FC2ブログ

花火(やま)

花火 5話 ~ やま ~

 ←negai 七夕 - タイムカプセル side story - →花火 6話 ~ やま ~

二人で浜辺に腰掛けて空を見上げた。

規則正しく寄せる波の音と、ドンッと花火の上がる音。

時々、遠くから聞こえる歓声。

花火の色に染められる智の顔。

パンッと花開く度に、智の顔が浮き上がり揺れる。

この間の月夜の顔とは違う智の顔。

俺は、花火と交互にそれを眺めた。

そして考える。

後、数日で俺は東京に帰る。

東京に帰ったら、今のままじゃ智とはこれっきりだ。

どうしたらいい?

どうすればいい?

空では小さな星が一斉に飛び立って、四方八方に広がっていく。

「俺さ……。」

考えるより先に口が動く。

何?俺、何を言おうとしてる?

「ん?」

智は花火を見たまま答える。

「俺……智君が……。」

ああ、俺、その先、言ってもいいのか?

でも、言わないとこのままになっちゃう。

「おいらが何?」

智がちょっと耳を俺に寄せる。

「俺……智君が……。」

ああ、言っちゃう?言っちゃって正解?

「智君が好き……。」

俺がそう言って智を見た時、ちょうど大きな花火がドンと上がって、

二人で空を見上げた。

大きな丸の中に目と口?

スマイルマーク?

しかも逆さ!

「あはは。すげぇ、あんなのもできんだ!」

智には俺の言葉は届かなかったらしい。

俺は智の両肩を掴んで俺の方に向けさせる。

「な、何?」

「俺さ……智君が好きみたいだ。」

「へ?」

智は変な顔をして、まじまじと俺を見る。

「……好き……なんだ。」

「……それはどーも。」

智は俺の言ってることを理解していないらしい。

「好きなんだよ……女の子を好きになるみたいに……。」

「女の子だって、親友になれると思うぜ。おいらは。」

また、パンッと大きな音が響き、二人で空を見上げる。

空には大きなキャンディの形。

「すげぇ!あれ、どうやってるんだろ?」

智はちょっと興奮気味に俺の腕を掴む。

掴まれた腕がカァーっと熱くなって、熱がどんどん広がっていく。

「だから!」

俺は掴んだ肩を引き寄せて、智の唇に唇を当てる。

また、ドンと打ちあがる音と、パンッと花火が開く音。

智の頭の後ろで、大きな赤いハートが広がっていく。

智は勢いよく俺の胸を押し、突き放す。

「あ?おいら達、会うの2度目だよね?」

「そ、そうだよ。」

「それで好き?」

「そうだよ……いけない?」

「いけなかないけど……男だぞ?」

「し、知ってるよ。」

「わりぃ……、おいら、そっちの気ないから。」

「そんなの、俺だってそうだよ。」

「じゃ、なんだよ、今の!」

智が怒ったように口を尖らせる。

「わかんないんだよ。俺だって!でも、好きなのだけはわかった!

 俺は大野智が好きだ!」

智は慌てて俺の口を押さえると、キョロキョロと辺りを見回す。

「はぁ?恥ずかしいから、そういうこと大声で言うなよ!」

「だって、本当の……。」

智は手に力を込めて俺の口を塞ぐ。

俺らの上では大きなピースマークが夜空を彩る。

智はゆっくり口から手を離すと、ボソボソと言う。

「おいらの……何が好きなんだよ。」

「顔……と声……と仕草……と……全部。」

「ふざけんな!」

「ふざけてないよ。」

俺は真剣な顔で智を見つめる。

「あの月の夜、浜辺で見た智君が……本当に綺麗で、心奪われた。」

「……よく見えなかったからだろ?」

「違うよ。……笑顔に引き付けられたんだ。」

「……お前、口、うまいな。」

「だから、違うんだって。本心!」

俺は真剣な目で訴える。

「……ナンパばっかりしてるくせに?」

「あの夜から、それも上の空で……え?なんで知ってるの?」

智は、あっと口を開けて向こうを向く。

「ね?なんで知ってる?……俺のこと、覚えてた?」

智はこっちを向いてくれない。

空に大きな花火がドンと上がる。

「こっち見ろよ!」

俺は智の肩をグイッと引っ張る。

智はちょっとばつが悪そうに、俺から顔を背ける。

空で大きな花火がパンと開く。

「覚えてた?ね?」

俺は無理やり智の顔を覗き込む。

それでも顔を背ける智の顎を、クイッと掴んで持ち上げる。

智の顔に花火の影が揺らめく。

「声掛けた時、覚えてなさそうだったのに……。」

「お……覚えてたよ……でも、なんか恥ずかしいじゃん?」

智が恥ずかしそうに、視線を外す。

「覚えててくれたんだ……。」

俺はそれだけで嬉しかった。

嬉しくて、なんだか泣きそうになった。

「でも!おいら、そっちの気はないから!」

俺は智の顔をじっと見つめる。

花火が次々に上がる音で、辺りが埋め尽くされる。

「……キスしていい?」

「え?」

智は聞こえなかったのか、耳を俺に近づける。

「キスしていい?」

俺は大きな声で言うと、にっこり笑う。

「だから!おいら、そっちの気は……。」

俺は智の口を塞ぐ。

空に上がった花火が、一斉に開いていく音と火薬の匂い。

遠くから人々の歓声。

でも、そんなものはどうでもよくて、

俺は柔らかい智の唇と、驚いた智の目だけを感じ、

智の唇の間から、そっと舌を滑り込ませる。

一瞬、ビクッとした智の体も、唇も、俺の舌を受け入れてくれる。

花火の上がる音の間隔が開いていく。

大きな花火が上がり始める。

花火大会も、もう後わずか。

智の舌は優しく、智の唾液は甘い。

体が痺れるような恍惚感に襲われ、舌を離すことができない。

最後の花火が、大きな音を立ててドンッと上がる。

息苦しそうな智を、やっと解放してあげると、智が一言つぶやいた。

「お前……キス、上手いな。」

空でパンッと、今日一番の大輪の花が咲く。

二人で空を見上げると、赤から青に変わって、大きな花が散っていく。

これで、花火大会は終了だ。

「アドレス……教えて。明日も会える?」

俺が聞くと、智は手の甲で唇を拭いながら答える。

「だから、おいら、絶対ないからな?」

「いいよ。それでも。」

俺は軽く笑う。

いいよ、それでも。

それでも振り向かせて見せるから!

こんな出会い、きっと一生に何度もない。

そう簡単には逃せない!

俺らはアドレスを交換し、次の日もその次の日も会った。










関連記事
スポンサーサイト



総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
総もくじ  3kaku_s_L.png Sunshine(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png 時計じかけのアンブレラ
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png Happiness(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png 夏疾風(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png STORY
【negai 七夕 - タイムカプセル side story -】へ  【花火 6話 ~ やま ~】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【negai 七夕 - タイムカプセル side story -】へ
  • 【花火 6話 ~ やま ~】へ