Welcome to our party ⑳

その日の5人の収録はいつものように進んだ。

翔が回し、和也が突っ込む。

楽屋でも特に変わった雰囲気もなく、智の隣で和也がゲームをし、

翔が新聞を広げる。

和也から回してもらった漫画を笑いながら読む雅紀。

ヘッドフォンで音楽を聴きながら、目をつぶる潤。

智はみんなを見回し、不思議な気がしてくる。

みんな、誰かが好きなんだ……。

おいらは……。

何もできない自分が歯がゆい。

それでも、この5人でいることの大切さを思うと、自分から何かすることは

考えられなかった。

「ダメだな……おいらは。」

「え？何か言いました？」

和也がゲームから目を離さずに智に聞く。

「……なんでもない……。」

「何？元気ないの？」

「そういうわけじゃ……。」

和也は顔を上げ、ニヤニヤ笑う。

笑いながら、智の脇に手を伸ばす。

「やめれって。」

智が体をもぞもぞさせて、和也の手から逃れようとする。

それでも和也の手はもぞもぞと智の体を動き回り、指先が乳首に触れると、

智が変な声を出す。

「いやん。」

「あははは。いやんって何それ。」

気づけば、みんなが智を見ている。

「はいはい。イチャイチャするのもその辺にして。」

潤が笑いながらヘッドフォンをはずす。

雅紀はそんな二人見て、笑って、でも、複雑な想いでいることに気づいて、ハッとする。

潤と翔を見てみると、潤は笑いながら二人を見、翔も笑っていたが、目だけがやけに鋭い。

翔ちゃん……。

そんな雅紀に気づいた和也が、隣の智を見ると、智も複雑な顔で笑った。



いつものように収録が終わると、翔は約束があると先に楽屋を出た。

4人で帰ろうと、楽屋を出たところでスタッフに呼び止められる。

雅紀と潤は取り残しがあると言われ、少し残ることになった。

待っているのもなんなので、智と和也だけ先に帰ることにした。

全員で収録のこの日は食事当番はない。

マネージャーの車に乗り込むと、和也は智の隣に座るのと同時に智に聞く。

「何か食べて帰る？」

「ん……あんまりお腹空いてない。」

「そうですか……じゃ、食べにいきますか。」

「だから、お腹空いてないって。」

智の言葉も聞かず、和也は続ける。

「う～ん、ラーメン？」

「ニノ～。」

和也はクスクス笑いながらマネージャーにラーメン屋の名前を告げる。

「見たら食べたくなりますよ。あなた、何も食べてないでしょ？」

「そ、そんなことないよ。ちゃんとみんなと一緒に食べたじゃん。」

「だったら、もうお腹空いてるはず。」

智は、クスクス笑う和也を見て力が抜ける。

やっぱり敵わない。

見てないようで見ててくれる和也に、胸の奥がキュンと締め付けられる。

いつものように体を密着させ、和也がしゃべる度に伝わる振動に、

智は心地よさを感じる。

「どうしたんですか？」

「え？何が？」

「突然黙るから。」

「んふふ。なんでもないよ。」

「なんでもない？ほら、言えよ。」

和也はまた智の脇腹をくすぐり始める。

「だから、やめれって！」

智は体を捩って抵抗するが、和也はなかなかやめてくれない。

「何考えてたの？」

「なんでもないって。」

「スケベ。」

「スケベって……。」

「言わないから！」

ラーメン屋に着くまで、和也は智をくすぐり続けた。

くすぐられてお腹が空いたのか、智も一人前をペロッと平らげ、和也に笑われた。



マネージャーに送ってもらい、家に着くと順番にシャワーを浴びる。

先に浴びたのは和也だった。

二人は5人の中でもシャワーを浴びる時間が短い。

智が、リビングのソファーでビール片手に待っていると、すぐに和也が出てきた。

この間の朝とは違い、ちゃんとＴシャツとパンツを着ている。

濡れた髪が艶かしくて、智は一瞬ドキッとする。

「いいよ。入って。」

和也は智の隣に腰掛け、ガシガシと髪を拭き始める。

「ばっ！水が飛ぶ。」

智が顔を背けると、和也はおもしろがって、智に向かって飛沫(しぶき)を飛ばす。

「や、やめっ！」

和也を止めさせようと、智が闇雲に腕を振る。

和也も止められまいとそれを避ける。

そんな風にふざけていると、バランスを崩した和也の上に智が覆いかぶさる格好になった。

和也はそれでもクスクス笑い続ける。

「……ニノ。」

「なんですか。」

まだ髪を拭きながら、和也は笑い続ける。

風呂上りの和也の体は仄かに温かく、体の密着した部分が緊張する。

智はＴシャツの襟元から見える白い肌から目が離せなくなった。