イチオクノホシ(やま)

イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ③

 ←イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ② →イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ④
「翔も踊る?」

笑い終わった智が中央から俺を呼ぶ。

「見てるだけじゃ詰まんなくない?」

「そんなことないよ……。」

本当にそんなことない。

智の作り出す世界を見てるだけで心が躍る。

見てるだけで息苦しくなる。

そんな俺の気持ちなんて知るよしもない智が、ゆっくり近づいてくる。

「ちょっとは体動かした方がいいよ。」

Tシャツから覗く二の腕。

襟から覗く鎖骨。

あどけない笑顔……。

智はそんな魅力的なものをぶら下げて、俺の手首を掴む。

「踊ろ。」

ふにゃりと笑う。

その顔、反則だろ。

「む、無理だよ……。」

俺の抵抗も空しく、ずるずると中央まで引きづられていく。

「大丈夫。おいら、教えるの上手いんだから。」

そう言って、俺を鏡に向かって立たせる。

「まずはまっすぐ立つ。」

俺はできるだけ背筋を伸ばす。

「お尻に力を入れる。お臍の下を引き上げる。」

智が俺の尻とお腹に触れる。

生暖かい温もりが、俺の肌をじんわり暖める。

「え?そんな言われてもわかんないよ。」

「いいから、いいから。」

俺は言われた通りにイメージしてみる。

あくまで、イメージ。

そんなに簡単にできるわけがない。

「そうそう。上手。肩を下げて、首を伸ばす。」

今度は智の手が肩に触れる。

「もっと首伸ばして。」

俺より小さい智の手が、後ろから伸びてくる。

首を、持ち上げるように撫でると俺の頭を固定する。

指先が頬に当たる。

俺は前を向いたまま、鏡を見つめる。

智の指が俺の頬から、唇の端まで伸びてくる。

鏡に映る智の指は細くて、長くて……。

ほんの少し骨ばった小指の間接が、クイッと曲がる。

その指先を見てるだけで、心臓が音を立て始める。

俺はどうなってるんだ?

いつもと違って室内だから?

鳴り止め!心臓!

智がおかしく思うだろ!

俺が自分の心臓と格闘していると、智はクスッと笑って俺の前に立つ。

「翔なら、リフトもできそうだよね。」

俺を見上げる智の顔。

潤んだ瞳に赤い唇。

ほんのり汗ばむ首筋。

「無理だよ。昔ならともかく……もうおっさんなんだから。」

俺は笑って上半身を引く。

「おっさん?大丈夫。全然見えないよ。」

「見えなくっても、もう33。」

「33なんて若いよ。おいら位の恋人がいても、おかしくない。」

「え?」

びっくりして智を見ると、智は笑って俺を見つめてる。

なんだ?……俺を…………誘ってる?

「お、おじさんをからかうもんじゃない。」

俺は智を振り払ってバーの方へ向かう。

「本当だよ。22、3の彼女がいてもおかしくない。」

なんだ……そういう意味か。

俺が振り返ると、智が笑って俺を見てる。

「勘違いしちゃった?」

智はただ笑ってるだけなのに……。

艶っぽく見えるのはなぜなんだ?

「そ、そんな若い彼女、できるわけないだろ。女は金のないやつに寄ってこない。」

「そうかな?翔くらいかっこよければ、寄ってくる女なんてたくさんいるよ。」

い、いるよ。

てか、いたさ。昔は。

でも、長くは続かない。

たいてい、女の方から去っていったよ。

追いかけるほど執着する女もいなかった。

そのうち、寄ってこなくなった。

女も適齢期になれば、結婚相手を探し出す。

そんなもんだろ?

そんなことを考えてる俺に、智がゆっくり近づいてくる。

「ね?何、勘違いしたの?」

智の服がシャカシャカ鳴る。

「いや……何も……。」

俺が顔を背けると、智がツイーと近づく。

「おいらが……誘ってると思った?」

智は俺に、髪の毛1本触れずに顔だけを近づける。

「あ、あるわけないだろ。そんなの。俺たち、お、男同士だし。」

「ふうん。そうなんだ。」

智は俺から離れると、突然Tシャツを脱ぎだす。

「な、何する……。」

智はバーに掛けてあったタオルを掴むと、俺に向かって投げつける。

「背中拭いて。自分じゃ手が届かない。」

そう言って、俺に背を向ける。

俺や友人のゴツゴツした背中じゃなく、なだらかなライン。

盛り上がった肩甲骨は小さな羽根の形。

「意識してなきゃできんだろ?」

「シャワー浴びてくれば……。」

「めんどくさい。」

智は俺に背中を向け続ける。

俺はそっと近づいてタオルを持つ手を背中に添える。

タオル越しでもわかる智の筋肉。

肌の滑らかさ。

しっとりと汗ばんだ肌が、照明に当たって凹凸を浮き上がらせる。

俺はタオルを持つ手をゆっくり動かす。

背骨の上を、上に向かって。

張りのある肌……。

その下のしなやかな筋肉……。

それらが熱を持ち、陽炎が見えそうなエネルギーが満ち満ちている。

今にも飛び立ちそうな……若さ。

俺はゆっくりと丁寧に背中を拭いていく。

この輝く宝石を、自分の手で磨くように。

そっと左手を肩甲骨に添える。

智の体がピクンと反応する。

添えた指の先を、少し揺すってみる。

智の肌の滑らかさを直に感じ、また少し動かす。

しっとりして、吸い付くような感触。

俺はいつの間にか、拭いてる右手を止め、左手の指先に神経を集中させる。

手の平を離し、指先だけで肩甲骨を撫でる。

指先は、肩甲骨のカーブを撫でると、徐々に背骨を降下しだす。










関連記事
スポンサーサイト



総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
【イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ②】へ  【イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ④】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ②】へ
  • 【イチオクノホシ ~ Sleeping Beauty ~ ④】へ