「ココロチラリ」
ついておいで(やま)

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まったく、何しに来たんだ?

「仕事中だろ。」

「午前中の仕事は終わりました。」

女の子はムッとした顔で俺を見る。

「その人には優しいんですね。櫻井さん。」

当然だろ?一緒にするな。

「もしかして……櫻井さんの好きな人ってその人?」

俺はサトシの顔を見る。

サトシは小さく顔を横に振る。

「櫻井さんってそういう趣味なんですかぁ?

 その人、綺麗だけど、男の人ですよね?」

女の子がクスクス笑う。

ああ、嫌な感じの笑い方。胸糞悪い。

「それじゃ、私なんて見てくれないですね?」

クスクス笑いが大きくなって、手で口を隠す。

なんだ、この女。

サトシが俺の腕を掴んでまた小さく首を振る。

我慢しろって?こんな女に?

「しかも、みんなに内緒?うふふふ。

今夜はその人じゃなくて、私と付き合ってくださいね、櫻井さん。」

俺の秘密を握ったと思って喜んでんの?

「はぁ?ふざけんな。どうして俺がお前みたいな胸糞悪い女と

飯食いに行かなきゃいけないのかな?」

顔をムッとさせ、俺を見つめる女の子。

「いいんですか?みんなに言っちゃっても。」

「どうぞ、ご自由に。」

サトシがぎゅっと俺の腕を掴んで俺を見上げる。

俺は、その手をぎゅっと握って、ニコッと笑う。

そんな俺を見て、余計怒ったらしい女の子が、これまでとは違った声音で凄んでみせる。

「本当にいいんですね?」

「どうぞ。好きにすれば?」

動じない俺に業を煮やして、女の子はエレベーターに駆け込んだ。

「ま、待って!」

サトシが追いかけようとするのを手で遮る。

「いいの?ショウ君。大丈夫なの?」

「何が?」

「だから……おいらのこと……。」

「サトシの何を隠さなきゃいけないの?」

「だって……。」

「行こう。」

俺は受付でサトシの入館証をもらうと、一緒にエレベーターに乗り込んだ。



フロアに降り立つと、女の子がみんなに向かって何か言ってる。

俺はサトシの肩を抱いてフロアを突っ切っていく。

「ほらね、私の言ったこと、間違ってないでしょ!」

俺達を指差す、その子の前を通過する。

俺の机の前に行くと、俺はみんなを見回す。

みんな、きょとんとした顔で俺を見ている。

「すまない。仕事中に。

 え~、そいつが何を言ったか知らないが……。

 俺の恋人……。」

俺がみんなにサトシを紹介しようとした時、岡林の前に座っている佐々木が奇声を発した。

「きゃーっ!!大野さん、大野サトシさんですよね?」

いつになく甲高い声で叫ぶと立ち上がり、俺をどかしてサトシの隣に並ぶ。

な、何すんだよ!

「私、あなたの大ファンなんです!今度の個展、絶対行きます!

 握手してください、写メ、撮ってもいいですか?あ、サインも!」

フロア中がザワツキ始める。

「は、はぁ。」

サトシは興奮する佐々木と握手して、手をぶんぶん振られている。

「止めろ。サトシが壊れる!」

俺が佐々木を制すると、今度はフロア中から人が集まってくる。

「私も、握手してもらっていいですか?」

「俺、エレベーター、乗りに行きました!」

「この間の対談の記事、すごくよかったです。」

「人気探偵シリーズの新作の挿絵も描かれてますよね?」

俺はどんどんサトシから離されていく。

困ったように眉を八の字に下げ、俺に助けを求めるサトシが、

みんなにもみくちゃにされる。

「や、止めろ!仕事中だぞ!席に戻れ!」

俺の一喝で、みんなが振り返って俺を見る。

「え~、こんな有名人、滅多に会えないのに!?」

佐々木がサトシの腕を持って、食ってかかる。

「うるさいっ!俺のサトシに気安く触るな!」

俺は佐々木の腕を払いのける。

「なんだ?何が起こってる?」

内山が、キョロキョロしながら入ってくる。

「お、サトシ!いつ来たの?」

「ウッチー!」

サトシが嬉しそうににっこり笑う。

内山は俺と中学、高校が一緒。つまりサトシも一緒だ。

「ついさっき。ショウ君の忘れ物、届けに来たんだ。」

サトシがふにゃりと笑う。

ほら、ザワついてたフロアにも花が咲く……。

待てよ。ここには花の蜜を狙う輩、蝶とか蜂とかアブラムシとか……、

いっぱいいるんじゃないのか?

周りを見回して見る。

ほら、佐々木の目も、岡林の目もハートになってる。

うっとりサトシに見とれる虫達……。

「こらっ!見るな、見るな!」

俺はサトシを抱きしめて、悪い虫から隠す。

「あはははは。相変わらずだな、櫻井は。」

「何?内山さん、大野さんのこと知ってるの?」

佐々木が興味津々で聞いてくる。

「ああ、中学高校と同じだから。」

内山がサトシの隣にやってくると、馴れ馴れしくサトシの肩に手を掛ける。

「忘れ物、きっと俺のだ。ありがとな。」

「うふふ。いいよぉ。ちょうど新橋に用事があったし。ウッチーにも会えたし。」

「時間あるなら飯でも……。」

俺は内山を睨む。

「はいはい!サトシは忙しいからね。」

そう言いながら、俺はサトシの肩に乗ったままの内山の手をはずす。

「みんな、ちょっとおかしいよ!」

女の子が突然大声を上げた。

「な、何?どうしたの?」

佐々木がびっくりして目をパチクリする。

「だって、おかしいでしょ。」

「だから、何が?」

岡林も首を捻って女の子を見る。

「櫻井さんの恋人が男の人だなんて、いいんですか!」

女の子の声が裏返る。

「どうしていけないの?」

佐々木が不思議そうに聞き返す。

「だって、男同士だなんて……まともじゃないです!」

女の子の言葉にサトシがビクッと反応する。

俺はサトシの肩を抱き、俺の後ろに隠すとツカツカと歩きだす。

女の子の前で立ち止まり、大きく息を吸った。










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