「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the team (5人)

テ・アゲロ  the team ④ -3-

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「ちゃんと調べてきました?」

二宮が聞くと、大野は手にした煙草を唇へ運ぶ。

「調べたよ。ニノの言う通りに。」

大野は煙草を咥えたまま、右の足首を左の膝の上に乗せ、足の裏を掻くと、

面白くなさそうに窓の外に目を向ける。

「道明寺 楓。83歳。不動産屋を営む旦那を早くに亡くし、32歳で旦那の跡を継ぐ。

 すぐにその才覚を発揮し、めきめきと会社を大きくしていく。今じゃ、資産数十億。

 がめつさとケチさから、町内一のきらわれ者。

 独身、子なし。一人暮らし。ボディーガード一人。」

大野はぼそぼそ報告すると、二宮に視線を移す。

「で、間違いないんだろうな。」

「間違いありません。私、実はその現場に居合わせてたんですから。」

二宮はニヤリと笑う。

「居合わせた?」

大野も興味を持ったらしく、身を乗り出して右の膝に肘をつく。

「そうです。なけなしのこの事務所の貯金を下ろしに行ったでしょ?先週。

 その時、すれ違ったんですよ。依頼人と、近所でうわさのけちんぼ婆さんと。」

二宮は、置かれたばかりのお冷を口に運ぶと、ゴクリと飲み込む。

「たぶん、その時、失くしたんでしょうね。財布。慌ててましたから。

 私の顔も覚えてなかったようですし。」

「ウチで打ち合わせ?めずらしいね。」

相葉が大野の前にお冷を置く。

大野と二宮は顔を見合わせ、お冷を口へ運ぶ。

「仕方ないんです。貧乏だから。」

「貧乏?大野さんとこが貧乏なんて、今に始まったことじゃないでしょ。」

相葉がケラケラ笑いながら、おしぼりを大野の前に置く。

「……訂正します。超ド貧乏だから、仕方ないんです。」

「はぁ?」

相葉が二宮の顔を見ながら、首を捻る。

大野は煙草を灰皿にねじ込み、丁寧におしぼりを広げると、顔をゴシゴシと拭いていく。

「相葉ちゃん、気持ちいい~。」

冷たいおしぼりが、大野の顔を冷やし、冷房の利いた涼しい風が大野の肌に当たる。

「そして、今日は暑い。30度を超えています。どんなに窓を開けても、

 エアコンのないあそこで打ち合わせなんて、できたもんじゃない。」

二宮は相葉が手にしたままでいるおしぼりを奪い、ビニールを破く。

「……ということは……ご注文は?」

大野と二宮は声を合わせる。

「スマイルで!」

相葉はきょとんとした顔で、ニコニコ笑う二人を見つめる。

ニコニコし続ける二人の顔を交互に見ると、相葉が大声を上げる。

「注文ないなら帰れ~!」

相葉の怒鳴り声と同時に、カランコロンとドアが開く音がする。

「ただいま~。」

小春と太郎が仲良く二人で入ってくる。

「どうしたの?雅紀君?」

小春と太郎が相葉の顔を見て、びっくりしている。

「な、なんでもないよ。小春ちゃんには関係ないから。」

相葉は二人の背中を押してカウンターへ促す。

二人は重そうなランドセルをカウンターの上に下ろすと、椅子に腰掛け、

相葉は、二人の前にジュースを差し出す。

「雅紀君、おいらにもコーヒーとチャーハン。」

大野が、小春の口調を真似して強請る。

「客じゃない人に出すコーヒーはありません。」

相葉にピシャリと言われ、仕方なく大野は二宮を見る。

「今回の依頼が成功したら、そんなこと言わせませんからね!」

二宮は相葉に向かって、大声でそう言うと、大野に向き直る。

「で、問題はボディーガード……。」

「でもさ、本当にこんな金持ちが、拾った財布使うか?」

「あの婆さんなら使いますよ。そうでなきゃ、あんなに貯めこめるわけがない!」

「それでもなぁ。」

大野は手帳からお婆さんの写真を取り出す。

「大野さん、いいですか?ケチは使えるものなら、なんでも使うんです。

 そうすればお金を使わない。使わないから貯まる。」

二宮がいちいち指でお婆さんの写真を叩く。

写真のお婆さんは黒い長財布を手にしている。

「そんなもんかなぁ。」

「私が言うんですから、間違いありません。」

「あ、このおばあちゃん、知ってる~。」

いつの間にか、近くに来ていた小春が写真を取り上げ、隣の太郎に見せる。

「うん。もったいないお婆ちゃん。」

太郎もにっこり笑う。

「もったいないお婆ちゃん?」

大野が聞き返すと、小春もにっこり笑う。

「うん。いつも、もったいない、もったいないって言ってる。」

「ほらね。そうでないとお金は溜め込めないんですよ。」

二宮が、ふふんと鼻を鳴らす。

「もったいないお婆ちゃん、どうしたの?」

小春が小首を傾げて大野を見る。

「うん。ちょっと悪いことしちゃったから、懲らしめてあげようかと思ってね。」

「ふうん、そうなんだ。……お婆ちゃん……痛くする?」

小春の顔を見て、二宮が優しく笑う。

「大丈夫ですよ。お婆ちゃんを傷つけたりしません。

 今回は私、全面プロデュースですから。」

二宮が片頬を上げ、ニヤリとすると、お冷をゴクッと一口飲む。

「ほらほら、小春ちゃんと太郎君はこっち。ね。」

相葉が二人の背中をクルッと反転させる。

「じゃ、ちょっと相葉さんにも手伝ってもらおうかな?」

「な、なんで俺が!」

「ウチの家賃が払えるかどうかの瀬戸際なんですよ。払えなくてもいいんですか?」

「そ、それは困るけど……。」

相葉が眉を寄せて困った顔になると、二宮はしめたとばかりに言い放つ。

「では、作戦会議です。」

二宮は相葉の腕を引っ張り、隣に座らせる。

「わぁ~!ずるい雅紀君!小春も作戦会議~。」

「僕も~。」

小春と太郎も大野の隣に座る。

大野は、はぁ、と溜め息をつき、二宮を見る。

二宮は困った様子もなく、作戦会議を始めていった。










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