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花火(やま)

花火 4話 ~ やま ~

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やっとのことで追いつくと、そいつの肩を思いっきり掴んだ。

そいつは振り返って俺を見る。

一瞬、顔にハテナマークが浮かぶ。

「俺、月の夜、浜辺で会った。」

俺は、はぁはぁする息を整えて、そいつの顔を見る。

「ああ、あの時の。」

やっとわかったのか、小さくうなずいて、しげしげと俺を見る。

「で、何?」

何って言われても……。

「あ……次に会ったら名前教えるって……。」

そいつはふにゃりと笑って俺を見る。

だから、ずるいんだよ、その顔!

「わざわざ名前、聞きにきたの?」

「わ、悪いかよ。」

俺はちょっと照れくさくなって頭を掻く。

「んふふ、悪かぁないけど……。」

そいつはずっと笑い続ける。

俺の心を見透かしたみたいに。

「教えろよ、名前。」

そいつは、ふふんっと笑って小さな声で言う。

「おいら、智。大野智。」

「智……君。」

俺は口に出して言ってみる。

ちょっと動揺してるのかな?

声が上ずる。

「何、そのイントネーション。」

またそいつ……智が、んふふと笑う。

「い、いいだろ?」

「いいけど。」

その時、パンッと大きな音が鳴る。

二人して空を見上げると、空一面の大きな赤い牡丹。

周りから歓声が上がる。

「人がすごいから、こっち。」

俺はそいつの手を握った。

細くて長い指をギュッと握って人ごみを避け、浜辺の方へ向かう。

空に、大きな黄色い花火がパンッと上がった。



この間の浜辺まで来ると、人は急に少なくなる。

手を繋いだまま、黙って智を浜辺まで連れて来たものの、どうしていいかわからない。

「ここなら、ゆっくり見れるから。」

そう言ったはいいものの、何を話したらいいか脳みそをフル回転させて考える。

ついでに、繋いだ手をどうしていいかも考える。

「……花火大会なのに、友達と見に行かないんだ?」

智に言われてハッとする。

そうだ。水玉、置いてきちゃった。

「やべ。」

俺はすぐさま携帯を取り出し、カズに電話を掛ける。

「ごめん。ちょっと待ってて。」

智はにこっと笑って空を見上げる。

さりげなく、繋いだ手を離すことができたけど、ちょっと残念な気もする。

俺は智に背を向けてカズが出るのを待つ。

「あれ?翔ちゃん?どうしたの?」

「わりぃ。水玉置いてきちゃった。」

「水玉?ああ、翔ちゃんと一緒に行った?」

「そ、一人にしちゃったから、回収しといて。今度埋め合わせするから!」

「え?……いいけど、翔ちゃんは?」

「俺、ちょっと用事あるから。じゃ。」

「あ、翔ちゃん?」

俺は急いで電話を切って振り返る。

目を離したら智がいなくなってしまいそうで、急に不安になったから。

振り返ると、智はちゃんとそこにいて、俺を見てクスッと笑った。

「大丈夫なの?連れ。」

「ああ、平気。」

俺は智の顔を見て、ドキッとする。

花火の明りが、智の顔の上で揺れる。

智の綺麗な顔を、より色っぽく映し出す。

色っぽく?男なのに?

「智君は大丈夫なの?」

「何が?」

智が色っぽく笑う。

なんだよ、これ、だから、反則だろ?

「……誰かと一緒じゃなかったの?」

「ん?んふふ。大丈夫だろ?断ろうと思ってたし。」

智が笑う。

智が笑う度に、俺の心臓の動きが早くなる。

なんか、俺、ドキドキしてる?

ずっと好きだった人に会ったみたいな?

「断ろうって、誰?」

「誰だっていいよ。」

「…………。」

俺が黙り込むと、智はしょうがないなぁといった風に眉をしかめた。

「学校の先輩。男だから平気。」

すると、智の携帯が鳴る。

プルル、プルルルルルル。

智は携帯を見て、ポケットに戻す。

「出ないの?」

「今言った先輩。」

首を傾げて笑う。

「出なよ。」

「なんて出るの?」

「なんてって……。」

「他のやつといるから行けないって?それとも遅れて行くって?」

え?遅れて行っちゃうの?

俺の顔を見た智が、笑ってポケットから携帯を取り出す。

「もしもし。」

智は一瞬、携帯を耳から離す。

携帯からは大きな声でまくし立てる男の声。

花火の音に混じって、先輩という人が怒っているのが伝わってくる。

「ごめん。今日行く気分じゃない。」

智はまた携帯を耳から離し、俺を見ていたずらっぽく笑う。

「じゃ、わりぃ。」

そう言って、携帯を切る。

「い、いいの?怒ってたじゃん。」

「ん……気分じゃなくなった。」

智は俺越しに空の花火を見る。

俺も智の隣に並んで空を見上げる。

白い煙が流れて月を隠す。

空に輝くのは大輪の花とそれを縁取る小さな花。

それらがパンッと開いて、ゆっくり流れ落ちていく。

消えるまでの数秒。

その美しさを煌(きらめ)かせる。

隣を見ると、智も同じタイミングで俺を見た。

目が合って、ふにゃりと笑う。

その瞬間、俺の気持ちの正体をはっきりと確信する。

俺、こいつに恋してる。

男だけど、東京に帰ったら会えなくなっちゃうけど、

俺今、運命感じてる!

俺が真顔でじっと智を見ていたら、智はまた、ふにゃりと笑って空を見上げた。

今までの中で一番大きな赤い花火がパンッと花開いて、

その雫が、俺らの上に降り注いだ。










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