ナイスな心意気(5人)

ナイスな心意気 ⑨-11

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「顔が怖いよ!せっかくの月夜の散歩なのに。」

「おいらのことしゃべんな。おいらは誰にも指図されない。」

人間のサトシは首に手をやり苦笑いし、サトシはフンッと鼻を上げる。

「みんなで仲良く散歩しようよ、ね?」

人間のサトシがショウを見上げ、ね?と首を傾ける。

「もちろんだよ。サトシ。」

ショウは人間のサトシの髪を撫でて笑ってみせる。

人間のサトシは髪を撫でるショウの手を見て、溜め息をつく。

「失礼ですが、お兄さん、私にサトシさんと会う許可をいただけないでしょうか。

 もっとサトシさんを知りたいと思っています。真剣なんです。」

ショウに向かってまっすぐに言い放つ。

知念さんは怖いもの知らずらしい。

「お兄さん?ふざけるな!誰がお兄さんだ!

お前なんかと二度とサトシを会わせるか!帰れ!」

ショウは昭和の頑固親父のように、胸の前でこぶしを作って手の平に叩きつける。

「お兄さん!」

知念さんもしつこい。

これ以上、ショウを怒らせたら……。

それくらい、犬の俺にだってわかるのに。

「まだ言うか!俺はサトシの恋人だ!」

ショウは人間のサトシの肩を抱き、知念さんに見せ付ける。

その拍子にサトシが人間のサトシの腕から落ちる。

ヒラリと身をかわし、地面に四本足で着地する。

「すばらしい……本当に美しい身のこなし。サトシ君、僕と仲良くなってください!」

飼い主に似て、こいつも全然わかってない。

俺はサトシの前に出て、ちー君に差し向かう。

「サトシは俺のだから。」

首を回して顔をキメ、すごんで見せる。

すかさず、サトシがジャンプして俺の鼻を引っ掻く。

「痛っ!痛いよ~、サトシ。」

俺がせっかくキメて言ったのに、すぐに情けない顔になる。

「おいらは誰のものでもないから!それに『サトシ君』!間違えんな!」

サトシは尻尾をピンと立て、背中を少し丸くする。

「その気の強さもそそられる!ぜひ、僕と友達になってください!」

ちー君がキャンキャン吼える。

「友達?おいらの友達はもう十分。間に合ってるから大丈夫。」

サトシはにっこり笑って、顎を上げる。

「え?そいつがいるから大丈夫ってこと?」

ちー君の尻尾が下がり、つぶらな瞳をウルウルさせる。

「ん?ショウちゃん?ショウちゃんは違うよ。友達じゃない。特別だから。」

「サトシ!」

俺の頬が緩む。

口元も緩む。

サトシに鼻を近づけ、ペロッと舐めようとすると、ヒラリとかわされる。

「おいらの特別なベッド!」

サトシは俺の背中を台にしてショウの胸に戻っていく。

「サトシ~っ!」

俺がサトシを見上げると、サトシはニヤッと笑ってショウの腕で丸くなる。

「俺の……ってことは、サトシさんは同性同士も受け入れられる人……

 ということですね?よかった!」

知念さんが両手を握り締めて、月を見上げる。

「ベッド……ってことはまだ僕にもチャンスはある!」

ちー君がサトシを見上げ、小さくうなずく。

「よくないわ!」

「あるわけないだろ!」

俺とショウは一斉に吼えた。

人間のサトシは呆れてショウと俺を交互に見る。

そして、知念さんに笑いかけ、すまなそうに眉を下げる。

「ごめんなさい。知念さん。そういう意味ならおいら、ショウ君以外は考えられないから。」

ショウの顔がゆっくりと崩れていく。

人間のサトシの言葉がジワジワ染みていくみたいだ。

「サトシ……。」

ショウの顔が今夜の月のように優しく光る。

俺はサトシにも同じように言って欲しくて見上げてみる。

サトシはチラッと俺を見ると、フフンと鼻を鳴らした。

「そうですか……残念です。でも、好きでいてもいいですか?

 そんなにすぐには諦められない……。」

知念さんが悲しそうに顔を歪ませる。

「それは……」

人間のサトシが言いかけたのを、ショウが止める。

「いいですよ。人を好きになる気持ちを、止めることなんかできやしない。

 わかります。同じですから。でも、絶対に譲りませんけど。」

ショウが笑って人間のサトシの肩に腕を回す。

人間のサトシは恥ずかしそうに笑う。

「ありがとうございます。……ではまた明日、ドッグランで会いましょう!」

知念さんは最後に爽やかな笑顔を残して帰っていった。

ちー君は何度も振り返って

「僕、諦めないから!」

とサトシに向かって片目をつぶる。

短い足を細かく動かし、チョコチョコ帰っていく後ろ姿を二人と二匹で見送った。

「あいつ……できるな。」

ショウがつぶやく。

「何が?」

人間のサトシがショウを見上げると、ショウは顎を摩りながら人間のサトシを見る。

「明日の約束して帰って行った。本当に諦める気はないんだな。」

「そんなことないよ。おいらちゃんと言ったもん。」

ショウはにっこり笑うと、人間のサトシを抱きしめる。

もちろん、間にいるサトシにはお構いなし。

「ギャー!潰れるって!」

サトシは二人の間から飛び降り、俺の隣に並ぶ。

「嬉しかった。ちゃんと言ってくれて。」

「当たり前だよ。そんなの。」

「でも、嬉しい。」

ショウがギュッと腕に力を込める。

「ショ、ショウ君。」

人間のサトシがショウの腕から逃れようともがく。

「ダメ。離したくない。」

「ショウ君、ここ外!」

「全世界に言いたい。サトシは俺の恋人だって。」

「ショウ君……。」

人間のサトシもゆっくりとショウの背中に腕を回す。

「言っても言わなくても、おいらはショウ君の、ショウ君はおいらの、でしょ?」

「サトシ……。」

ショウの顔が、人間のサトシの顔と重なる。

俺のところからは、月明かりがバックでよくわからない。

でもきっと、何してるんだかわからないキスをしているんだと思う。

「いいなぁ。俺も言われたかったな……。」

俺がポツリとつぶやく。

「何を?」

隣のサトシが首を傾げる。

「だから……」

俺は言葉に詰まる。

俺とサトシはこの二人とは違う。

そんな関係じゃない。

「言ったじゃん。特別だって。」

俺はチラッとサトシを見て、サトシの鼻先あたりまで鼻を下げ、溜め息をつく。

「……特別な……ベッドでしょ?」

「そうだよ。何か文句ある?」

サトシが鼻を上げる。

「……ないよ。」

俺がそう言うと、サトシがペロッと俺の鼻を舐めた。

「さっきの……引っ掻いたの、痛かった?」

「痛かったよ……。」

俺は鼻先を見つめる。

微かに引っかき傷の跡がある。

「おいら……。ちょっと嬉しかったかも……。」

「何が?」

「……教えてあげない!」

サトシは助走をつけて、ショウの足を上っていく。

いつの間にかショウと人間のサトシは体を離し、俺達を待っていてくれたらしい。

「さ、もうちょっと散歩しようか。」

人間のサトシがニコッと笑うと、二人と二匹はゆっくりと歩きだす。

まんまるお月様がそんな俺達を優しく照らしてくれる。

サトシが嬉しかった言葉……。

人間のサトシならわかるかな?

俺はそればっかりを考えて、気づいたら、家に帰ってた。










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