愛と勇気とチェリーパイ(5人)

愛と勇気とチェリーパイ #6 上

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「やば~い!間に合うかな?」

あたしは、独り言、言いながら坂道をダッシュする。

もう時刻は9時半。

Cafe Happinessは10時まで。

これじゃ、ラストオーダーに間に合わない!

はぁはぁ息を切りながら、お店の前まで来ると、ニノちゃんが看板を片付けるとこだった。

「も、もう……はぁはぁ、…んっ……終わり?」

あたしは膝に手をついて、唾を飲む。

「あれ?お姉さん。今日は来ないのかと思ったよ。」

ニノちゃんは看板を抱えながら、あたしを見る。

「最近、遅いもんね。仕事?」

「うん。やけに忙しくって。」

そう、本当に忙しい。

忙しくって、ここでゆっくりする時間もない!

返してよ!あたしの憩いの時間!

でも、社員になったばっかりだしさ、先に帰ります!……なんて言えない。

「入って。お腹空いてるんでしょ?潤君に何か作ってもらおうよ。」

ニノちゃんが看板を置いて、扉を開ける。

「あ、ありがと~っ!」

あたしはニノちゃんの開けた扉を抑えて、先にニノちゃんを入れてあげる。

看板を持ったニノちゃんが、んっしょ、んっしょと中に入っていく。

相変わらず、可愛いんだから!

「ごめん、潤く~ん!何か作れる?」

ニノちゃんは看板をレジの横に置くと、キッチンに向かって叫ぶ。

レジにはお金を数えるショウ君がいて、あたしを見てにっこり笑う。

お金数えててもさわやかって、どういうわけ?

「来ないから、珍しいなと思ってました。」

「もう、仕事が忙しくって。」

あたしが息を整えながら答えると、テーブル席の方からアイバ君がやってくる。

「あっれ~、今日はどうしたの?」

アイバ君は太陽のような笑顔で、あたしを迎えてくれる。

本当に、ここはなんて素敵なの。

トゲトゲしてヤサグレたあたしの心を、あっという間に溶かしてくれる……。

あたしがアイバ君の笑顔を堪能していると、ショウ君があたしの代わりに答えてくれた。

「仕事が忙しいんだって。窓際の席に案内してあげて。一人じゃ寂しいでしょ?」

「ほいきた!」

アイバ君はふざけた調子で胸を叩くと、あたしに向かって目配せする。

今日は窓際の席なんだ。

カウンターはお掃除かな?

気づいて店内を見回すと、客は誰もいなくて、閉店の準備真っ只中。

あ……もう終わりだったのね。

「いいよ。もう閉店なんでしょ?あたし、帰るね。」

あたしが帰ろうとすると、アイバ君が、あたしの両肩を掴んで窓際まで押していく。

「いいからいいから。俺らもまだ帰んないし、今日は特別。」

「え……でも……。」

「あんまりおもてなしはできないけど、それでよかったらどうぞ。」

ショウ君がレジを閉めながら優しく笑う。

すると、いつの間にか消えてたニノちゃんがキッチンから出てきた。

「潤君、作ってくれるって、ちょっと待っててね。」

「でも、キッチンだって片付けちゃってるでしょ?」

あたしが申し訳なさそうに言うと、ニノちゃんが、ドヤ顔を作って言う。

「お姉さん、潤君はプロだよ。片付けだってプロなんだから。」

それを聞いたあたしも、アイバ君も声を上げて笑う。

「そうそう、だから座って。」

アイバ君は笑いながら、あたしを窓際の席に座らせる。

「ごめんね。急いで食べるから。」

あたしは席につくと、鞄を横に置いて、忙しそうな二人を見る。

「急がなくて大丈夫だよ。今日は、作戦会議の日だから。」

アイバ君が、できないウィンクをする。

もう、それが本当に可愛い!

あたしは笑いながら聞く。

「作戦会議?」

「あ、よかったら参加してくれます?お客さんの生の声も参考にしたいし。」

ショウ君がレジに鍵をかける。

その時、お店のドアが開く。

「店長、遅い!」

ニノちゃんが、頬を膨らませてドアの方を睨む。

あたしも釣られてそっちを見ると、店長が頭を掻きながら入ってくる。

「ごめんごめん。絵ぇ書いてたら、時間、わからなくなっちゃって。」

「わからなくじゃないでしょ?夢中になっちゃったんでしょ?」

ショウ君が目尻を下げて笑う。

「ん……ごめん。」

店長がすまなそうに下を向く。

「クスクス。そんな顔しないの。いつものことでしょ?」

ショウ君が店長の背中に手を添えて、あたしの隣のテーブルに促す。

促された店長は素直にそこに座ると、あたしを見て、ちょっと首を傾げる。

「ああ、お姉さん、仕事が忙しくって、遅くなっちゃったんだって。

 今、潤君がご飯作ってる。」

ニノちゃんが、テキパキ働きながら、店長に説明する。

「できたよ~!」

キッチンから、大きな声と共に、MJが現れる。

手には美味しそうなお皿……。

「俺特性、大人のお子様ランチ。題して、大人様ランチ。

 ランチじゃないけどね。」

MJは子供のような笑顔で笑って、あたしの前にお皿を置く。

ピラフ、ハンバーグ、サラダ、目玉焼き、からあげ……。

色とりどりの料理が少量ずつ、ワンプレートにきれいに盛り付けられている。

当然、小山のピラフの上には王冠マークの旗。

「うわっ、可愛い。」

あたしは嬉しさのあまり、声を上げてMJを見る。

「余りものばっかりだけど、よかったらどうぞ。」

MJがあたしの向かいに座る。

「余りものなんて、全然見えない。本当にお子様ランチみたい。」

「あったかいうちに食べて。」

MJが笑うと、まるで王子様。

うっとりしちゃう……。

「ちょっと周りがバタバタしてるけど……。」

隣から店長がふにゃりと笑う。

う~~~っ!幸せすぎて怖い~~~~~っ!

目の前には王子様の笑顔、隣には天使の微笑み。

神様、ありがとう!

あたしは心の中で神様にお礼を言い、スプーンを取り上げてパクリ。

「ん~~~っ!美味しい!」

空きすぎたお腹に、MJのピラフの優しい味が染み渡る!

二人はあたしの食べる姿を見て笑いながら、見つめあう。

「店長、ここ、絵の具ついてる。」

MJが自分の頬を指差す。

「ここ?」

店長も自分の頬を触る。

「違う、もっとこっち……。」

「こっち?」

なかなか触れない店長を見かねて、MJが店長の頬の、赤い絵の具の上を擦る。

店長も左頬をMJの方へ差し出す。

「ん~、取れないね?」

MJは立ち上がると、店長の前の席に行き、店長の顎を掬う。

あっは。これじゃ、今からキスするみたい♪

あたしは食べながらも二人から目が離せない。

すると、MJが店長の頬を舌を出してペロっと舐める。

店長が、え?って顔をしてMJを見る?

な、舐めた~~~っ?

舐めたの?舐めたよね?

今、しっかり舐めたよね???

あたしは二人から目が離せない。










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