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Japonesque(5人)

Japonesque 七話

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成田屋の褥(しとね)は甘かった。

忍ばずの出合茶屋の二階。

相手は吉原の遊女だったが、潤の甘い言葉と優しい指使いに、

すぐにとろんと蕩け出す。

あの顔で、あの声で、耳元で囁く。

あの手で、あの足で、赤い肌襦袢を開いていく。

女はすぐにころころと転がるような声を出し、さらには苦し気な声に変わっていく。

「あ……ああんっ……。」

開かれた肌襦袢の間から、白い足がうごめく。

その奥の、さらに奥。

潤の手が伸びていく……。

二人の背後には、大輪の牡丹の屏風。

女の着ている萌黄と山吹は鮮やかで……。

肌蹴た胸元から覗く柔肌に、色めき立つ。

そこで、潤は女の足から腕を抜く。

「どうして……あんた達が見てんの?」

部屋の隅で終始にこやかな雅紀と智が、ん?と首を捻る。

「そりゃ……俺達のお膳立て……最後までお世話しないと。」

なぁ?と雅紀が智を見る。

「ああ、当然。」

智も大きくうなずく。

「ふざけるな。暁はどうした?」

「暁?」

智はくすりと笑う。

「暁は、隠れて見てるよ。ほら、その襖の向こうで。」

智が奥の襖を指さす。

襖は一寸ほど開いている。

「ここで描きゃ、いいじゃねぇの?」

潤は肌襦袢の前が肌蹴た格好で、片膝をついて智を睨む。

「暁は内気な性分でね?人前に出るのを嫌がるのさ。」

「ふん。見るなら見る。見ないなら見ないで、ばしっとやって欲しいねぇ。」

潤が、襖の向こうにも聞こえるような大声で言う。

「だったらさっさとやっちまいな。あんた次第じゃ、興奮して出てくるかもしれないぜ?」

智が腕を組んで潤を見る。

「俺達を興奮させるようなのは……無理ですかねぇ?」

雅紀もわざとくすくす笑う。

「……しっかり見てろよ?」

潤はそのまま女の上に覆いかぶさり、胸元に吸い付いていく。

「いやん……あぁんっ……。」

女の体がびくっと跳ねる。

潤の手が女の太ももを上がっていく……。

雅紀と智は顔を見合わせ、くすっと笑う。

しばらくすると、夢中になり出した潤の口から、金平糖を溶かしたような、

甘い言葉が次々とこぼれ出す。

それを智は真剣な表情で観察する。

雅紀も、智の後ろでじっと見つめる。

行為は次第に大きな波を作り、女の喘ぎは荒い息遣いに変わっていく。

断末魔の悲鳴のような嬌声と共に、女の体が硬直すると、一気に手足から力が抜ける。

力なく、はぁはぁと息をする女。

それを見ていた智がつぶやく。

「……ちげぇな。」

納得のいかない顔で女を見つめる。

「え?なんて?」

雅紀が聞き返したが、智は黙って、腕を組み直しただけだった。



女が帰り、潤も着物に袖を通すと、すっと立ち上がり、襖に向かって歩いて行く。

「あ、いや……。」

慌てて雅紀が追いかける。

潤が両手で襖を開けると、そこは暗く、人がいる気配もない。

ただ、数枚の紙と筆が残っているだけ……。

振り向いた潤が智に詰め寄る。

「暁はどうした?」

「用が終わったから帰ったんだろ?」

智はしれっと答える。

「なんだと?」

潤が智の胸倉を掴む。

「挨拶もなしか?」

「……あんたの働きに満足したってこった。

 最初に言っただろ?暁は人と会うのを嫌がるって。」

智がするどい目で潤を睨むと、潤は、ふんと鼻を鳴らし、襦袢の前を合わせた。



潤も帰ると、雅紀が智の耳元でそっと囁く。

「うまくごまかせたかな?」

「大丈夫だろ?」

智はそっと障子を開ける。

茶屋から出ていく潤の後ろ姿が見える。

「これで描ける?」

「まぁな……。」

「何?なんか不満?」

「ん~、そうだねぇ。」

智が眉を下げ、口を一文字に結ぶと、雅紀はそっと智の肩に手を掛ける。

「無理しなくていいからね。……俺は智の最高の絵が見たい。

 きっとみんなそうだから。」

「ふ…ん……。」

智は何か考えるように、黙り込む。

雅紀はにっと笑って、両手で智の肩を揉む。

「く、くすぐったい。」

智がびくっと飛び退く。

「ひゃひゃひゃ。ほんと、弱いよね?」

おかしそうに笑う雅紀に、面白くなさそうに口を尖らせる智は、警戒しながら近づいていく。

「もうやるなよ?」

「くっくっく。ごめんごめん。もうやらないから。」

智はなおも警戒するように、ちらちら雅紀を見る。

智の気持ちを楽にさせようと、雅紀がしてくれてるのはわかっていても、つい見てしまう。

雅紀は大丈夫、大丈夫と手をぱたぱたする。

「いつも……すまねぇな。」

神妙な面持ちで智が言うと、雅紀は柔らかく笑う。

「何、言ってんの。俺は暁の絵の虜だから。」

智は雅紀の笑顔に安堵して、外の不忍の池を見ながら言う。

「今日も……行くのか?」

「うん……仕方ないよ。約束だから。」

雅紀は遠くに目を馳せる。

「あいつはいいのか?」

「あいつ?」

「……和。」

「ああ…………大丈夫。」

雅紀が泣きそうな顔で笑う。

「……和には知られたくないんだろ?」

「うん……。」

下を向く雅紀に、智が優しく言う。

「お前も……不器用だな……。」

「違うよ……俺に望みはないから……。」

智は優しく雅紀の肩を抱く。

「そんなこと言うな……。」

「うん……。」

智はゆっくりと障子を閉めた。










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