ナイスな心意気(5人)

ナイスな心意気 ⑨-12

 ←Love so sweet ㊽ →ナイスな心意気 ⑨-13

俺らは足を洗われて、サトシ達がお風呂から出るのを待つと、ケージに入れられた。

今日は大人しくここで寝ろってことだ。

別にそれでもいいけど……。

人間のサトシがいじめられなければ。

どうやら昨日のも、いじめられてたわけではないようなので、

俺はケージで寝ても、まぁ構わない。

でも、俺はサトシのベッドだ。

唯一『特別』と言われたその役目を、俺は果たさなくていいのだろうか?

「おやすみ。」

人間のサトシは、俺とサトシにすまなそうにケージの扉を閉める。

ショウは当然というように、上から俺らを見下ろしている。

昨日と同じで小さな明かりだけ点けて、人間のサトシとショウは寝室に入っていく。

しばらくして、やっぱり昨日と同じ声が聞こえる。

「は……あんっ……ショ………今日は…やめよ?」

「ダメ。俺、今俄然やる気満々。明日の散歩にもあいつが現れるんだろ?

 サトシは俺のものだって、体中にキスマーク付けたいくらいなのに。」

「そんな……んっ……はぁっ……。」

「……サトシだって……その気になってるよ。」

「……意地…悪………あ…んっ……。」

……ショウ、あんまり意地悪するなよ。

俺は片耳を上げて、寝室の方をそっと見る。

その後も人間のサトシの声は、途切れ途切れに聞こえてくる。

俺は隣の、サトシが入れられた籠が気になって、そっちに鼻を向ける。

籠は冷たい壁となって、サトシの気配を全然感じさせてくれない。

「……サトシ。」

リビングはシーンと静まり返り、寝室から聞こえる人間のサトシの声だけが響いてる。

「……サトシ、寝ちゃった?」

…………。

サトシはもう寝てしまったらしい。

俺も前足を枕にして、ゆっくり目を閉じる。

でも、人間のサトシの悲鳴のような声に、ショウの甘い声が重なって、

なかなか寝付けなかった。



ふと、目が覚めると、まだリビングは真っ暗だった。

時間は……わからない。今度、時計の勉強をしておこう。

人間のサトシとショウの姿が見えないから、まだ朝には早いんだろう。

俺はなにげなく部屋の中を見回す。

すると、月明かりで仄かに明るいカーテンの隙間から、サトシの尻尾が垂れ下がっている。

「サトシ。」

俺が声を掛けると、尻尾の先がひょいと動いた。

「サトシ、何してんの?」

俺が小さな声でサトシを呼ぶと、サトシが顔だけ振り返った。

「ショウちゃん、起きたの?」

「うん。……何してんの?」

「……別に……。」

サトシの横顔が光に透けて綺麗。ビロードの毛並みがキラキラしてる。

「眠れないの?」

「…そういうわけじゃない……。」

サトシはまた窓の外に顔を向ける。

俺のところからはサトシの尻尾と背中が少し、月明かりで見えるだけ。

なんだか俺はさびしくなってきた。

サトシがどこかに行っちゃうような気がして、ドキドキする。

俺はケージの扉を前足で引っかいた。

上手くできれば外れるんだけど……。

ガシャン、ガシャンと音が響くと、サトシが振り返って俺を見た。

大きな目で俺を見て、窓枠から飛び降りると、俺のケージまでやってくる。

サトシは何も言わず、俺のケージの留め金をはずす。

ガシャーンと扉が開き、俺は頭を屈めて外に出る。

「ありがと。」

俺はサトシの頬に鼻を寄せる。

「うん……。」

一言言って、サトシはまた窓枠に戻っていく。

俺も窓枠の下まで歩いていく。

「猫の集会、行ってみたい?」

「……別に……。」

サトシは窓の外の家々の屋根を見下ろし、前足で目を擦った。

きっとサトシは行きたいんだ。

そして、行ったらきっと帰ってこない……。

「行かせてあげようか?」

俺が言うと、サトシは大きな目をまん丸にして俺を見つめる。

「……いいよ。」

「行きたいんだろ?」

「そんなことない。」

「じゃ、なんでそんな顔してるの。」

サトシはハッとしたように目を見張り、ヒゲをピクッと上げた。

「別に……。」

「外の世界……もっと知りたいんだろ?違う?」

サトシは答えずに月を見上げる。

俺もサトシと一緒に月を見上げる。

今日の月は本当に綺麗で、もうすぐ沈んで見えなくなっちゃうのがもったいくらいだった。

「行かない……。」

サトシはポツリと言って、窓枠から飛び降りた。。

尻尾を立ててソファーまで歩くと、ソファーの上で丸くなる。

俺もソファーに上り、サトシの後ろに寝そべった。

すぐにサトシが俺の前足の間に入ってくる。

俺はサトシの頭を舐めた。

何度も何度も舐めると、サトシが俺を見て、首を傾ける。

「おいらには、ショウちゃんも、みんなもいるから。」

サトシは俺の前足を枕にして、目を閉じる。

俺はサトシの頭に鼻をくっ付けて、サトシが寝るまで見つめ続けた。



「見て。超~可愛い。」

人間のサトシの声が聞こえる。

「こいつ、猫サトシ、喰っちゃうんじゃない?」

ショウの意地悪そうな笑い声も聞こえる。

「犬のショウ君は紳士。ショウ君とは違うよ。」

「俺、紳士じゃない?」

「紳士だけど……紳士じゃない時もある……。」

「どんな時?」

あ、また人間のサトシに意地悪してる。

ショウの声がそういう声になってる。

俺は顔を上げて、小さく鳴いた。

「静かにしてあげて。サトシが起きちゃう。」

俺に気づいた人間のサトシが首をすくめて、口の前に指を当てる。

ショウに対してそれを見せると、二人はそっとダイニングに移動した。

俺はまたサトシの頭に鼻を当てて目を閉じる。

「あいつら、自由に出入りできんのな。あれじゃ、ケージも意味がない……。」

「いいでしょ。二人でいたいんだよ。」

「二匹ね?……マサキ、知ってるのかなぁ。」

二人の声が小さく聞こえる。

カーテンの向こうは明るくて、もう朝だってわかってたけど、

俺はサトシの匂いに包まれて、眠っていたかった。

もうちょっとしたら起きるから……さ…。










関連記事
スポンサーサイト



総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
【Love so sweet ㊽】へ  【ナイスな心意気 ⑨-13】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【Love so sweet ㊽】へ
  • 【ナイスな心意気 ⑨-13】へ