「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the fake (5人)

テ・アゲロ  the fake ② -6-

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「お前が来るから余計ややこしくなっただろ!」

「ははは。まさかあそこで会うとはね。運命を感じたよ。」

櫻井は笑ってグラスを口にする。

「仕事であの辺行ったから、近くだなと思って、呼び出そうと思ったんだよ。

 クククッ。そうしたら、皆さん集まって何かしてらっしゃる。

 事務所、ネットで調べて正解だったね。」

大野はブスっと酒を飲み続ける。

「しかも愛しのハニーがその中心にいる。これは声を掛けないわけにはいかないでしょ?」

「うるせぇ。だからってな!」

「いや、あなたのとこの優秀な二宮さんにも会えたし、

さわやか好青年のマスターにも会えたし、お見合い相手にちゃんと謝罪できたし、

いやぁ、ほんと、よかったよ。」

櫻井は楽しそうに煙草を咥える。

大野は面白くなさそうにグラスを口に運ぶ。

「あなただってよかったでしょ?おかげであの娘、あなたのこと諦められたんだから。」

「はぁ?お前が来なくたって、なんとかなってたわ!」

「説明だって、あなた、自分でできたの?」

「できたわ!」

「そうかな?」

「そうだよ!」

大野はグラスに残る最後の酒をあおると、マスターにグラスを差し出す。

「おかわり!」

マスターはにっこり笑ってグラスを受け取る。

「そうそう、あなたのとこの優秀な二宮さんは俺のこと、ちゃんと調べたの?」

櫻井は煙草を咥え、火を点ける。

「……調べたよ。」

「で?どうだった?」

櫻井が口から煙を吐き出すと、大野はジャケットの内ポケットを探る。

「ちゃんと出てきたよ。お前の顔写真。お前が正真正、櫻井翔でした。」

体中のポケットを叩いてみるが、何も入っていない。

「ひどいよね?付き合ってる恋人を疑うなんて。」

櫻井は片方の口角だけ上げて笑う。

「だから!その付き合ってる発言、どんだけ大変だったと思ってる!」

「大変?なんで?本当のことなのに?」

櫻井が可笑しくてしょうがないというように、手で口を覆って笑う。

「ニノには『そんなことして遊んでるから!』って怒られるし、

 相葉ちゃんには興味津々でジロジロ見られるし、

しおりさんに至ってはパニックだから!」

「あははは。そりゃそうだよね?あなた、告白されたんでしょ?

好きになった相手がゲイだったなんて。」

櫻井は笑いを堪えきれず、下を向いて、クックと笑う。

「その上、本物の見合い相手まで現れてな?」

「会った見合い相手と顔が違うし?」

「そうだよ!」

櫻井は大野に向かって、大声で笑う。

「笑い事じゃないし!」

大野はイライラした様子で櫻井の煙草の箱を掴むと、1本取り出し口に咥える。

「まぁ、いいじゃない。丸く収まって。」

「収まってないわ!」

櫻井は、大野の前でカチッとライターを点ける。

大野はその火で煙草に火を点けると、大きく煙草を吸い込んだ。

マスターがおかわりのグラスを大野の前に置く。

「もう、そろそろいいだろ?……あの女もお前のこと、忘れてるよ。」

大野が吐き出された煙を見ながら、独り言のように言い、グラスに手を添える。

「何が?」

櫻井は悪びれる風もなく、笑いながら大野を見る。

「だから、付き合ってるって……。」

「ああ、それ?俺さ、結構気に入っちゃってんだよね。あなた。」

「はぁ?」

「だから、せっかく宣言もしたことだし、このまま付き合っちゃおうかなって。」

櫻井は煙草を持つ手を頬に当て、愛おしげに笑う。

「おまっ、何言ってんの?はぁ?」

大野が目をむいて怒ると、櫻井はカウンターの上に乗っていた大野の手を掴み、

耳元に唇を寄せる。

「相性もいいみたいだしね。」

低く、甘い声で囁くと、椅子から降り、大野を引っ張る。

「おおっわぁっ!」

大野は急に引っ張られ、バランスを崩して櫻井の胸に寄りかかる。

「さて、行きますか?」

櫻井はそのまま、大野を抱きかかえるようにして歩き出す。

「ちょ、ちょっ!ま、待てって!どこ行くんだよ!」

大野はもがくが、櫻井の腕は外れない。

「決まってるでしょ?恋人同士が行く場所。」

櫻井はさわやかに笑う。

「ば、ばか!またニノに怒られんだろ!この間だって、それで朝起きれなくて……。」

「大丈夫。起こしてあげるから。」

櫻井は大股でスタスタ歩いていく。

「あ、マスター、おあいそ!」

大野は身を捩ってマスターを見る。

「頂戴しております。」

マスターは丁寧に会釈をし、二人を見送る。

櫻井が大きくドアを開け、大野を引きずるように店を出る。

「え?おい!マジか!」

大野の声を最後に、ドアはパタンと閉まった。

マスターは閉まるドアを確認して、グラスを磨き始める。

静かな店内は、ジャズと煙草の煙、男女の低い笑い声が満ちている。

一番端のボックス席から、クスクス笑う声が聞こえる。

以前、大野がターゲットを待っていたボックス席だ。

「なんだ、あいつら面白しれぇ。」

彫りの深い顔立ちの青年が、出入り口のドアを見つめて笑った。










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