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花火(やま)

花火 2話 ~ やま ~

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夜のナンパは成功し、ぼちぼち可愛い子達と飲むことになった……お茶だけど。

未成年の俺たちは近くのファミレスへ。

こんなところにもファミレスがあるのに驚く。

しかも可愛い子達と言ったけど、大学生のお姉さま方。

俺らから見たら、色気も女っぷりも学校の女子とはえらい違い。

ナンパの時に、カズがしつこいくらい学校の女子は嫌だと言っていた。

ま、当たり前か?

初めての相手にはそれなりに夢もある。

別れた後にそれがバレるのも嫌だ。

俺みたいに……。



俺らは楽しい時間を過ごしていた。

残念なのは……お姉さま方が3人だったこと。

1人あぶれるわけだ。

潤がこっそり、俺があぶれるからって言ってくれたけど、

お姉さま方が許すわけがない。

ここでカズを外すこともできないし、雅紀は初めて会う奴だし……。

仕方ない、俺があぶれるよ……。

もちろん、お姉さま方は一緒に行こうと誘ってくれた。

「一緒に行こうよ。3人で。」

ニコッと笑うお姉さんの胸元は確かに魅力的だったけど、丁重にお断りして

潤にウィンクする。

カズをよろしくって。

というわけで、ファミレスの後、みんながバラバラになると、

俺は浜辺を一人で歩いた。

一人で先に帰るのもね?

少し時間を潰して帰ろうかと思っただけだったんだけど、

波の音が心地よくて、乾いた風も心地よくて。

浜辺は思ったより明るく、海の向こうに船の明かりも見える。

浜へ寄せる波も、その輪郭を白く浮き上がらせ、空に輝く月は明るく、

なんだかとっても幻想的。

昼間の賑やかさとは打って変わって、誰もいない浜辺は怖いくらい綺麗だった。

ビーサンをちょっと濡らしてみる。

昼間より水温が下がってるのかと思ったら、そうでもない。

「ちぇっ。」

声に出す気はなかったのに口から漏れる。

俺だって、失恋の痛手から解放されたかったのに。

俺は波打ち際の水をビーサンで蹴りながら歩いていく。

バチャッ。

バシャンッ。

音をさせて歩いていくと、ちょっと憂さも晴れてくる。

しばらくそうして歩いていくと、遠目に人がいるのがわかる。

こんな時間に一人で浜辺?

俺みたいな珍しい人がいるもんだと、速度を緩めず近づいていく。

その人はじっと遠くの空を見ている。

見ている?

何か考えてる?

月明かりに照らされた顔が見えるくらい近づく。

茶色かかった髪(夜目なので確信は持てない)が、風に揺れて柔らかそう。

通った鼻筋が影を作る綺麗な横顔。

幻想的な夜の浜辺のせいかな?

月明かりに映し出される横顔は、この世のものとは思えないほど綺麗で、神秘的。

ちょっとゾクッとするほどで……。

見蕩れる……。

ただ、美しいと思ったんだ。

美しい風景を見て感動するみたいな……。

すると、波の音と一緒にその顔がこっちを向いた。

ドキッとした。

ドキッとして動けなかった。

なのに、心臓だけバクバクと音を立てる。

波の音が静かに繰り返す。

俺が目を逸らすこともできず、ただ呆然と見つめ続けると、

ふにゃりと笑う顔を、月明かりが浮かびあがらせる。

バクンと、心臓が大きく鳴った。

「何?」

その口が動く。

「え……。」

俺は何も言えず、動けず……。

波の音だけが二人の間を埋めていく。

「なんか用?」

「あ……いや……。」

俺は頭を掻いて下を向く。

その顔の足元が目に入る。

ビーサン……男……なんだ……。

そいつの足の形は紛れもなく男で、俺は改めてそいつの顔を見る。

ただ綺麗だと思って見ていた時には、考えもしなかった。

不思議なことに。

そんなのを超越したところで綺麗だったんだよ。

ああ、気づいてみれば確かに男のもので……。

ちょっとがっかりしたような、そんなことどうでもいいような……。

「……この辺の人?」

俺の声にホッとしたように笑うと、そいつは海を見て答える。

「ん?……うん。地元。」

「何してたの?」

「何も……。海、見てただけ。」

「……ふうん。」

俺らは並んで海を見つめた。

そいつの隣で並んで見る海は、そいつの目を通して見てるみたいで、

より綺麗で幻想的な光景に見えた。

「明日も来る?」

俺が聞くと、そいつは振り向かずに答える。

「わかんねぇ。」

そいつの横顔はやっぱり綺麗で、これが月夜の幻想なのか、本当に綺麗なのか、確かめたくなった。

「俺、桜井翔。……名前……なんて言うの?」

「名前?……必要?」

そいつがクスッと笑って、俺を見る。

「つ……次に会った時、よ、呼べないじゃん。」

必要な理由が思いつかず、俺はしどろもどろで答える。

「呼ばなくてよくね?」

そいつはまたクスッと笑う。

「呼んでもいいじゃん。」

そいつはちょっと考えて俺に背を向ける。

「次に会ったら、教えてやるよ。」

道路に向かって歩き出すその姿を、月明かりが照らす。

ちょっと猫背なその背中を、風が撫でていく。

「絶対教えてもらうかんな!」

俺は、波の音に負けないよう、背中に向かって叫ぶ。

そいつの背中が笑っているのがわかった。

すぐに背中は闇の中に消えていって、波の音だけが俺を包む。

俺は、そいつがいた辺りを見つめ、さっきの光景を思い出す。

月明かりに照らされた、神秘的な横顔を。










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