「ココロチラリ」
ココロチラリ 田舎編

ココロチラリ 田舎編 (8) - タイムカプセル side story -

 ←ココロチラリ 田舎編 (7) - タイムカプセル side story - →ココロチラリ 田舎編 (9) - タイムカプセル side story -

しばらく待ってみても、白いものはもう現れなかった。

「マー君、大丈夫みたい。」

おいらが振り返るとマー君がガタガタと震えてる。

「大丈夫?」

「……ダメ……。全然大丈夫じゃない……。トイレも……限界……。」

マー君が半泣きを通り越して、泣きながらそう言う。

膝を擦って、内腿にも力が入ってる。

これはかなりギリギリ?

早くトイレ見つけないと!

すると、パッと廊下の電気がついた。

びっくりして、おいらはマー君と抱き合った。

「何してるの?」

後ろから声がして、振り返ると佳代子さんがおいら達を見て、不思議そうに首を傾げた。

「サトシ君……本当はショウ君じゃなくて……。」

佳代子さんがマー君を指さす。

「ち、違います!」

おいら達は顔を見合わせて、勢いよく体を離した。

「佳代子さん、トイレ~!」

マー君が悲鳴に近い声を上げる。

「トイレ?なんでこんなとこまで来たの?」

佳代子さんが首をかしげながら、おいら達の前を歩きだす。

おいら達は黙って佳代子さんの後ろについていく。

「ま、迷っちゃったみたいで。」

おいらが小さな声で言うと、佳代子さんはクスッと笑った。

「暗かったからわからなくなっちゃった?」

佳代子さんが笑い続ける。

「は、はい……。」

大の大人が夜中に家の中で迷うなんて恥ずかしい……。

マー君と顔を見合わせて下を向いた。

「あ、佳代子さん?」

マー君、思い出したように佳代子さんに声をかける。

「あの、おかっぱの女の子……どなたのお子さんなんですか?」

「おかっぱ……?」

佳代子さんが立ち止まって、振り返る。

「そう、おかっぱで、小学校……1年生位の……。」

マー君は自分の腰の上辺りで手を広げて、女の子の背の高さを示す。

「この位?」

佳代子さんの顔色が変わる。

「さ、さぁ?そんな子いたかしら……。」

佳代子さんは明らかに動揺した様子で、前に向き直り歩きだす。

「ほら、トイレ。急がないと。」

佳代子さんが少し早足になる。

おいら達も遅れまいとついていく。

おいらはマー君を見上げる。

マー君は、顔を引きつらせて佳代子さんの背中に言う。

「まさか、やっぱり座敷……。」

「ついたわよ。」

佳代子さんが、トイレと思しき場所の電気を点けて振り返る。

「早くしないと漏れちゃうんでしょ。」

マー君はハッとして、トイレに駆け込んだ。

おいらと佳代子さんはトイレの前で、顔を見合わせ言葉を詰まらせる。

「し……親戚の方が多いんですね。」

おいらはこの空気を変えたくて、佳代子さんに声をかける。

「そうね。この辺でもこんなに多いのは珍しいかな。東京じゃ、あんまりない?」

「全然です。」

おいらは笑って佳代子さんを見る。

佳代子さんもホッとしたように笑う。

「孝助さんは佳代子さんのお兄さんで、

 一茂さんと千賀子さんがショウ君のお母さんの兄弟……。」

「そうそう。私のいとこは13人いるんだけど、その仲でも6人で仲良かったの。」

佳代子さんが、懐かしそうに目を細める。

「千賀子さんと孝助さんにはお子さんいらっしゃらないんですか?」

「千賀ちゃんには真希ちゃんと雄大がいるけど、兄ちゃんは結婚してないから……。」

トイレを流す音がして、マー君がすっきりした顔で出てくる。

「あ~、間に合った~!」

真夜中なのに、清清しいマー君の顔を見て、おいらと佳代子さんはクスっと笑う。

「マー君、手、洗った?」

「あ……。」

おいらが聞くと、マー君はおちゃめな顔を残して、手を荒いに戻る。

おいら達はまたクスッと笑って先に歩き始めた。

「先、行ってるからね~。」

「ま、待ってよ~!!」

マー君は、びしょびしょに濡れた手のままで、すぐに追いかけてきた。

おいら達は、廊下の電気のありかを佳代子さんに聞きながら、部屋に戻る。

もう、白いものは現れなかったけど、マー君がすっごく怖がるから、

頭の上で手を繋いで寝てあげた。

隣に寝たら、ショウ君に怒られるから。

でも、それで安心したのか、マー君はすぐに寝息を立て始めた。

おいらもすぐに意識が飛んでいった。



「なんか濡れてた……。」

カズの声がぼやける頭に響く。

「誰かが水、零したんじゃないの?」

答えてるのはショウ君?

「そうかなぁ……。」

「どこ?」

「トイレの前。」

「トイレ?……子供がお漏らししたかなぁ。」

「え?私、踏んじゃいましたけど?」

「え?」

バタッという音。

「……大丈夫。臭くない。」

「じゃ、水だよ。」

「……幽霊ってことはないですかね?」

「幽霊?」

「ほら、幽霊がいた後が濡れてたって、よく言うじゃないですか。」

「ないない。ただ濡れてただけで……。」

「だってびしょびしょだったんですよ。」

「だからって……。」

ああ、おいらは知ってる。

それはきっとマー君がちゃんと手を拭かずに、しかも急いで追いかけてきたから、

ビシャッと溢した跡……。

「これは……怪しい匂いがします。」

「え?だって臭くないって……。」

「この家のオドロオドロしい雰囲気……きっと何かあります。」

「人の家を……。」

ショウ君の溜め息。

「調べてみないと……。」

「何を?」

「何があるのかわからないから、調べてみるんです。」

「探偵ごっこ?」

「失礼な。マサキが言ってた座敷童も気になりますし。」

「……。」

「この家には開かずの部屋とかないんですか?」

「……あるけど……。」

「やっぱり!」

「古くて開かなくなっちゃったとか、使ってないとか、そんなのだよ?」

「いいえ、きっと何かあります!今日から私のことは金田一和也と呼んでください。」

「カズ……。」

ショウ君の深い溜め息が聞こえる。

おいらは起きるに起きられなくなった。










関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ 3kaku_s_L.png 大人の童話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
【ココロチラリ 田舎編 (7) - タイムカプセル side story -】へ  【ココロチラリ 田舎編 (9) - タイムカプセル side story -】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【ココロチラリ 田舎編 (7) - タイムカプセル side story -】へ
  • 【ココロチラリ 田舎編 (9) - タイムカプセル side story -】へ