花火(やま)

花火 3話 ~ やま ~

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その次の日の夜も、その次の次の日の夜も、浜辺に行ったが、あいつは現れなかった。



「へぇ~、どこから来たの?」

俺は潤の隣で笑う。

2時まで海の家を手伝って、それから海で遊ぶ日々が続く。

あのお姉さま方は次の日帰っていったけど、女の子は次々海にやってきた。

カズは残念ながら、お姉さんとのひと夏の経験はできなかったらしいけど

(すんででビビったらしい)、諦めてはいないみたい。

「……長野。」

「奇遇だね~。俺達も。」

潤が面白そうに笑う。

「ほんと?長野のどこ?」

色白の女の子達も、目を輝かせて食いついてきた。

「どこと言われても……わかんないけど。」

潤がウィンクしてみせる。

「なんだ、嘘なんじゃん。」

女の子達はちょっと怒った素振りをする。

あ、結構綺麗な足じゃん。

「嘘じゃないよ。こんな可愛い子達がいるなら、長野に生まれたかったなって。」

潤がクスクス笑う。

本当に潤は女の子の扱いがうまい。

可愛いとか、平気で言えちゃう。

俺はトレイを持って皿を下げにいく。

青い海、眩しい太陽とビキニの女の子達。

ここはパラダイスのはずなのに、俺はあの夜会った男が気になって仕方ない。

夜、浜辺に行く度に思い出す。

あの横顔、風になびく髪。

ふにゃりと笑った顔……。

かなり重症だ。恋してるみたいだ。

恋……?まさか!

俺が男に恋?

大失恋で、情緒不安定なのか?

「翔ちゃん、午後、一緒に遊ぼうって。」

いつの間にか隣に来ていたカズが肩を叩く。

カズの視線の先を見てみると、さっき潤と話していた足の綺麗な女の子達が

俺に向かって会釈する。

俺も釣られて会釈する。

「あっち、4人いるって?」

「うん。今は2人だけど、後2人いるって。」

お姉さま方のことがあってから、みんな人数には敏感になってくれてる。

俺に悪かったと思ってるらしい。

いいのに、気にしなくても。

俺らは仕事を終えると、女の子達と海に走った。

ビーチバレーしたり、一緒に海に入ったり、結構楽しかった。

ピンクの水玉の水着女の子が俺に好意を持ってくれたのか、

控え目に俺に声を掛けてくれる。

普段の俺だったら飛びついて喜んだはず。

俺の好きなスレンダー美人……ではなかったけど、

可愛いかったし、ふくらはぎの感じは俺好み。

あ、そうそう、4人は俺らと同じ16歳だった。

「明日の花火……一緒に行ってくれませんか?」

その子がためらい勝ちにそう言った。

これぞ、青春!なんじゃね?

「う、うん。いいよ。」

俺はそう答えたけど、やっぱりあの夜の男のことが頭から離れない。

男のくせに綺麗すぎんだよ。



次の日の花火はそれぞれ別行動になった。

みんなそれぞれ、行く相手がちゃんと見つかったらしい。

雅紀はあんだけ一緒にナンパしておいて、クラスの女子と行くんだと。

だったら、最初からその子にしとけよ!

カズと俺は昨日知り合った女の子と。

潤は焼きそば買いに来た20代のOLだって。

あいつ、俺らと遊ぶ以外にもちゃんと手、つけてたんだよ。

さすが!

この辺で、花火大会は大きなイベントだ。

屋台も軒を連ね、盛大に行われる。

当然、カップルは必ず行く。

まだ俺とカズが小学生だった頃、花火大会でカップルをからかって怒られたっけ。

カップルの後ろに立って、

「ね、今からチューすんの?」

って言ったら、みんな、怒るより先に顔を赤くするのがおかしかった。

懐かし~。

そのカップルに、今は俺らがなるんだからね、驚き。



俺は水玉の水着と6時に待ち合わせした。

彼女は白いミニスカートで登場。

うん。やっぱり結構可愛い。

屋台の前を歩いていたら、向こうからカズ達も歩いてきた。

カズも楽しそうで、今夜こそ、ドーテー喪失か?

俺がニヤッと笑うと、カズが、ばか!笑うな!と、顔で伝えてきた。

頑張れよ、カズ!

空がだんだん暗くなってくると、どこかでパンッと大きな音が鳴った。

空を見上げると、小さな花火が幾つも咲いては散っていく。

すぐにパパパパパンッと大きな音が鳴り響く。

「始まったね。」

水玉の水着が俺を見て笑った。

「うん。」

俺も水玉も空を見上げて立ち止まった。



しばらくボーっと空を見上げていたが、ふと視線を下げた時、

見覚えのある影が視界の隅を掠めた。

「あっ。」

思わず声が漏れる。

あいつだ!

あの夜の男!

俺はその影を追って走り出していた。

人ごみを掻き分け、影の行った先を追う。

「翔く~ん!」

水玉の声が遠くで聞こえたが、俺は立ち止まることもできなかった。

しばらく人の間を縫っていくと、あの男の後ろ姿が見えた。

「あっ……。」

声を掛けようとしたけど、何て言っていいかわからない。

やっぱり名前、無理やり聞いておけばよかった。

そいつはどんどん先へ進んでいく。

俺も見逃すまいと後を追った。

でも、俺はあいつを捕まえて、どうしようって言うんだ?










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