「ココロチラリ」
ココロチラリ 田舎編
ココロチラリ 田舎編 (10) - タイムカプセル side story -
2015.09.06 *Edit
カズとショウ君は、明日の為の氷の手配もしてきたらしい。
明日……やっぱり気が重い。
おじいさんはおいらに何をさせたいんだろう?
おいら達が部屋に戻ると、マー君とジュン君が目を擦りながら、
布団の上に起き上がっていた。
「起きたの?」
おいらが笑って声をかける。
「……おはよ。」
マー君が眠そうな声を上げる。
昨日、夜中に起きちゃったから、まだ眠いよね?
「……みんな……早い…ね……。」
ジュン君がもう一度布団に入ろうとする。
「ジュン君、もう起きないと迷惑ですよ。」
カズが楽しそうにジュン君の布団を剥ぐ。
「ダメ……後5分……。」
ジュン君は別の布団の中にもぐりこむ。
「ゆるしません!ご飯食べてって、佳代子さんに言われてるんですよ。」
「俺……朝飯、いらない……。」
ジュン君が布団を体に巻きつける。
「ダメです!いろいろ作戦会議!」
カズが勢いよく布団を剥ぎ取ると、ジュン君の体がコロコロ転がった。
転がるジュン君が可愛くて、おいら達が声を上げて笑ったら、
ジュン君が薄目でおいら達を見る。
「ほら、早く目、開けて!」
一足先に目が開いたマー君が、面白がってジュン君の脇腹をくすぐる。
「あんただって、今起きたばっかりでしょ!」
カズに一括されて、舌を出したマー君は、
昨日の夜、怖がって泣いてた人とはとても思えない。
おいらは思い出して、クスクス笑う。
それに気づいたマー君が、おいらに向かって、できないウィンクをしてくる。
「あ~、なんですか、その合図。そう言えば、夜中、二人で手繋いで寝てたでしょ?
きっちり離しておきましたけど。」
カズがニヤニヤしながらショウ君を見る。
「マサキ、本当か?」
ショウ君の目がガラッと変わる。
「手、繋いだくらいで睨まないでよ。」
「言っただろ?お前達が一番危ないんだから!」
おいらとマー君は顔を見合わせて、仕方なく昨日の夜の話をした。
マー君が泣いたことだけは内緒にして。
「佳代子さんが動揺……。」
カズが頭をガシガシと掻く。
「何か……引っかかる。何だ。何があるんだ……。」
「カ、カズ?早くご飯に行った方が……。」
なんか、探偵になりきってるカズが怖い……。
不機嫌顔で起き上がったジュン君が、カズの腕を引っ張って部屋を出て行く。
「ジュン君?」
「……めし……。」
ジュン君が掠れた声で言う。
おいらはショウ君とマー君の顔を見て、二人の腕を引っ張った。
「行こ。佳代子さんが待ってるよ。」
二人も何か引っかかる顔をして、おいらについて来た。
朝ごはんはあじの干物に納豆。
糠漬けのお新香が超おいしい!
定番の朝ご飯。
沙良ちゃん達はもう食べ終わっていて、昨日の広い部屋に5人だけでのご飯になった。
「さっきの話だけど……。」
カズがまた探偵顔になって、みんなを見回す。
「ショウちゃん、ショウちゃんのおばさんの従兄弟って何人?」
「え?結構いるよ?昨日会ってない人もいるから……。」
「あ、ごめんごめん。ここに住んでた人。
佳代子さん、仲良かったのは6人って言ったんだよね?」
カズがおいらとマー君を交互に見る。
「うん……。たぶん……。」
マー君が自信なさげに答える。
「なんですか、ここ重要なんだから、しっかり思い出して。」
「そんなこと言われても……昨日の夜は、トイレに行きたいと
おかっぱの女の子のことでいっぱいで~。」
マー君が困った顔でおいらを見る。
「……間違いないと思う。さっき、沙良ちゃんも言ってたし。」
「沙良ちゃん?ショートカットの似合う?」
ジュン君が、お新香をポリポリしながら言う。
「そう。ショウ君の従兄弟の。」
おいらがショウ君を見ると、ショウ君は目を吊り上げてジュン君を見てる。
「ジュン、沙良に手、出すなよ。お前と親戚なんてごめんだからな。」
「それもあり?そしたらサトシとも親戚~。」
ジュン君が意地悪そうに笑う。
「ふざけんなよ。」
ショウ君が睨んでも、ジュン君は全然気にする風もなく、お味噌汁をすする。
「6人……。佳代子さんとそのお兄さんの孝助さん、ショウちゃんのおばさんの兄弟が
一茂さんに千賀子さん……もう一人は?」
カズが難しい顔で指を折る。
みんなも、ん、と動きを止めて考える。
「誰?」
ジュン君がみんなを見る。
「誰だろ?お袋が3人兄弟なのは確実だけど……。」
とショウ君。
「足りないね~?」
マー君がみんなの雰囲気を気にせず、ずずっとお味噌汁をすする。
「マサキ。あんたには緊張感が足りない。」
カズがはぁ、と溜め息をつく。
「そんなこと言われても~。」
マー君はあじの身をほぐしながら言う。
「だって、この家にいない仲良しがもう一人いるってことでしょ?
そんなの、佳代子さんに聞けばいいじゃん。」
確かにマー君の言う通り。
みんなもずずっと味噌汁をすすった。
そこへタイミングよく、佳代子さんがやってくる。
「たくさん食べてね。朝いっぱい食べないと元気でないから。」
ニコニコ笑ってマー君にお代わりを促す。
「頂きます。」
マー君もにっこり笑ってお茶碗を差し出す。
「佳代子おばちゃん。佳代子おばちゃんの兄弟って何人?」
ショウ君がご飯を口に運びながら聞く。
「え?ショウちゃん、何をいまさら。」
佳代子さんが笑ってマー君のお茶碗にご飯をよそう。
「いや、サトシに親戚を教えようと思ってさ。」
「ウチは……。」
佳代子さんが言いよどむ。
みんなが顔を上げて佳代子さんを見つめる。
「もう、いいわね?ずいぶん時間も経ったし……。」
佳代子さんが小さく溜め息をついて、みんなを見回す。
「何?何かあったの?」
ショウ君が目を見開いて佳代子さんを見る。
「昔ね……。まだ私達が十代だった頃の話。」
佳代子さんはショウ君とおいらの顔を見て、ふっと笑った。
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