ナイスな心意気(5人)

ナイスな心意気 ⑨-10

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俺はしばらく猫の集会について考えていた。

実は昔、それらしいのを見たことがある。

あれも月の輝く夜だった。

散歩の途中で、マサキがいつもと違う道を歩き始めた。

どうしたの?と顔をあげると、

「ごめんね。買いたいものがあるから付き合って。」

と、マサキは知らない道を歩き続ける。

幼かった俺は、知らない道にワクワクし、尻尾を振ってマサキの隣を歩いた。

すると、右側の路地の奥にある公園に猫が入っていく。

あれ?と思って見ていると、数匹の猫が次々その公園に集まっていた。

「あれ、何してるの?」

マサキの足に頭を擦り付けて聞いてみたけど、マサキは気にせず、歩き続け、

その公園のことはわからないままだった。

でも、大きな猫が不気味に笑っていたのは覚えてる。

ちょうどさっきのトラ猫みたいに。

あの頃の俺はとっても小さかったから、

本当はそんなに大きな猫じゃなかったかもしれないけど。

「あのトラ猫、すごい貫禄。」

胸に戻ったサトシを撫でながら、ショウが人間のサトシに話しかける。

「うん。でも、なんかいい人そう。……あ、いい猫そう?」

人間のサトシがクスクス笑う。

サトシは黙ってそんな人間のサトシを見上げ、視線をショウに移す。

「いや、わからないよ。こいつが美人だから、狙ってるのかもしれない。」

ショウがサトシの鼻を人差し指で撫でる。

「あ、美人じゃなくて美猫?」

ショウもクスクス笑う。

「うふふ。そうだねぇ。サトシ君はかなりの美人さんだから。

 それに動きが綺麗だし。」

人間のサトシもサトシの背中を撫でる。

「美、ね、こ。」

ショウが、片方の口角だけ上げて笑う。

「サトシの美しさは人間にもわかるんだね。」

俺が人間達を交互に見ながら感心していると、サトシがフンッと鼻で笑った。

「ばかだね、ショウ君は。人間から見て綺麗だからって、猫の世界で綺麗とは限らないよ。

 それにおいら、綺麗って言われても嬉しくない。」

「じゃ、なんて言われたら嬉しいの?」

「それは……。」

サトシが首を傾げて考える。

「なんだろ?」

サトシは丸い目をまん丸にして俺を見つめる。

「俺に聞かれても……わかんないよ。」

「そいつにわからなくても、僕ならわかるよ。」

突然の声にびっくりして俺とサトシが振り返る。

俺らに気づいたショウと人間のサトシも振り返る。

見ると、ちー君とちー君の飼い主がニコニコしながら立っていた。

「こんばんは。」

ちー君の飼い主が人間のサトシに挨拶する。

「こんばんは。」

人間のサトシもにっこり笑って小さく頭を下げる。

「こちらはどなた?」

ショウが人間のサトシの肩を抱いて聞く。

「今日ね、ドッグランでお会いした、ちー君の飼い主さん。お名前は……。」

人間のサトシも覚えていなかったようで、

ちー君の飼い主は、笑ってちー君を自分の前に座らせる。

「すみません。まだ名乗っていませんでしたね。

 知念と申します。この子はちー。」

ちー君が、サトシ、会いたかった!とするどく吼え、飛び上がる。

ちー君のジャンプ力はすごい。

でも如何せん、体が小さいのでサトシに向かってジャンプしても、

ショウの太腿辺りまでしか届かない。

ショウはすぐにピンときたみたいで、この一人と一匹に対し、戦闘モードの顔になる。

もちろん、俺も。

知念さんとちー君vsショウと俺。

ショウはサトシを人間のサトシに預け、

俺らはサトシと人間のサトシを隠すように、ずいっと前に出る。

「ウチのサトシがお世話になったようで。」

ショウはにこやかに笑う。

「こんな時間に散歩なんて珍しい。」

俺は喉を鳴らして威嚇する。

知念さんもにこやかに返す。

「いえ、とんでもない。昼間はこちらがお世話になりました。

 サトシさんの笑顔にすっかり魅了されまして。

またお会いしたいと思っていたので嬉しいです。」

最初の一行だけショウに向かい、後はずっと人間のサトシを見つめている。

「綺麗な月が輝いていたので、素敵な出会いがあるような気がしまして。」

ちー君は飼い主の口調を真似してサトシを見つめる。

俺もショウもムッとして、でももちろん顔には出さず、自分の敵を凝視する。

「サトシの笑顔は人間も動物もなく引き寄せますからね。

 だから、私も大変なんですよ。狼を近づけないようにしなくてはならないので。」

イケメンが鼻で笑ってニヤリとする。

「それはそれは大変ですね。こんなに美しい人だ。近づいてくる狼も少なくないでしょう。」

知念さんも口調は丁寧だけど、目がまったく笑ってない。

「ええ、そうなんですよ。狼は羊の皮を被って近づいてきますから。

 優しいサトシでは見分けがつかなくて。

 つい、アドレスなんかをもらってきてしまう。困ったものです。」

ショウのオーラがいつもと違う。戦闘モードもMaxになってるらしい。

知念さんは何も言わず、ショウから目を逸らさない。

俺だって!

「素敵な出会いはあったの?」

俺はちー君を見下ろして言う。

「うん、もちろん。ほら、サトシ君に会えたもの。」

ちー君は、ショウの胸に抱かれているサトシに向かって片目をつぶる。

「サトシには昼間も会ったじゃない。」

「だから、また会いたかったんだ。僕は恋してしまったみたいだ。」

ちー君がロミオさながらにサトシを見上げる。

「月に引き寄せられて来たんだよね?ちー君の心はきっと月と同じだね。

 満ちたり欠けたり、すぐその姿を変えるんだろ?

 そして、ある日、赤い月に変わるんじゃないの?」

俺は意識して、いつもと同じ口調でちー君に話す。

「あはは、ショウ君、何?僕にヤキモチ焼いてるの?」

俺は鼻で笑ってちー君を見下ろす。

「ヤキモチじゃないよ。教えてあげてるんだよ。

 ちー君にはわからないみたいだから。」

ちー君も俺を見上げて目を逸らさない。

これは……先に目を逸らした者が負けだ。

知念さんとショウ。

ちー君と俺。

がっぷり四つで睨み続ける。

「二人とも!」

「おまえら!」

人間のサトシとサトシが同時に声を上げた。










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