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「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the action (5人)

テ・アゲロ  the action ⑥ -11-

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「うわっ。」

耳元でキーンと、機械音が響く。

ワゴン車の後部座席は、パソコン数台に陣取られ、その中心にいる二宮は、

片手でヘッドフォンを押さえると、目の前の機械を操作していく。

ヘッドフォンから大野の声が流れる。

『こちらは終わりました。次は……。』

音がどんどん遠のいていく。

『あ、こっちです……。』

微かに女の声が聞こえる。

二宮はまた機械を操作する。

じっとヘッドフォンに集中すると、顔を上げ、ニヤッと笑う。

「さすが私、完璧。」

大げさに最後のボタンを押す。

しばらくヘッドフォンに聞き入りながら、中の様子を伺う。

ヘッドフォンからは女の声と大野の声しか聞こえない。

駆け落ち相手の御村託也はいないのか?

二宮は慎重に音を拾っていく。

『それでは、ここに印鑑をお願いします。』

大野の声だ。

『あ……サインでもいいですか?』

『はい。じゃ、ここに…………ありがとうございます。』

『ご苦労様です。』

玄関の閉まる音がする。

二宮が車窓から外を見ると、大野が一軒家のドアを閉めているのが目に入る。

長い棒のような器具をぶつけないように持ち上げながら、足早に二宮の方に向かってくる。

すぐにワゴン車のドアが開く。

「ニノ、感度は?」

「良好ですよ。」

ドアが閉まると、二宮はヘッドフォンを外して、スイッチを押す。

静かな足音と、布の擦れる音が車内に流れ出す。

大野は二宮の隣で作業着を脱ぐと、すばやくジーパンに履き替える。

上着と一緒に帽子が落ちても気にする様子はない。

「本人でした?」

「ああ、間違いない。」

大野は座席の上で腰を持ち上げ、ジーパンを引き上げる。

「駆け落ち相手は?」

「いなかった。出かけてるみたいだな。」

ジーパンのボタンを留め、Tシャツを脱いでいく。

筋肉質な上半身を、惜しげもなく披露すると、

椅子の背もたれにかけてある、黒いTシャツに袖を通す。

「さて、どうします?ばあさんの注文は先に見つければいいってことだったけど……。」

二宮は大野に目をやる。

「どうも腑に落ちない。駆け落ちなのに、こんな近くにいるか?」

「いや、いるんだから、しょうがないでしょ?」

着替えが終わると、大野は背もたれを倒して、体を沈める。

「ちょっと!何するんですか!」

「もう少し様子を見よう。ただの駆け落ちとは思えない。」

大野は座席の下に転がっている帽子を取ると、目深に被る。

「様子を見るって……。」

「御村が帰ってきたら起こして……。」

二宮の言葉も聞かずに、大野は寝息を立て始める。

「ちょっと!大野さん!」

二宮が揺すっても叩いても、大野は起きる気配がない。

「ったく。」

二宮は大きく溜め息をつくと、自分の背もたれも、大野と同じくらいまで倒した。



玄関のバタンという大きな音で二宮は目を覚ました。

『……お帰りなさい……。』

続けて隆子の声が聞こえてくる。

『いいよ、寝てて。疲れちゃったんでしょ。』

穏やかな、若い男の声だ

「おっ。帰ってきた。」

二宮は上半身を起こし、スピーカーのボリュームを上げる。

「大野さん!ほら、起きて。帰ってきましたよ。」

「ん……ダメ……。」

「何がダメなんですか!」

二宮は大野の体を揺すり続ける。

「それ以上は……無理……。」

大野は、目をつぶったまま顔を振る。

「ちょっと!寝ぼけてないで起きてください!ったく、どんな夢見てるんだか……。」

二宮は、大野の頬をパシパシ叩く。

大野の眉間に皺が寄る。

ぎゅっとつぶった目を開けると、大野が覚醒する。

「……帰ってきた?」

「さっきからそう言ってるでしょ!!」

二宮に睨まれて、目をパチパチさせると、二人はスピーカーから流れる声に耳を傾けた。



「まさみって誰だ?」

大野が目を見開いて、二宮を見つめる。

「私に聞かれても困ります。」

二宮はキッチンから漏れる、仲の良さそうな二人の会話を聞きながら答える。

「まさか、他に女がいる?」

「他に女がいたら、そっちと駆け落ちするでしょう?」

「じゃ、なんで隆子と?」

「そりゃ、理由があるってことでしょ?」

二宮がニヤリと笑う。

「理由ってなんだ……。」

「あ、待って。」

二宮が大野の言葉を手で制すると、二人はスピーカーに耳を傾ける。

スピーカーからは、アイドルのウェディングソングが流れる。

二人は顔を見合わせて首を傾げる。

『ちょっと待ってて。』

御村の声だ。

ウェディングソングが止まると、また御村の声が響く。

『はい。もしもし……ああ、大丈夫。で……そうか…………駆け落ち?

 ……なるほど……わかった………そのまま……うん、そうだな。よろしく頼む。』

人の動く音と共に、ガチャッと皿のぶつかる音が響く。

『鳥居さん?』

隆子の声。

『ああ、やっぱり身内だけじゃ探しきれなくて、探偵雇ってるらしい。』

『そう……。』

『俺たち、駆け落ちだって。』

御村の笑い声が聞こえる。

『駆け落ち?』

隆子のびっくりした声。

「な、鳥居って?」

大野がパソコンを弄る二宮に聞く。

「御村の秘書です。」

「まさみは?」

「今、御村の交友関係から『まさみ』で検索かけてますから……。」

二宮がパソコンをカチャカチャ叩く。

「さすが、ニノは仕事が早い……。」

大野は満足そうに二宮を見ると、

その奥の窓のさらに奥で、こそこそと動く人影が、細い路地に入っていくのが目に入る。

「やっと到着らしい。」

二宮も顔を上げ、大野の視線の先に目を凝らす。










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