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「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the team (5人)

テ・アゲロ  the team ④ -2-

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「あ~!全然足らない!」

二宮が領収書を手にパソコンを見つめる。

「仕方ないだろ。客が来ないんだから。」

大野はデスクに足を乗せると、ラジコンヘリを飛ばす。

ラジコンのジィーーーという音が、事務所中に響き渡る。

「だったら、客、探してきてくださいよ。」

「はぁ?なんでも屋が、御用聞きなんて聞いたことない。

 依頼の大半は世間に秘密にしたいような内容なんだぞ。

 なんでも屋ぁ~、なんでも屋。なんでもやりま~す、秘密守りま~す、

 なんて、外周れるか?」

大野が面白そうに、竿竹屋の声色を真似る。

「ああ、この間の家出猫、家に帰らなければなんとかしのげたのに!」

二宮が天井を仰ぐと、大野の飛ばしたヘリが、二宮の上で旋回する。

「ウチが貧乏なのはいつものことだろ?

 突然、巨額の遺産が舞い込んでくるとか、宝くじが当たるとかしない限り、

 無理なんじゃない?」

大野はクスクス笑いながら、ヘリを二宮の上で、ホバーリングさせる。

二宮はイライラをぶつけるように、手でヘリを払いのけようとする。

「だったら、あなたのその見た目で、もうすぐくたばりそうな金持ち、

 捕まえてきてくださいよ。」

二宮は、ヘリに向かって、くしゃくしゃに丸めた紙を投げつける。

「んなの無理に決まってるだろ。

 それより、ニノ、実は金持ちの隠し子とかないの?」

紙は当たることなく、床に転がり落ちる。

「あるわけないでしょ。あったとしても、それをこの事務所に貢ぐわけない。」

大野はヘリを、自分のデスクの上にゆっくり着地させる。

「はぁ~、とりあえず節約です。大野さん、今月はコーヒーもなし。

 飲みたければ、自分で豆、買ってください。電気もつけません。

 もちろん、エアコンもダメ。」

そう言いながら、二宮は立ち上がり、自分の椅子を抱えると、エアコンの下に持っていく。

「大野さん、足、支えて。」

二宮は靴を脱いで椅子の上に立つ。

「椅子、回るから、早く!」

二宮に睨まれて、大野は仕方なく立ち上がり、

デスクの上にラジコンのコントローラーを放る。

二宮が、早くと両手を巻いてジェスチャーすると、大野は二宮の膝を抱きかかえる。

「絶対しっかり持っててくださいね。」

二宮は埃をかぶったコンセントを力いっぱい引っ張る。

なかなか抜けないコンセントを無理やり引き抜くと、勢いで椅子が動く。

「うわぁ~っ!」

二宮が慌ててバランスを取り、大野が必死で足を支えた時、玄関のチャイムが鳴る。

「え?お客さん?」

二人は玄関に視線を移す。

ドアがゆっくり開くと、背の低い、小太りの女性が顔を出した。

「こ、こんにちは……。ここ、なんでも屋さんですよね?」

「はい。必ず成功させるなんでも屋です!」

二宮は左手で応接室を指し示し、極上の営業スマイルでにっこり笑った。



「北海道の大学に通う息子の、家賃を振り込みに行って……。」

小太りの女は、縋る様な目で話し始める。

「財布を……なくしてしまって。」

大野の向かいに座るその女は、小さく溜め息をつく。

沼田佳代子と名乗る女は、年のころは50代くらいであろうか。

ウェーブのかかった髪を肩まで垂らし、Tシャツにジーパンというラフな格好で、

右手を左手でぎゅっと握り込むと、それを見ながら話す。

その顔は疲れきっていて、目の下には大きな隈までできている。

「もちろん、警察にも届けました。でもみつからなくて。」

二宮が佳代子の前にお茶を差し出す。

「それはお気の毒に……。」

二宮はさも同情しているというように、眉を下げる。

「ありがとうございます。」

