「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the action (5人)
テ・アゲロ the action ⑥ -2-
2015.11.07 *Edit
「あ~、大野さん、少しは仕事してくださいよ。」
二宮はボールペンを頬に押し付けながら、溜まった書類を叩く。
「それはニノの仕事だろ?おいらの仕事じゃない。」
大野はクルッと椅子を回して、二宮に背を向ける。
「だからって、その手!」
「ん~?」
大野は首を伸ばして、天井を仰ぐ。
「人が仕事してる目の前で、鼻ほじほじされたら、気になってしょうがないでしょう?」
大野はグッと鼻に指を突っ込むと第一関節を曲げる。
「なんか……ここにあんだよなぁ……もうちょっとなんだけど……。」
自力でなかなか取れない大野は振り返って二宮を見る。
「ニノ、取って。」
顎を上げて、鼻の穴を見せる。
「まったく、あなた、子供じゃないんだから!」
二宮は大きく溜め息をつき、書類に視線を戻す。
「ニノ~!」
「あなたの鼻くその面倒まで、みてられません!」
二宮の叫びに呼応するように、電話が鳴る。
二人は視線で相手に出ろと促す。
電話番もニノの仕事だろ?
大野はじっと二宮を見る。
暇なら電話くらい出てください。
二宮が顎で電話を指し示す。
二宮の強い視線に圧倒され、大野は唇を尖らせ、しぶしぶ受話器を持ち上げる。
「はい。なんでもやりますなんでも屋……げぇっ!ばあさん?……うっせぇ……。」
大野は受話器を二宮に差し出す。
「ほい。ばあさんが、ニノに話、あんだと。」
大野は面白くなさそうに口を尖らせる。
「私に?」
二宮はボールペンを置き、受話器を受け取る。
「はい。お電話代わりました、二宮です。……はい。……あはは……そうですね。ぜひ……。
はぁ……はい。……なるほど…………わかりました……。」
二宮は置いたばかりのボールペンを手に、メモを取っていく。
大野はそんな二宮を見て、またクルッと椅子を回す。
目の前のコーヒーメーカーは壊れて使えなくなっている。
ああ、早く新しいのにしないと……。
じゃないと下の不味いコーヒー飲むことになる……。
そんなことを考えながら、指を鼻に入れ、鼻の形が変わるくらいグッと指を曲げる。
「くっ……もうちょい……。」
大野が顔を傾け、もう少しで何かが爪に引っかかるというところで、
二宮が大野の頭目掛けてボールペンを投げる。
「痛っ。……あ~~~っ!ニノのせいで取れなかったじゃん!」
大野は爪の先をじっと見ながら椅子をクルッと回す。
「うるさい。仕事です。」
大野は鼻の下を伸ばしたり、顔の筋肉を動かして、鼻の奥のソレの移動を試みる。
「もう、鼻くそなんてどうでもいいから。」
二宮がメモを破ると大野へ差し出す。
「依頼です。詳しくは後で送ってくれるらしいですけど……。今回は大物ですよ。」
大野は二宮のメモを受け取る。
「池上隆子……知らねぇな。」
「池上隆子は知らなくても、池上龍之介は知ってるでしょ?」
「龍之介……?あの政治家になった作家の?」
大野が顔を上げて二宮を見る。
「そう。その池上龍之介のお嬢さん。25になるらしいけど。」
二宮は目の前のパソコンを叩き出す。
「そのお嬢さんがどうしたの?」
「どうやら……駆け落ちしたらしいですねぇ……。」
「駆け落ち!?今どきいるんだ、そんなことするやつ。」
大野はメモをさらさらと読み進んでいく。
「え?この相手って……。」
「そう。今をときめく保守派のプリンス……御村託也。」
「だって池上龍之介は……。」
「革新派のリーダーと言われてますからね~。これは駆け落ちでもしないことには
一緒になれないんじゃないですか?」
「はぁ~、ロミオとジュリエット……青春だねぇ。」
大野が楽しそうに両手を広げ、うなずくと、胸の前で両手を組む。
「ミュージカル?それともバレエ?」
「うるせぇ。ウエストサイドストーリー!」
大野はチェッと小さく舌打ちする。
「で、今回の依頼は?」
大野の顔が変わる。
二宮は立ち上がると、プリンターから印刷された紙を取り出す。
「探して欲しいんだそうです。お嬢さんを。御村家より早く。」
「早く?なんで?協力して探した方が早いじゃん。」
「このことを……外部に漏らされたくないらしいですね。御村家が先に見つけ出したら、
どう利用されるかわからないと……思ってるのかな?」
二宮が首を傾げてニヤッと笑う。
「どうやらあっちには、あのイケメンがついてるみたいですよ?」
「イケメン?」
大野の頭にふっと櫻井の顔が浮かぶ。
二宮は顔写真の写った紙を大野に手渡す。
「そ。あの彫りの深いイケメン……探偵の。」
送られてきた写真は、2枚。
1枚は隆子の写真。
もう1枚は託也の写真。
託也の写真の横に、キャッツ探偵社とメモ書きが添えてある。
「キャッツ探偵社……御村の依頼を受けたみたいですね。」
「キャッツ……どっかで聞いたことない?」
「さぁ?私は知りませんけど?」
大野は、う~んと顔をしかめる。
「松本さんに聞いたんじゃないの?」
「いや……それはない……たぶん……。」
「取り合えず、今、楓さんから資料が届いたから、目を通してくださいね。」
二宮がパソコンを見てニヤリと笑う。
「何?」
大野がその顔に不穏なものを感じ、眉をひそめる。
「御村より先に見つけ出したら……報酬は倍です。」
二宮の口の端が、これ以上ない位に吊り上る。
「さ、絶対先に見つけてくださいよ。大野さん!」
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