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「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the team (5人)

テ・アゲロ  the team ④ -7-

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道明寺楓はいつものボディガードと共に、駅の改札を抜ける。

今日は平日の午前中ということもあって、階段を下りる人影もほとんどない。

夫が亡くなって50年以上、一人で不動産屋を切り盛りしてきた。

苦しい時代、物の少ない時代を経験してきた楓にとって、

節約はもはや生きること、そのものに他ならない。

当然、歩けるうちは車など使う必要がない、と思っている。

ホームに下りると、ちょうど電車が入るところだった。

どこから見ても、普通の、その辺にいるお婆さんだ。

質素な黒っぽいワンピースに短い髪。

肩から提げる鞄も、ちょっと小さめの布のトートバッグ。

楓が電車に乗り込むと、背の高い、いかついボディーガードも続く。

電車の中もやはり空いていて、席もいくつか空いていたが、

楓は座らず、手すりにつかまる。

ボディーガードもそれに倣って、楓の隣に並ぶ。

「今日はいつものとこ以外に行くところもないから、早く帰れるね。」

楓が前を向いたままボディーガードに話しかける。

「でしたら、帰りに病院に寄りませんか?」

「どうして?」

「ここの所、少し疲れやすくなっているように見えます。」

「ふん。そのくらい、食べて寝てれば治るわ。」

楓が聞く耳をもたないのはいつものこと。

ボディーガードは小さく溜め息をついて、窓から外の景色を眺める。

電車は陸橋にさしかかろうとしていた。

この陸橋で、いつも電車は大きく揺れる。

ボディーガードは楓の体が揺れても大丈夫なように、少し、楓の後ろに体を重ねる。

ガクン。

いつものように大きく揺れる。

楓の軽い体は、電車と共に大きく傾き、トートバッグが後ろの人に当たる。

ボディガードに支えられ、転ぶことなくやり過ごしたが、楓は振り返ってチラッと見る。

男が二人並んで立ち、後ろに立っていた色白の男は、ニコッと笑って気にする風もない。

楓は次の駅で乗り換える為、ドアの近くに移動した。

ボディーガードは一瞬、周りを見回したが、いつもと変わらぬ車内を確認し、

楓の後ろに続く。

次の駅に着く寸前、楓がバッグの中を確認すると、あるはずの財布がなくなっている。

楓は振り返って、ボディーガードに目配せし、先ほどの色白の男に目をやる。

ボディーガードはそっと色白の男に近づき、腕を掴む。

「な、何するんですか!」

男が声をあげると、ボディーガードは無言で男をドアの近くまで引っ張っていく。

「ちょ、ちょっと!」

男は腕を持ち上げられ、引きづられるように楓の隣に並ばされる。

そこで、スーッとドアが開き、ボディーガードは男をホームへ下ろす。

「何するんですか!」

男が怒りに満ちた顔でボディーガードを見据えると、

ボディーガードは、男が肩から掛けていた鞄を掴んだ。

「ちょ、俺の!」

男は鞄を取り返そうとボディーガードの腕を掴んだが、ビクともしない。

ボディーガードは鞄を開け、ガサゴソと中を探る。

しかし、楓の財布は見つからない。

「なんなんですか、いったい!」

男はボディーガードから無理やり鞄を奪い返し、それを抱きしめる。

「あんたじゃないのかい?」

「な、何が?」

「私の財布を取ったのさ。」

「ち、違います。私じゃない。」

男は顔を左右に思いっきり振る。

「おかしいね……。電車に乗る前は確かにあった。

 電車の中で私に近づいたのはあんただけ。あんた以外にないんだけどね。」

今度は、ボディーガードが男の体を探っていく。

「な、止め……!くすぐったい!」

男は身を捩って抵抗する。

最後に男のジーンズの後ろポケットを確認して、ボディーガードは楓に向き直る。

「見当たりません。」

「そんなはずは……。」

楓が腕を組むと、少し先の階段を下りる猫背の男が目に入る。

「待って。あの男もさっきの電車に乗っていた……。

 この男の隣にいたはず。」

楓は色白の男をじっと見つめる。

男はビクッと体を竦め、視線を外す。

「あの男を追って!」

楓が腕を上げ、猫背の男を指差すと、ボディーガードは走り出した。

楓は残った色白の男の手を掴む。

「あんた、名前は?」

「どうして名前……言わなくちゃ…いけないんですか……。」

男はおどおどと答える。

「いいから、お言い!」

楓の剣幕に、男は怯えるように鞄を抱きしめた。

「に、二宮です。」

「ふうん。あの男とグルなのかい?」

「グルって……。」

「どうなんだい!」

「あの男って言われても……。」

楓は二宮をじっと見つめ、次に、掴んだ二宮の手を開いて指を観察する。

「プロってわけじゃないみたいだね……。」

「……プロってなんの……。」

楓は携帯を取り出すと、どこかへ電話を掛ける。

「私だよ。今すぐ、2、3人連れておいで。……とやかく言わないで、すぐだよ!」

楓から目を逸らした二宮は、眉間に皺を寄せ、そっとメールを打った。










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