花火(やま)

花火 7話 ~ やま ~

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明日、俺は東京に帰る。

今日が智との最後の夜。

俺らは初めて二人で会った浜辺に一緒にいた。

月が俺らを照らす。

波の音が物悲しく聞こえるのは、俺の気持ちのせい?

「初めて会った日さ、何考えてたの?」

俺は海を見ながら聞いてみる。

「初めて会った日?」

「ずっと海見てたじゃん。」

智はちょっと考えて答える。

「ああ、何も考えてないよ。」

「何も?」

「うん。ぼーっとしたい時、たまに来るんだ。海、ずっと見てられる。」

「ふーん。」

俺も智も海から視線を離さない。

波の音が、やけに大きく聞こえる。

「俺、明日……帰るから。」

俺の声は波にかき消されそうなほど小さい。

「うん……。」

智の声も小さい。

俺は思いっきり息を吸い込んで智を見る。

「俺、やっぱり智君が好きだ。」

智も俺を見る。

「うん。ありがと。翔君が本気なのはわかった。」

智がほんの少し笑う。

「翔君、東京の人だから、ちょっと男でも遊んでみたいだけなのかと思ってた。」

そう言って、今度はふにゃりと笑う。

俺の気持ちは、一緒にいればいるほど強くなった。

毎日伝え続けた。

簡単な感情じゃないことを教えたかった。

俺の知らない智のことも、もっと知りたかった。

でも、もうタイムリミット。

今日がラストチャンス。

「俺、真剣だよ。結構、深刻なんだから。」

俺も智を見て笑う。

波の音が俺と智を包む。

「……触っても……いい?」

月明かりに浮かび上がる智の顔が、上下に動く。

俺は智の頬に手を添える。

智の肩を引いて、ゆっくり顔を近づける。

智の瞳は俺をまっすぐ見たまま、微かに揺れる。

まるで、俺を待っているよう。

俺は智の唇に唇を重ねる。

智の手がそっと俺のわき腹を掠め、背中に回る。

その瞬間、俺の想いに歯止めが利かなくなる。

智を全力で抱きしめ、舌を絡める。

智も激しく、大胆に舌を動かす。

貪るようなキスが、俺の欲情を駆り立てる。

俺は思わず、智のTシャツの下に手を滑り込ませる。

智の体が、勢いよく離れる。

「ちょ、ちょっとそれは……。」

「ご、ごめん……。」

俺は早まったことを後悔し、でも、そうせずにはいられなかったのも事実で……。

二人の間に沈黙が流れる。

波の音がそれを消すように、規則正しく砂浜を濡らしていく。

「最初に会った時……。」

智が波を見つめながら、ボソッと言う。

「おいらのこと綺麗だって、言ったけど、綺麗だったのは翔君だから。」

「え?俺?」

「うん。陽に焼けた肌に月明かりが当たって、金色に輝いてた。

 瞳も、ツンツンの髪もキラキラして……ライオンみたいだった。」

智がふにゃりと笑う。

初めて会った時に見た、あの笑顔。

「ずっと見てたら吸い込まれそうで、それで声を掛けたんだ。」

智は一歩前に出ると、水際ギリギリをビーサンで確認する。

「じゃ、なんであの時、名前も教えてくれなかったんだよ。」

「なんでかな……。印象に残したかったのかな?」

なんだよ、それ。それって智も……。

智は俺の顔を見て、俺の考えてることがわかったのか、手を振って否定する。

「ち、違うから。おいらにそっちの気はない!」

「俺だってそうだよ。……でも、智君は特別みたいで……。

 智君だって、キス……拒まないどころか……。」

「それは……お前が上手いから……。」

俺が智を見ると、智も恥ずかしそうにしながら、俺を見ていた。

月明かりに照らし出される智の顔はやっぱり、いつもより綺麗で色っぽい。

俺らはずっと海とお互いを眺め続けた。

これが最後かもしれない。

俺はこの光景を、智の顔を目に焼き付けておきたかった。



次の日、俺と潤は東京に帰った。

潤のファンが数人見送りに来てくれた。

もちろん、カズも雅紀も。

みんなで来年も遊ぼうと約束して電車に乗った。

智は見送りには来てくれなかった。

でも、ちょっとそんな気はしてたんだ。

智はきっと来てくれない……。

それは喜んでいいのかな?



それからも、俺は智にメールを送り続けた。

智からは5回に1回?7回に1回?返事が来る程度だったけど、

俺らの繋がりはこれだけだったから、なんでもないことでもメールした。

そして、今日、俺は東京駅のホームにいる。

今は春。あれから半年が経っている。

新幹線が到着し、乗客が降りてくる。

2、3両先の車両から、見覚えのある猫背がヒョコヒョコ歩いてくる。

「智!」

俺は大きく手を振って呼ぶ。

智も俺を見つけ、にこっと笑う。

智は4月から東京の専門学校に通う。

絵の勉強するんだって。

それを聞いた時、俺は確信した。

花火大会のジンクス、あれは本当だって!

智が目の前に来ると、俺は我慢仕切れなくて抱きしめる。

「翔……。」

智の困ったような声。

「おいらのが年上なんだから……。」

俺は智の体温を匂いを全身で感じる。

「メールでも言ったけど、呼び捨てにすんな!」

智に頭を叩かれ、体を離す。

「痛っ。叩かなくても……。」

俺らの関係に、相変わらず進展はない。

「智君。」

「ん?」

智がふにゃりと笑う。

「愛してる。」

「ば、ばかか?」

智が頬を染めて笑う。

もう、出会う前には戻れない。

俺は、あの夏の出会いを永遠にするよ!










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