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「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the action (5人)

テ・アゲロ  the action ⑥ -7-

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「はぁはぁ。」

大野と櫻井は大通りを越え、公園の見えないところまで走ってくると、

肩で息をしながら、ゆっくり歩き始める。

「しっかしお前、ほんと、よく現れる、な?」

大野は荒い息使いのまま櫻井を睨む。

「これも……、神様のおかげ、かな?」

櫻井は肩で息をしながら、にっこり笑う。

大野が睨み続けると、ちょっと困った顔をして、言い訳がましく話し出す。

「近くの取引先に資料を持ってきたんだよ……。

 決してあなたを張ってたわけじゃない。」

櫻井は息をついて、ニヤリと笑う。

「ほんとか?」

もうほとんど息の戻った大野が足を止める。

「ほんとだよ。だから……これも運命。」

片頬を引き上げて笑う櫻井を、怪しげにじと目で睨む。

「それより、手帳……何を見つけたの?」

「ああ、忘れてた。」

大野は携帯を取り出し、二宮に掛ける。

「さっきの手帳、もう1回見たい。」

櫻井に言われ、携帯を耳に当てたまま、ふんと笑う。

「置いてきた。」

「置いてきた?どこへ?」

「さっきの公園のベンチ。」

「なんで……せっかく手に入れたのに。」

「ああ、中身は見たから、もういらない。」

なかなか電話に出ない二宮に、ちょっと不快な顔をする。

「それに、いくらあいつでも、すぐ気づいて戻ってくるだろ?」

大野はクスッと笑う。

「だから……走って逃げたのか?」

櫻井が溜め息をつくと、口をへの字に曲げる。

大野は、んふふと声に出して笑い、やっと聞こえた二宮の声に怒鳴った。

「おせーよ!」

「何言ってるんですか。こっちだって忙しいんです。」

「ウチが忙しいわけねぇだろ?」

「地球の平和を守るのに忙しかったんです!」

「それ……ゲームだよな?」

「あはは……で、なんです?」

「ああ、調べて欲しいことがあるんだけど……。」

櫻井は黙って大野の電話を聞いていた。



隆子は一人、鉛筆を走らせながら、託也と出会った頃を思い出していた。

最初に出会ったのは議員会館だった。

龍太郎に頼まれて、着替えを持って行った時に、廊下ですれ違って挨拶した。

託也はすでに、その端整な顔立ちと育ちの良さで、

若手議員の中でも注目を浴びる存在だった。

隣にいた秘書に何か耳元で囁かれ、うなずくと、隆子に笑顔を向ける。

さわやかで、知的な笑顔は、出会った多くの人々に好印象を与える。

けれど、隆子の第一印象はその笑顔とはうらはらに、

何か影のある人……そんな印象だった。

次に会ったのも、龍太郎に連れられていった美術館のオープニングセレモニーだった。

美術館のデザインは、龍太郎の古い友人のもので、隆子も小さい頃から知る人だ。

杮落としは、海外でも注目される新進気鋭の若手アーティストだった。

託也はそのアーティストと知り合いらしく、パーティでも仲良さそうに談笑している。

最初に気づいたのは託也だった。

託也は、一人、壁際でケーキを食べている隆子の近くにやってくると、

あの笑顔を浮かべて話しかける。

「池上先生の……お嬢さんですよね?」

「は……はい。」

隆子は急に声を掛けられてビクッとする。

父に連れられていくパーティで、隆子に話しかける者は滅多にいない。

隆子が、傲慢で生気みなぎる龍太郎の娘だと気づく者もまずいない。

「この間、議員会館で……。」

「……はい。」

隆子は下を向いたまま答える。

「今日は若い方もいらっしゃるから、楽しめますね。

 お父様の付き添いでは、みなさんご年配……失礼。」

託也は片目をつぶって笑う。

その幼さを含んだ表情に、隆子も思わず微笑む。

「ああ、笑った顔はさらに素敵ですね。あなたは自分の魅力をもっと前に出すべきだ。」

「いえ……私は……。」

隆子はまた下を向く。

「隆子さんは……美大を出られたと伺ったんですが……。」

どこでそんなことを聞いてきたのだろう……。

隆子は小さくうなずく。

「では、美術には造詣が深いんですね。」

「いえ……そんな……ヘタの横好きですから……。」

おもわず顔を上げると、託也はにっこり笑って隆子の背に手を添えた。

「僕の友人を紹介しますよ。」

託也は隆子をエスコートするように、その場から連れ出した。



「何聞いてんだよ。」

大野は携帯を切ると櫻井を睨む。

「いや、今をときめく若手政治家のスキャンダル。興味がないわけないでしょ?」

櫻井は面白そうに笑う。

「スキャンダルか?」

「だって、この間言ってた駆け落ちでしょ?相手は誰なの?」

「……守秘義務。」

大野はチラッと櫻井を見て歩き出す。

「ま、守秘義務なら仕方ないね……でも、しゃべりたくなったらしゃべってよ。」

櫻井はクスッと笑うと、ポケットに手を突っ込んで歩く大野の隣に並ぶ。

「その……御村託也議員……清潔感があって、知的で育ちが良く弁も立つ……。」

そんなことは知ってるよ、と大野は鼻を鳴らす。

「おまけにふとした時に出す色気……俺みたいだね?」

「自分で言うか!」

櫻井が笑うと、大野はふんと横を向く。

「でもね、ちょっと違った噂を聞いたことがある……。」

大野は櫻井の方を向くと、ん?と顔を上げる。

「噂?」

「そう……あくまで噂。」

櫻井がニヤッと笑うと、大野より少し早く歩き出す。

「なんだよ、その噂って。」

「聞きたい?」

「教えろよ!」

大野は櫻井の腕を掴む。

「タダで教えるわけないでしょ?」

櫻井の勝ち誇ったような顔に、大野はチッと舌を鳴らす。

「金ならねぇぞ。」

「大丈夫。あなたにしか払えないから。」

櫻井はまた、ニヤッと笑って大野の肩に手を回す。

大野はその手を横目で見ると、溜め息をついた。










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