ナイスな心意気(5人)

ナイスな心意気 ⑨-13

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その日の朝の散歩には案の定、ショウもついてきた。

ショウは俺の散歩などお構いなしで、人間のサトシにだけ集中していた。

いや、正確には、人間のサトシに声を掛ける人間にだけ、目を光らせていた。

そのおかげで、昨日のようにみんな連れ立ってドッグランに行くことはなかったけど、

人間のサトシは終始苦笑いを浮かべてる。

ちょっと可哀そう。

もちろん、サトシも一緒にやってきて、ショウの胸で丸くなっている。

俺は、昨日の大きなトラ猫が現れるんじゃないかとビクビクだったけど、

今日は現れなかった。

あのトラ猫は要注意。

サトシの心を掻き乱す。

サトシはちょっと、期待してたかな?

がっかりしたような素振りはなかったけど、ずっとショウの胸から降りない。

ドッグランに着くと、知念さんが待ってましたとばかりに、すぐにやってきた。

「サトシさん、おはようございます。」

「おはようございます。」

人間のサトシは優しい笑顔で挨拶する。

「おはようございます。知念さん。」

ショウは、思いっきり作り笑いを浮かべ、人間のサトシを後ろに隠すように挨拶する。

まったくもって子供だ。

サトシはそんなやりとりに興味がなさそうに、他の犬達が集まっているところで

ショウの胸から降りる。

すかさず、ちー君がサトシの前に飛び出ると、サトシの鼻に鼻を近づける。

俺は鼻でちー君を追っ払って、一睨みしてやる。

ちー君は俺なんか全然怖くないというように、尻尾を振り続ける。

「サトシ君、一緒に遊ぼう!」

サトシはちー君に、その大きな目を向けると、首を傾げて前足で顔を洗う。

「おいらと何して遊ぶ?」

うぉ~!そんな顔でそんな仕草で、そんな可愛い声でそんなこと言う?

言っちゃう?

ほら、見てみろ。ちー君の目がまたハートに……。

「サトシくぅ~ん!」

ちー君の甘えた声……!

俺はサトシの前に立ちはだかる。

「ちー君?サトシに用事がある時は俺を通してくれるかな?」

言ったと同時にサトシが俺の鼻を引っかく。

「いつからショウちゃん、おいらのマネージャーになったの?」

「え……今日から?」

サトシが俺の背中に飛び乗り、頭を蹴って飛び降りる。

「おいらは誰にも指図されない!」

俺が頭を押さえている間に、サトシの回りに犬達が集まってきた。

「サトシって言うの?」

「綺麗な毛並みだね。」

「何して遊ぶのが好き?」

次々犬達が鼻を近づけていく。

「うるさ~い!」

サトシはキッとみんなを睨むと、人間達の間を走り抜け、塀の上に駆け上った。

「おいらは屋根の上が好き。来れるやつと一緒に遊んでやるよ!」

そのまま人間達に日陰を作っている屋根に飛び乗った。

屋根の上で、犬達を見下ろすと、大きな欠伸をして丸くなる。

犬達も、しばらくサトシを見ていたが、諦めてそれぞれ遊び始めた。

ああ、もちろんサトシにはリードが着いている。

ふと、人間達を見ると、人間達もショウと人間のサトシを取り囲んで騒がしい。

「サトシさん、今日も会えて嬉しいです。」

知念さんがショウを押しのけて、人間のサトシの前に出る。

ショウが知念さんを押しやろうとすると、知念さんの方がショウより全然小さいのに

踏ん張って、人間のサトシの前をキープする。

知念さん、諦めてないどころか負けてない。

「何か、ショウ君のことでわからないこと、ありませんでしたか?

 僕でお役に立てるなら、なんでも聞いてください。」

あろうことか、人間のサトシの手を両手で握り締めている。

これには外面のいいショウも、目を三角にして手荒く知念さんの手を払いのける。

「大丈夫ですよ。ちゃんとマサキに聞いてますから。」

ショウが上から威嚇する。

「私はサトシさんに聞いてるんです!」

「昨日の、忘れたわけじゃないですよね?」

ショウの声が怒りを抑えてるせいか、いつもより低く、唸ってるみたいだ。

「忘れてませんよ。月夜にサトシさんに会えるなんて、

 こんな素敵なこと忘れるわけがない!」

「そこじゃない。サトシには俺がいるってことだよ。」

「今はね?この先どうなるかなんてわからないじゃないですか?」

二人を見ていた人間のサトシは、大きな溜め息をついて間に入る。

「ここにはショウ君とサトシ君の為に来たんだよ。

 そんな声出してたら、ショウ君達が怖くなっちゃうよ。ねぇ?ショウ君。」

人間のサトシが俺の頭を撫でる。

俺はその手をペロッと舐め、もっと撫でてとねだる。

「そうでしたね。すみません。大人げなかった。」

知念さんは穏やかな声でそう言って、ちー君の頭を撫でる。

ショウはまだふくれっ面のまま、サトシの肩を抱く。

「ちー、ちょっと遊ぼうか?」

知念さんはフリスビーを取り出して、ドッグランの真ん中へ向かう。

「サトシさん、ウチのちーはとっても上手いんですよ。見ててください。」

知念さんがフリスビーを投げると、ちー君が走り出し、飛び上がってキャッチする。

小さなちー君と同じくらいある大きなフリスビーを、軽々とキャッチする。

「うわぁ、すごい!」

人間のサトシが、手を叩いて褒めると、知念さんは今度は腰の後ろから高く投げ、

ちー君はそれを体を捻ってキャッチする。

「すごいすごい!知念さんもちー君もすごいね。」

人間のサトシが知念さんを褒めるのが面白くないのか、

ショウがムスッとしたまま知念さんを見てる。

知念さんは、いくつか技を見せ、人間のサトシのところに戻ってきた。

「すごいんですね。知念さんとちー君。」

人間のサトシがちー君の頭を撫でる。

ちー君も人間のサトシの匂いを嗅いで、尻尾を千切れんばかりに振る。

でも、ちー君はサトシを忘れていたわけじゃない。

「サトシ君、どうだった?僕、君に見せたくて頑張ったんだよ。」

ちー君がキャンキャン吼える。

サトシは屋根の上から微笑んで、

「ちー君、小さいのに運動神経いいんだね。使える筋肉。」

最後、俺を見て笑った。

サトシ、俺のだって使える筋肉!

どうすんだよ、ショウ!サトシも人間のサトシも

知念さんとちー君に持ってかれちゃうよ!

俺がショウを見上げると、ショウと目が合った。

「俺らもやるか?」

ショウは知念さんからフリスビーを奪い取ると、俺を呼んだ。

「ショウ、来い。」

俺はショウの隣に走った。

不本意だけど、ショウと手を組む。

サトシと人間のサトシの視線を黙ってちー君に渡すわけにはいかない。










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