FC2ブログ

イチオクノホシ(やま)

イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ⑤

 ←イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ④ →イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ⑥


「だ、だから、おじさんをからかうなって……。」

戸惑う俺の口から出た言葉。

こんなの本当なわけない。

リアルがこんなにドラマティックなわけない。

「おいらが冗談言ってると思ってる?」

智の目が真剣さを物語る。

俺は智の視線から逃げる。

わかってるよ。

智が本気で言ってるの……。

俺が臆病なだけ……。

智にそんなこと言われる自信がないんだよ。

「おいらさ……バレエ……辞めようと思ってた。」

俺はびっくりして、俯いてた顔を上げ、智を見る。

「辞めようと思って、ロシアから帰ってきた。」

智はゆっくり続ける。

「限界だったんだよ。おいらの体格じゃ……。

 ポワントを付けた女性はみんなおいらよりでかい。」

智はクスッと笑う。

「自分なりにギリギリまで頑張った。まだできる、もっとできるって自分に言い聞かせて。」

智がスタジオの中央に向かって歩き出す。

「タイミングよく、先生と口論になった。

 それを口実に、ロシアから逃げてきたんだ。」

中央に立ち止まると、鏡に向かってまっすぐに立つ。

流れ続ける俺の曲。

「そんな時、翔の音を聞いたんだ。」

智は右足を前に出し、両手を広げる。

「体がかってに動いた。」

その場でクルクルと回転すると、鏡に向かってピタッと止まる。

そのまま踊り続け、円を描くようにジャンプを繰り返す。

俺の曲に合わせて、智の体が宙を駆ける。

最後に大きく飛び上がると、トンと片足で着地する。

体を低くし、流れるように膝を前に出す。

「気づいたら、電車のホームで、みんなの拍手が聞こえた。」

智の視線が俺を捕らえる。

「ああ、おいら踊りたいって思った。」

立ち上がると、俺に向かって右手を差し出す。

「そしたら、その曲の作者が現れた。」

俺は吸い寄せられるように、ゆっくりと、智に足が向かう。

「運命だと思った。」

智はちょっと小首を傾げ、手を腰に当てる。

「おいらを飛ばせてくれるのは……あんただよ。」

俺は、智の前に立って、智を見下ろす。

「こんな……おっさんでもいいの?」

おずおずと小さな声で言う。

「おっさんがいい。」

智が微笑む。

「金もないし……もてないし。」

「金は……おいらあんまり必要ないし……。」

智が恥ずかしそうに視線をはずす。

「もてない方がいい……。」

ボソボソと小さな声で言う。

「おしゃれでもないし……男だし。」

俺は智を見つめ、唾を飲む。

「おいらもおしゃれとはほど遠い……。

 海外生活が続いたせいかなぁ?男にも抵抗はないな……。」

智が俺の腰に手を伸ばす。

「たぶん……才能もない……。」

俺は自嘲気味に笑う。

「才能は、本人が決めるもんじゃない。だろ?」

智が自信に満ちた顔で俺を見つめる。

「翔の才能は、おいらが知ってればいい。」

智の瞳を見つめ、恐る恐る手を智の腰に添える。

「本当に……俺でいいの?」

「いいって言ってんだろ?」

「お、おっさんだし……。」

「また繰り返す?」

「いや……。」

「おいらのこと好き?」

「…………。」

俺が躊躇していると、智が畳み掛ける。

「好きだよね?」

「…………。」

「おいらのことばっかり考えて、おいらに会いたくて仕方ない?」

「…………。」

「おいらの肌に触れて、どう思った?」

「…………。」

顔が赤くなったのがわかる。

そんなこと……聞くなよ。

「ね?どう思った?」

智は意地悪く笑って、俺を見上げる。

「……そ、そうだよ。智を抱きたいと思ったよ!」

「抱きたいだけ?」

「…………。」

智が俺の言葉を待つ。

俺は顔を背けて怒鳴る。

「俺は……智が好きだよ、ああもう、世界中の誰よりも大好きだ!

 世界の中心でだって、愛を叫べる!

 俺の愛じゃ世界は救えないけど、智だけは救ってみせる!

 智!」

「はい!」

智が勢いよく返事する。

「俺の愛はしつこくて、細かくて、独占欲が強くて……。

 それでもいいか!」

「ふふふ。いいに決まってる!」

智が俺の首っ玉に抱きついた。

俺も智の腰を、力いっぱい抱きしめる。

「本当に……本当にいい?」

「いいって言ってるじゃん。」

「後悔しない?」

「それは……わかんない。」

智がクスクス笑う。

笑いながら、俺の唇を塞ぐ。

「わかんないけど……おいら達、運命だから。」

もう一度、ぎゅっと、首に回した腕に力を込める。

俺も、智の唇に唇を重ね、腕にめいっぱい力を込める。

「ん……んんっ……苦し……。」

苦しがった智が、体をよじって逃げ場を作ろうとする。

「ああ、……ごめん……。」

俺が腕の力を緩めると、智が笑う。

可愛い顔で。

「んふふ。やっと素直になった。」

智は俺の唇に優しく唇を重ねる。










関連記事
スポンサーサイト



総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
総もくじ  3kaku_s_L.png Sunshine(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png 時計じかけのアンブレラ
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png Happiness(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png 夏疾風(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png STORY
【イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ④】へ  【イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ⑥】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ④】へ
  • 【イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ⑥】へ