「Love so sweet」
Love so sweet(やま)【41~60】

Love so sweet №58

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「ねぇ、智君、肉、これぐらいでいい?」

「ん~、いいんじゃね?」

智君がガリガリと胡椒を削る。

「ちょ、待って、胡椒の前に生姜とお酒と……。」

「順番なんて大丈夫だよ。全部混ぜるんだから。」

智君が笑う。

笑いながら生姜やお酒を入れていく。

「分量、量らないの?」

「めんどくさい。」

智君が適当に?調味料を入れ、

俺はその顔を見て、穏やかな気持ちで肉に手を突っ込む。

「うわぁ~。」

グニョッとした触感に思わず手を引っ込める。

「あはは。翔君、まだダメなの~?」

また智君が笑う。

「こんなの慣れるわけないじゃない。」

智君は冷蔵庫からビールを取り出し、プシュッと開ける。

それをゴクゴク飲むと、プハァ~っと息を吐く。

「うめぇ。」

「ずりぃ。」

俺はグチャグチャの手を空に上げて、横目で見る。

「ははは、ほれ。」

智君が俺の口にビールの缶をあてがう。

俺の飲みやすいように缶を斜めにしていく。

「ど?飲めた?」

俺は横目で智君を見ながら、首を縦に小さく振る。

缶から冷たいビールが流れてくる。

ゴクリ。

ビールを飲みこむ。

缶を離そうとする智君の腕。

缶の端を噛んで、もっとと強請る。

「何?もっと?しょうがないなぁ。」

智君がふにゃりと笑って缶を少しだけ傾ける。

次々に流れ込んでくるビール。

ゴクゴクと喉が鳴る。

「ほい。これでおしまい。続き、作らないとおいら達のツマミ、なくなっちゃう。」

ツマミなんかなくても、智君の笑顔があれば、俺、いくらでも飲めるんだけど?

「そんな顔しないで、ほれ、さっさと混ぜる。」

智君は俺の顔を見て、缶をキッチンに置くと、鍋に油を流しいれる。

「ちょっと漬けといた方がよくない?」

「大丈夫だろ?油があったまるまで漬けとけば。」

智君は鍋に火を点け、またビールを煽る。

「ツマミなしで飲むと酔うよ?」

「大丈夫。翔君の顔見て飲んでるから。」

「それ、どういう意味?」

「イケメン、摘みながら飲むなんて、贅沢だろ?」

智君がふにゃりと笑う。

俺も、あなたの顔を見ながら飲みたいんですけど。

俺が手を洗おうとすると、智君が呼び止める。

「ダメ。まだ小麦粉入れてない。」

智君は小麦粉をパサッとボールに入れる。

グニョッとした感触が、グチョッとした感触に変わる。

「うへっ。気持ち悪ぃ。」

「あはは。翔君、その顔!」

智君が喜んで、またビールを飲む。

俺の手は、泥んこ遊びした子供よりも汚れてグチョグチョ。

「これ、味見しても大丈夫?」

俺の手を持ち上げて智君が言う。

「ダメ、ダメ!鶏肉なんだから!」

「じゃ、さ、唐揚げって味見できないの?出来上がるまで味、わかんないの?」

俺は少し首を傾げて考える。

「まぁ、そうなのかな?」

「母ちゃん達、すげぇな。いつも美味しく作れて。」

「そりゃ、分量通りに作ってるんじゃない?」

「そうか?おいらの母ちゃん、分量量って作ってるとこ見たことないぞ?」

そう言えば、俺も……。

「な、慣れかな?」

「おいら達はまだまだだね?」

智君がビールを口に運び、ちょっと頬を染めてふにゃりと笑う。

「よく言うよ。まだまだな割に、分量、適当だったじゃない。」

「いいの、いいの。翔君と作ったら、なんでも美味しいから。」

「智君……。」

俺、グニョグニョで気持ち悪くても、頑張って混ぜるよ。肉!

ガス台がピピッと鳴る。

「お、あったまった。」

智君が俺からボールを取り上げる。

俺はやっと手を洗えてホッとする。

ベタベタで、水で流しただけじゃ取れやしない。

台所洗剤を手に振りかけ、手の平を擦る。

ジュワ~っと、油に肉が投入された音が響く。

「智君、気を付けて。やけど。」

「大丈夫だよ。」

智君がそう言ったとたんに、油がパチッと跳ねる。

「あつっ。」

「ほら!」

俺は手早く手を拭いて、智君の隣に並ぶ。

「どこ?」

智君は黙って、菜箸を持つ手の甲を見せてくれる。

俺は両手でその手を持つと、明かりに向かっていろんな角度から確認する。

「大丈夫。何ともなってないよ。」

「そんなことないよ。ポツッと赤くなってる。」

「平気、平気。」

智君は俺から手を振り切ると、またボールから肉を鍋へ投入する。

パチパチと油が跳ねる音。

すかさず避ける智君。

「翔君、危ないからあっち行ってて。」

「危ないのは智君でしょ?」

「翔君のイケメンに傷ついたら困るから。」

「あなたの顔に傷ついても困るんだけど?」

俺らは顔を見合わせて笑う。

「それじゃ、揚げ物できないじゃん。」

智君が笑う。

俺は、智君の飲みかけのビールをグビッと飲む。

智君は次々肉を投入し、

「やべっ!」

「あちっ!」

と言いながら、楽しそうに揚げていく。

俺はそれを黙って見ながらビールを飲む。

なんて至福の時……。

俺は缶の最後の一滴を喉に流し込むと、冷蔵庫からもう二本、缶を取り出す。

「揚がってきた!」

嬉しそうな智君の顔。

イケメンに揚げられた、小麦色の可愛い唐揚げ達。

冷たいビール。

俺の顔が崩れていく。

「味見!」

智君が嬉しそうに最初に揚がった唐揚げを菜箸で取り上げる。

「熱いよ?」

「大丈夫。」

智君は唐揚げをふぅふぅしながら口へ運ぶ。

「あちっ……うめっ!」

半分になった唐揚げを俺の口の前に差し出す。

俺はそれをパクリと咥える。

ジューシーな肉汁が口の中に広がっていく。

「うまっ!」

「だろ?」

俺は智君にビールを一本差し出す。

「こんな日が、来年も過ごせるといいね。」

俺が小さな声で言う。

「何?」

「今日は……何の日か知ってる?」

智君が首を傾げる。

「知らない……。おいらの誕生日はもうちょっとだし……。」

「あはは、いいよ気にしないで。ほら、揚がってる!」

俺は鍋を指さす。

智君は急いで揚がった唐揚げを取り出していく。

あなたは気づかなくていいよ。

俺が毎年、ちゃんと覚えてるから。

今日はいい夫婦の日……。

俺らも夫婦みたいなもんじゃない?

ね?智君。










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