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「ココロチラリ」
ココロチラリ 田舎編

ココロチラリ 田舎編 (21) - タイムカプセル side story -

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素麺が茹で上がると、勢いよく二つのざるに移す。

量が多いから、一つのざるじゃ無理。

移した素麺にすばやく水をかける。

早くしないとね?どんどん伸びちゃう。

ショウ君が素麺に手を伸ばす。

「待って。まだ熱い……。」

おいらの声が届く間もなく、ショウ君が、あちっと手を引っ込める。

「当たり前だよ。茹で上がったばっかりなんだから。」

おいらはショウ君の手を両手で包んで確認する。

「ほら、赤くなっちゃった。」

小指側の側面が、ほのかに赤くなって痛そう。

「大丈夫。素麺流しながら手も冷やす。一石二鳥。」

ショウ君が笑ってざるを持ち上げる。

「ショウ君……。」

おいらももう一つのざるに手を伸ばす。



テーブルのセッティングは3人がやってくれた。

広間に並べられる座卓は、夕飯の時と違って今回は2列。

佳代子さんと千賀子さんを手伝って、潤君達が物置から座卓、座布団を出してくる。

出し終えると、二人は次々到着する親戚を案内するのに行ってしまう。

挨拶したり、お部屋に案内したり。

もちろん沙良ちゃんや茂之君も手伝って。

だから、昼食の準備はすべておいら達に任された。

3人はテキパキと用意していく。

おいら達も次々茹でていく。



素麺の準備が終わると、広間に人が集まり始めた。

年齢も様々な田沼家の人々が、座布団に腰を下ろす。

ショウ君のお父さん、お母さんも来た。

おいらがショウ君を見上げると、ショウ君は首を横に振って行かなくていいと言う。

「でも、挨拶くらい……。」

「全部終わってからでいいよ。」

襖を少しだけ開けて、広間を覗きこんでいたおいら達はそっと襖を閉める。

「さ、本番だ。」

ショウ君がイケメンの顔で笑うと、おいらの唇にチュッと唇を当てる。

「全て終わらせて、早くイチャイチャしなくっちゃ。」

ショウ君がおいらのお尻を撫でる。

「ショウ君!」

おいらがショウ君の手を叩くと、ショウ君はまた、笑いながら台所に戻って行く。

おいらも一緒に台所に戻る。

ちょっと、緊張してきた……。



「さ、みんな揃ったわよ。」

佳代子さんがおいら達を迎えにくる。

「おじいさんは?」

「もう、座ってるから。」

「なんか緊張してきたな……。」

ショウ君が喉の皮を引っ張って、あ、あ~と声を出す。

「ショウちゃんでも緊張するんだ?」

「3人は?」

おいらが佳代子さんに聞く。

「もう広間で待ってるわよ。頑張ってね。」

「う、うん。」

おいらはゆっくりうなずいて、ショウ君を見上げる。

ショウ君もゆっくりうなずいて、おいらの手を握る。

おいら達は、さっきの襖の前で正座して、襖が開くのを待つ。

佳代子さんは、中庭側から広間に戻って、仕切ってくれる。

「え~、ちょっと、静かに。おじいさんのご挨拶。

 これがないとお昼が食べられないわよ。」

どっと笑いが起こる。

広間の中が静かになっていく。

シーンと静まり返ると、おじいさんの声が響く。

「みんな、元気そうで何より。

 新しく生まれた命もスクスク育っているようで、嬉しい限りです。」

元気な赤ちゃんの泣き声がこだまる。

「元気が一番。」

みんなの笑い声が聞こえる。

「さて、今日のお昼は恒例の……。」

襖を挟んでいても、ざわざわしだしたのがわかる。

「大丈夫。」

ショウ君が、またぎゅっとおいらの手を握ってくれる。

「うん。」

おいらは精一杯笑ってショウ君を見る。

ショウ君はおいらの頬を摘んで引っ張る。

「顔が強張ってる。」

ショウ君が優しく笑う。

おいらは自分の頬を撫で、もう一度ショウ君を見る。

「うん。いつものサトシの笑顔。」

ショウ君の目尻が甘く垂れる。

「静かに。」

おじいさんが少し声を張る。

「まずは食べてもらおうか。」

「頂きます!」

50人が一斉に言い、割り箸を割る音が、パチパチと聞こえてくる。

おいらはドキドキしながら襖の向こうに神経を集中させる。

さっきから、握りっぱなしのおいらの手に、ショウ君が唇を当てる。

「ショ、ショウ君!こんなとこで!」

「大丈夫。みんな食べてるから誰も来ないよ。」

「だからって!」

ショウ君は悪戯っ子みたいに、ニヤッと笑う。

「こ、これ以上はダメだからね。」

「ちょっとだけ。」

ショウ君がイケメンの顔でウィンクする。

「ダメ!」

おいらは急いで手を引っ込める。

「あはは。こんなとこで始めないから大丈夫。」

ショウ君が肩頬を上げて笑う。

すると、マー君がやってきた。

「順調、順調!みんな美味しいって食べてるよ。」

マー君はおいら達を通り越して、台所へ向かう。

「どうしたの?」

「めんつゆ足りなくなりそう!」

「じゃ、おいらが……。」

おいらが立ち上がろうとすると、続けてやってきたカズがおいらの肩を押し戻す。

「大丈夫。こっちは任せてください。サトシ達はいつ出番になるかわかんないんだから。」

そうだけど……何もしない方が辛いよ!

おいらがショウ君を見ると、ショウ君もうなずいて、おいらの手を引っ張る。

「煮たしいたけ、好評!」

今度は潤君が戻ってくる。

3人はバタバタと行ったり来たり。

「ショウ君……。」

「大丈夫だから。落ち着いて。いつも度胸のすわってるサトシだけど、

 今日は緊張してるんだね。」

「緊張するよ!当たり前だよ。」

「ふふふ。嬉しい。」

ショウ君はそう言って、握ったおいらの手の甲を、親指で撫でた。

全然緊張してないみたいだ。










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