也を見つめる。

「愛する人達を……大事にしてくださいね。

 若手政治家の御村さん。」

二宮は満面の笑みを浮かべ、出ていく。

託也はそんな二宮を、チッと舌打ちして見送った。










関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ 3kaku_s_L.png 大人の童話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
【テ・アゲロ  the action ⑥ -20-】へ  【テ・アゲロ  the action ⑥ -22-】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【テ・アゲロ  the action ⑥ -20-】へ
  • 【テ・アゲロ  the action ⑥ -22-】へ