「ココロチラリ」
ココロチラリ 田舎編

ココロチラリ 田舎編 (1) - タイムカプセル side story -

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「人里離れた山間(やまあい)の小さな村。

 落ち武者達が、或いは山賊達が作ったとも言われるこの村には、

 血なまぐさい歴史が付きまとう。

 鬱蒼(うっそう)と茂る樹々の枝が、夕暮れ時の赤い空に黒く伸びる姿はまるで、

 落武者達が苦しんで伸ばした最後の断末魔。

 私達はそんな樹々の中をバスに揺られて進んでいく。 

 ジメッと肌に纏わりつく空気は、熱さのせいだけではない。

 この村に伝わる古い言い伝え……それが、我々を……否、全ての村人を

 震え上がらせることになろうとは……。

 赤い空に浮かぶ白い月は細く、遠くに浮かぶ黒い影は不吉さを増していく。

 あれは、烏だろうか?蝙蝠だろうか?

 その時、血しぶきとともに、大きな悲鳴が空を切り裂いていく。ギャーッ!」

「きゃーっ!!カズ~止めて~っ!!」

マサキが耳を塞いで、座席の下に潜り込む。

「あ~~っはっはっは~っ!マサキ、ほんと怖がり~。」

前の席から後ろを覗いて、カズが大口を開けて笑う。

「カズ、昔からそういうの、上手かったもんね?」

おいらはショウ君とマー君の間で微笑む。

窓側にいるマー君は、背中を丸めて膝の間に頭を押し込んでる。

おいらはマー君の頭を撫でて、顔を近づける。

「大丈夫だよ、マー君。全部カズの作り話だから。」

「ま、人里離れた山村ってのは当たってるけど。」

ショウ君がおいらの肩に腕を回して、おいらの髪をクルクル弄る。

「あれ?」

カズの隣に座っていたジュン君が、声を上げる。

「どうしたの?」

おいらが少し身を乗り出して聞くと、ジュン君が振り向いて、おいら達に携帯を見せる。

「ここら辺、全然電波入んないらしい。」

携帯の端っこに圏外の文字。

「へぇ~、今時あるんだね。そんなとこ。」

カズも自分の携帯を取り出して確かめる。

「うわっ。ほんと、全然立ってない。」

マー君も携帯を取り出そうと顔を上げる。

ポケットを弄っていたマー君が、あっと動きが止まる。

「どうしたの?」

マー君は外を見たまま後ろを指差す。

「あそこ、女の人が……。」

「こんな山奥に?」

ジュン君が笑って窓の外を目で追う。

「全然見えね~。」

笑いながらカズの肩を叩く。

「見える?」

カズも首をう~んと伸ばすけど、もうすっかり通り過ぎちゃって、見えるのは樹々ばかり。

「全然見えませんね~。」

「大丈夫かな?こんなとこに一人で。もう暗くなっちゃうのに……。」

マー君が心配そうに言うと、カズがクスクス笑う。

「その人、白い服着てませんでした?」

「着てた。白いワンピースかなぁ。」

「髪は長い。」

「うん。長かった。イマドキ珍らしい、真っ直ぐな黒髪。」

マー君は胸の下辺りを手で示して、長さも教えてくれる。

「……出たな。」

「うん。出た。」

ジュン君とカズがニヤニヤしながら顔を見合わせる。

「なんだよ、出たって。」

マー君は不吉な予感に顔が引きつる。

「決まってるでしょ?」

カズが手で幽霊の真似をする。

「え~?あれ?幽霊~!!」

マー君がそっとおいらの腕に抱きつく。

おいらの肩に顔を押し付けると、そこにあったショウ君の手で顔を弾かれる。

「サトシに気安く触るな。」

「だって~。」

マー君が泣きそうな顔でおいらを見る。

おいらはクスッと笑ってマー君の頭を撫でてあげる。

「カズもジュン君もふざけすぎ!」

二人はおいらを見て肩を竦めると、前を向いて座席に座る。

おいら達は5人でショウ君のおじいさんの家に向かってる。

おじいさんに、おいら達のことを話す為に。

最初、ジュン君が車を出すって言ってくれたんだけど、久しぶりの5人だし、

昔を懐かしんで電車でってことになって……。

そしたら、駅からバスで40分もかかっちゃって。

おいらは楽しいけどね?みんなでバスも。

昔、高校時代にみんなで行った海を思い出す。

楽しかったな~。

「どうしたの?」

ショウ君がおいらの顔を覗き込む。

「うん?」

おいらが首を傾げると、ショウ君が優しく笑っておいらの頬を撫でる。

「楽しかったなって。」

おいらの気持ちは声になって漏れてたらしい。

「うふふ。高校生の頃の旅行を思い出して。」

おいらがふにゃりと笑う。

「そうだね。楽しかったね。」

ショウ君も思い出したように、目を細める。

「はい、はい。こんなとこで二人の世界、作らないでくれる?

 俺、どうしていいかわかんなくなるよ。」

マー君がちょっと、頬を膨らませてショウ君を横目で見る。

「ごめん、ごめん。いつもの調子でいると、ついね……。」

ショウ君は全然悪いと思ってないみたいにニヤニヤ笑う。

マー君は余計、頬を膨らませる。

「マー君、リスみたいで可愛い。」

おいらがマー君を見て笑うと、ジュン君が振り返った。

「次、降りるとこでしょ?」

「あ、ああ。そう。次……だね?」

ショウ君が、前方に見える次のバス停の表示を確認する。

「そろそろ降りる準備しとかないと……。」

ジュン君が、マー君の前にあるお菓子の袋達を指差す。

「わ、わかってるよ!」

マー君が片付けるのを、おいらも手伝ってあげると、マー君の顔が楽しそうになる。

ちょっとホッとしてゴミを袋にまとめていった。

そうこうしていると、バスがゆっくり止まる。

「降りるよ~。」

ショウ君が言って立ち上がる。

みんなで一列になってバスを降りていく。

バスを降りて、外の空気を吸い込むと、いつもより美味しく感じるから不思議。

でも、空の色はもうすでに濃いピンクで、遠くの山が黒い大きな影になってる。

「早く行かないと暗くなっちゃうね。」

ショウ君の隣に行って顔を見上げる。

「ここらは暗くなると何も見えなくなるから……。」

ショウ君が心配そうに辺りを見回す。

おいらも周りを見回してキョロキョロする。

おいら達が来た道は鬱蒼とした森に続き、

おいら達の行く先にはのどかな村が広がっている。

「じゃ、行こう。」

ショウ君が先頭に立って歩き始めた。

おじいさん……どんな人なんだろう。

おいらはちょっと緊張して、ショウ君の後に続いた。










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