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「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the action (5人)

テ・アゲロ  the action ⑥ -9-

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最初から託也は優しかった……。

隆子は、スケッチブックに描かれた託也の顔を見ながら思う。

優しくて、自信に満ち溢れていて……。

その唯一の弱点。

スケッチブックと鉛筆を置くと、キッチンに行って紅茶を入れる。

隆子の好きなミントの紅茶の香りが、キッチンに漂う。

これと画材だけが隆子が家から持ち出したもの。

託也さん、大丈夫かしら?

隆子は、紅茶のカップを両手で持って部屋へ戻る。

無事、会えていればいいけど……。



託也はいつもの喫茶店で新聞を捲る。

新宿の駅からちょっと離れた古い喫茶店には、常連の客しかいない。

一番奥の右隅のボックス席。

いつもの場所で、新聞を広げる。

まだ、記事にはなっていない。

親達はちゃんと手紙を読んでくれているようだ。

慌てて探しまくってるに違いない……。

警察に連絡すると大事になる。

俺のことを公表するわけにはいかないだろうから……。

託也は安心して、コーヒーを一口飲む。

しばらくすると、託也の向いの席がガタッと動く。

「早かったんだね。」

黒のパンツに白いシャツ、薄いブルーのカーディガンを着た男が向いの席に座る。

「急いできた。」

託也は向いの席に向かって笑う。

「もう、当分会えなくなるから……。」

託也は新聞を畳み、コーヒーに手をかける。

「本当に……こんなこと必要?」

向いの男が心配そうに託也を見る。

「大丈夫。上手くいく。心配しないで。」

「でも……。」

男が言いかけると、店員がやってくる。

「ご注文は……。」

「あ、ブレンドで。」

店員は不愛想にうなずき、すぐに戻っていく。

託也は男を見つめ、小声で話し始める。

「俺は……何一つ諦める気はない。政治家としての未来も、真実(まさみ)のことも。」

「託也……。」

真実は託也の手を取ると両手で握る。

「でも、俺のせいで託也がこんな……。」

「お前のせいじゃない。俺と隆子さんの利害は一致してる。」

「俺たち二人で……海外とか……それじゃダメなの?」

託也は溜め息をついて、真実から手を離す。

「俺は政治家としてやっていこうと決めた。天職だと思ってるよ。」

コーヒーカップを持つと、ゆっくり顔へ近づける。

「でも、自分の気持ちに嘘をついて生きていくこともできない……。

 無理やり女と結婚して、子供を作って……それも仕事と割り切れば

 できないことはない……たぶん。」

「託也……。」

真実は心配そうに託也を見る。

「まだまだ俺たちにとっては不遇の時代だ。

 だいぶマシになったんだろうけど……。今だって政治家としては致命的……。」

そこへ店員がやってきて、真実の前にコーヒーカップを置く。

無造作に注文票をテーブルに置くと、足早に去っていく。

二人はその後ろ姿を見つめ、いなくなったことを確認して話を続ける。

「俺は自分を偽って、自分を壊していく気はない。

 いつか、俺たちが普通に受け入れられる未来を俺が作るとして……。」

託也はコーヒーを一口飲む。

「まずは身内に認めてもらう……きっと認めざるを得ないはず……。」

「何か言ってきたの?」

「まだだ……。あっちが折れるまで逃げ続ける。」

「もし、失敗したら……。」

「それも……考えてある。」

託也はにっこり笑って真実を見つめる。

「時間がない……。もう行こう。」

真実はカップに一口口を付け、託也に促されて立ち上がる。

託也は真実をエスコートするように、背中に手を添える。

真実は、託也の手の温もりを背中に感じ、微笑んだ。



「え?外国人部隊?」

大野は驚いて聞き返す。

「そう。在籍期間は定かじゃないけど……。」

櫻井は大野の肩に歯を当てる。

「痛っ。ばか、歯ぁ、当てんな。」

「跡、残してあげようかと思って。」

櫻井がにっこり笑う。

「いらんわ!」

櫻井はクスクス笑うと、鎖骨の上辺りに吸い付く。

「ばかっ。見えるとこに跡付けんなっ。」

「別に見られたって構わないでしょ?」

櫻井がニヤリと笑う。

「それとも……見られたらいけない理由でもある?」

「な、ないわ!」

「じゃ、いいじゃない。これを鏡で見るたび、俺を思い出してよ。」

櫻井の顔を見て、大野はドキッとする。

こんな最中だからか、艶を含んだ瞳が、甘く輝く。

そんな顔で俺を見るな……。

大野は顔を背け、話を戻す。

「確かなのか?」

「ん?何が?」

「松本んとこの所長。」

櫻井は一度付いた跡の上にさらに唇を重ねる。

「でどこは確かだよ?……その後、諜報員だったって話もある……。」

もう一度吸ったその跡を確かめると、満足そうに大野を見る。

「諜報員……スパイ?」

「ま、これはかなり不確かな情報だけど……。」

「そのでどこってどこだよ。」

大野は櫻井の足に足を絡め、自ら腰を押し付ける。

汗ばんだ肌がしっとりと吸い付く。

「それは……内緒。営業マンが自分の情報源、話すわけないでしょ?」

櫻井は大野の体を反転させ、サイドテーブルから小さな四角い物を取り出し、

口を使って開ける。

中身を取り出し、ゴミをベッド脇に投げ捨てると、大野の背骨に舌を這わせる。

敏感になっている体がピクッと震える。

大野は、背中に集中しがちな意識を、無理やり振り切って考える。

外国人部隊……諜報員……。

「外国人部隊……フランスか?」

「そうだけど……知り合い?」

櫻井は大野の腰を持ち上げ、脇腹を撫でる。

「あっ……あんっ……。」

大野は漏れる喘ぎを抑え、顔だけ振り返る。

「あ……そいつの……んっ……な…まえ……あんっ。」

「名前?」

櫻井は準備の整った腰を大野に当てる。

ヒンヤリした感覚に、大野の腰が揺れる。

「確か……岡田……。」

「ああっんっ!」

大野は櫻井の言葉を最後まで聞くことができなかった。










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