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「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the action (5人)

テ・アゲロ  the action ⑥ -10-

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「すみません。」

ドンドン。

ドアを叩く音に、隆子はビクッとする。

誰?

不安になりながら、恐る恐る玄関に行ってみる。

「すみません。磯貝さ~ん。」

ドアの覗き穴から見てみると、作業着を着た男が玄関を叩いている。

「すみません!火災報知器の定期点検です~。」

隆子はどうしようか迷った。

託也が入れば、任せるのに……。

「おかしいなぁ。電気は付いてるのに。」

男は玄関脇の電気メーターも確認している。

隆子はこのままやり過ごそうと思った。

すると、今までより一際大きくドアを叩く音がする。

ドンドンドンドン!

隆子はビクッとして、思わず声を上げる。

「きゃっ……。」

しまった……もう居留守も使えない……。

「……磯貝さん?」

仕方なく、隆子は鍵を開ける。

点検したらすぐに帰ってもらおう。

すぐに終わるはず……。

隆子がドアを開けると、人懐こそうな笑みを浮かべた男が、帽子に手を掛け挨拶する。

「こんにちは。火災報知器の定期点検です。」

「ど、どうぞ……。」

隆子が招き入れると、男は大きな長い器具を持ったまま靴を脱ぐ。

「すぐすみますので……。まずはキッチンから……。」

男は隆子を見て、にっこり笑う。

大丈夫そう?

隆子もその笑顔にホッとして、男をキッチンまで案内する。

キッチンまで来ると、猫背のその男は天井の火災報知器にゆっくり器具を合わせた。



「ただいま。」

託也の声に、ウトウトしていた隆子がビクッと起きる。

「あ……お帰りなさい……。」

目を擦りながら立ち上がると、託也が笑って手で制する。

「いいよ、寝てて。疲れちゃったんでしょ?」

託也は買い物袋をテーブルの上に置くと、隆子がうたた寝していたソファーにやってくる。

隆子の隣に座り、隆子の顔をじっと見る。

寝起きの顔を見られて恥ずかしくなった隆子は顔を背ける。

「会ってきた……。」

「そう。無事会えてよかった。」

隆子がはにかみながら笑う。

「何か変わったことあった?」

託也は、隆子の足元に落ちていたスケッチブックを拾い上げる。

「あ……大丈夫だと……。」

隆子は昼間のことを言いかけて、ハッとする。

託也の顔のスケッチ……。

隆子は託也から奪い取ると、胸元に抱え込む。

「俺?」

託也は意外だと言わんばかりに目をパチクリする。

「う、うん……真実さんに会いに行く時……とっても優しい顔だったから……。」

「ちゃんと見せてよ。」

「は、恥ずかしいから……。」

隆子が嫌がると、託也は無理強いすることなく、

クスッと笑ってソファーの背もたれに体を預ける。

「本当にシャイなんだね、隆子さん。」

託也の笑顔に、隆子はドキッとする。

これから数日、この笑顔と二人で過ごすのかと思うと、隆子の心拍数が上がる。

「ま、真実さん、元気だった?」

「……心配してた。」

託也は困ったように笑う。

「そうよね……。私が相手だったとしても心配になっちゃうよね……。」

「そんなことないよ。隆子さんは魅力的だよ。もっと自信持てばいいのに。」

「自信なんて……。」

隆子は父、龍之介を思い出す。

小さい頃からずっと、できないできないと言われ続けた。

自信なんて、持てるはずもない。

その父が、唯一褒めてくれたのが、小学校の時に描いた母の絵だった。

絵画コンクールで金賞を取り、学校に飾られた絵を見た龍之介は、

「俺には絵の良しあしはわからん。でも、このマリアは楽しそうだな。」

そう言って隆子の頭を撫でた。

その頃、元々体の弱かったマリアは、入退院を繰り返していた。

そんなマリアを元気付けたくて、元気だった頃の母を思い出しながら描いたのがその絵だ。

マリアもとても喜んで、一時ではあったものの、

隆子に元気だった頃の笑顔を見せてくれた。

それ以来、隆子にとって絵は、なくてはならない存在となった。

「どうしたの?黙り込んで。」

託也は隆子の手を握る。

「うん……母のことを思い出して……。」

隆子が見上げると、託也は優しく肩を抱いた。

「優しいお母さんだったんでしょ?」

「うん……。母が生きている頃は、父もここまで強引じゃなかった……。」

隆子は託也の肩に頭を乗せる。

その頭を託也はそっと撫でる。

「大丈夫。わかってくれるよ。」

託也の手が優しくて、隆子は目をつぶって考える。

この手は私のものじゃない……。

グッと堪えて、託也から頭を離す。

「……何か、父たちは言ってきた?」

「いやまだ……そろそろ党の方でも騒ぎになる頃なんだけど……。」

託也は時計を見つめる。

時刻は午後7時。

隆子も時計を見て立ち上がる。

「お夕飯、作らないと……。」

「俺も手伝うよ。」

「大丈夫。買い物してきてもらったんだもの。座ってて。」

「あ、俺の腕、信用してないんでしょ?」

託也がわざと大げさにふくれて見せる。

「そんなことないけど……。」

隆子もクスッと笑う。

二人は並んでキッチンに向かった。










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