佳代子は小さく頭を下げ、お茶を手に取る。

二宮はそのまま、大野の隣に腰掛ける。

「中身は諦めています。現金は大して入っていなかったし。

 ただ……亡くなった主人の写真が……。」

佳代子はお茶をすする。

「写真嫌いの主人が、唯一笑ってる写真だったんです。

 それを財布に入れていて、どうしても取り返したくて。」

佳代子は両手で湯のみを握り締める。

「そうですか……。無くしたのはいつ頃なんですか?」

大野はさわやかに笑って佳代子を見る。

「あれは……1週間……ううん、10日くらい前?」

「それでまだ見つかっていないのであれば、もう……。」

大野がそう言うと、隣の二宮が肘でつつく。

「ずいぶん経っているので、見つかる可能性は低いと思いますが……。」

二宮は膝の上で両手を組む。

「何か、手がかりでもあれば……。」

「それが……。」

佳代子はお茶をテーブルに置き、二宮を見つめる。

「この間、財布を見たんです。」

「見た?」

大野が身を乗りだす。

「見たっていうのはどういう……。」

二宮も組んだ手に力を込める。

「はい。昨日のことです。財布を無くした時に、

 後ろに並んでいたお婆さんがいたんですけど、

 偶然、八百屋さんで見かけて……そしたら、そのお婆さん、

 私の財布を使っていたんです。」

佳代子は目を見開いて、唇を噛み締める。

「間違いはないんですか?」

大野は確認するように、ゆっくり聞く。

「もちろん!間違えるわけありません。もう5年も使っている財布です。

 あのお婆さんが私の財布を……。」

佳代子は悔しさで顔を赤くして大野を見つめる。

「その場でお婆さんに言わなかったんですか?」

二宮がそれはけしからんと言う様に、うなずきながら言う。

「言いました。でも……証拠があるのかって言われて……。

 もし違っていたら、警察に行ってもらうってすごい剣幕で怒られて……。

 怖くなって……。

 主人の写真は、財布のお札のところの逆のポケットに入っていて、

 気づかれてないかもしれない。それを証拠にと思ったんですけど……。

 もし、抜かれてたらと思うと言えなくて……。」

佳代子は涙を滲ませ、下を向く。

「お話はだいたいわかりました。

 ただ、財布を取り返しても、見つからない可能性も高い。

 もうすでに捨てられている可能性もあります。

 それでも、ウチに頼めば料金が発生します。」

「ニノ!」

静かに言う二宮の言葉を大野がさえぎる。

それを手で制して、二宮が続ける。

「それでも構いませんか?」

「は、はい。財布さえ取り戻してくれれば……。

 主人の写真と一緒に……宝くじが一枚入っています。

 ……一億円の……。」

「一億円!」

大野が大声を上げる。

「……それも、捨てられてるかもしれませんけど……。」

佳代子は大きな溜め息をつく。

「失礼ですが、どうしてすぐ換金しなかったんです?」

二宮が佳代子の顔を覗き込むように、厳しく聞く。

「……怖かったんです。一人で行くのが……。

 それで、息子が帰省した時に一緒に行ってもらおうと思っていて……。」

「無くさないように、財布に入れて、肌身離さず持っていた。」

二宮の声に、生気がみなぎる。

「そ、そうです。今まで財布を無くしたことなんてなかったから……。」

佳代子は泣きそうな顔で二宮を見つめる。

「……わかりました。ではこうしましょう。

 宝くじが見つかったら、その一割、みつからなかったら、通常料金で。」

二宮が小首を傾げて優しく笑う。

「ええ、もちろん、結構です。宝くじが見つかれば、一割なんて……。」

佳代子が縋るように二宮を見つめる。

「わかりました。お引き受けしましょう。」

二宮が佳代子の手を両手で握る。

「ニノ!」

大野が呆れたように溜め息をつくと、二宮はニヤッと笑った。

「では、詳しい話を……。」

二宮は佳代子の話を慎重にメモしていった。










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