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「ココロチラリ」
ココロチラリ(やま)【41~57】

ココロチラリ その後(44) - タイムカプセル side story -

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車に乗り込み、エンジンをかけると、ショウ君はいつになく乱暴に車を走らせた。

お母さんが玄関から出てきて、走り去っていく車を寂しそうに見送っている。

「ショウ君……。」

怒ったままのショウ君の横顔。

「ごめん……せっかくサトシが言ってくれたのに……。」

「おいらはいいけど……。」

「あのクソ親父!」

「ショウ君!」

車は大きく右折して、おいらの体が揺れる。

「ショウ君!危ない!」

荒れた運転のショウ君は、家に着くまで無言だった。



次の日。

おいらはショウ君家に電話して、お母さんにお父さんの様子を聞いてみた。

お父さんは怒ったまま、今朝も会社へ行ったらしい。

ショウ君もずっと不機嫌なまま。

「あの二人、本当に似てるから。それで余計に反発しちゃうみたい。

でも当人達はそれに気づいてないの。」

とお母さんは笑って、しばらく時間を置いた方がいいと言った。

そうなのかな?

時間を置いても、同じことの繰り返しにならないかな?

おいらは、そうですね、と言って電話を切った。

なんだかすっきりしない気持ちのまま一日が過ぎていく。

ちょっと気分を変えたくて、久しぶりに餃子を作ることにした。

マー君の餃子には負けるけど、ショウ君、焼きながら食べるの好きだから。

餃子をキッチンで作っていて、お酢がないことに気づく。

「早めに買いに行こう。」

おいらは一人つぶやいて、携帯と財布をポケットに入れる。

お店までの道のりをテクテク歩いていると、

「ワン!」

犬の大きな鳴き声に振り向く。

マー君と犬のショウ君が、おいらに向かって走ってくる。

「マー君!」

「サトシ!どこまで?」

「うふふ。買い物。お酢を買いに。」

おいらが笑うと、犬のショウ君が後ろ足で立ち上がり、おいらに抱きつく。

「こら、ショウ!サトシが汚れる。」

「大丈夫だよ。……ショウ君、久しぶり!」

おいらはショウ君の首の辺りをワシャワシャ撫でてあげる。

ショウ君は気持ちよさそうに鼻先を伸ばして、おいらの匂いを嗅いでいく。

「うふふ。ショウ君、ちゃんとおいらのこと、覚えててくれたね。」

「忘れるわけないよ。ショウもサトシがお気に入りなんだから。」

マー君が、人懐こい笑顔で笑う。

「あれ?今日は猫のサトシ君はいないの?」

「あいつは暑いのダメだから。クーラーの下で涼んでるよ。」

マー君がはひゃっひゃっひゃと声に出して笑う。

「今日は休み?」

おいらが聞くと、ショウ君をおいらから引き離しながら、マー君が答える。

「うん。久しぶりの休み。だから、こいつと長めの散歩。」

なかなか離れないショウ君に、悪戦苦闘しながら、マー君が笑う。

本当にマー君の笑顔は心を落ち着かせてくれる。

どうしたら、そんな風になれるんだろう。

「よかったね。ショウ君、マー君と散歩。ウチのショウ君もフリスビーやりたがってたよ。」

おいらが言うと、ショウ君が返事をするように吠える。

「ショウもやりたいって。……ショウちゃん、今日は早く帰ってくるの?」

「うん、たぶん……。」

おいらの声の調子が低かったのか、マー君が心配そうにおいらの顔を覗き込む。

「何?ケンカでもした?」

「ううん。ケンカじゃないんだけど……。」

おいらは昨日の話をマー君にした。



「そっかぁ。ショウちゃんのおじさん、怒っちゃったのかぁ。」

マー君が眉間を寄せて、困った顔をする。

「うん。ショウ君も。」

おいらは溜め息をついて、マー君を見上げる。

「ショウちゃんのおじさん、昔から怖かったもんね。」

「……そうでもないよ。優しいおじさんだったよ。」

「サトシにはね。ショウちゃんと一緒でおじさんも、サトシは特別扱いだったから。」

「そんなことないよ。」

「そうだよ……あ、みんなサトシは特別扱いかぁ。」

マー君が笑っておいらの頭を撫でる。

「大丈夫。すぐ仲直りするよ。サトシ、頑張ったんだもんね。」

マー君の言葉と一緒に、犬のショウ君がおいらの手をペロペロ舐める。

マー君の笑顔と、犬のショウ君の優しさがおいらの心に染み渡る。

「ありがとう。マー君。」

「また何かあったら連絡するんだよ?一人で抱え込まないでね。」

「うん。」

おいらはマー君に手を振って別れた。

そして、昔のことを思い出していた。

あの竜の木の、帰りが遅くなった時、お父さん達の中で、一番最初に駆けつけたのは

ショウ君のお父さんだった。

いつも残業ばっかりなのに、あの日はすぐに帰ってきて、

結局、ショウ君はこっぴどく怒られたんだけど、

それは、ショウ君が可愛くて、心配で、仕方なかったから。

「やっぱり、なんとかしなくっちゃ。」

おいらは一人でうなずくと、小走りでお店に向かった。



ショウ君の機嫌は餃子を食べて、ちょっとよくなった。

「うん。サトシの料理は何を食べても旨い。」

口いっぱいに頬張りながら、ショウ君は満足そうにビールを飲む。

「ね、もう一度行こう。ショウ君家。」

おいらもビールを飲みながら、ショウ君を見つめる。

「……いいよ、もう。何を言っても無駄だから。」

「そんなことないよ。」

「いいんだよ。」

ショウ君はそれ以上、何も言わず、黙々と餃子を食べ続ける。

おいらも仕方なく、そんなショウ君を眺めながら餃子を食べた。

個展の開催も、3日後に迫っている。

おいらは、どうしたもんかと溜め息をついた。










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