ナイスな心意気(5人)

ナイスな心意気 ⑨-8

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人間のサトシが携帯を見て、微笑んだ。

どうしたの?と前足で人間のサトシの足を突っつく。

まさか、飼い主の誰かからメール?

あの、携帯という機械は優れもので、遠くにいても会話したり、文字を送ったりできる。

人間達はそれを大いに活用し、時間配分を考えたり、今いる場所を伝えあったりする。

「あ、ショウ君ね、もうすぐ帰ってくるって。」

なんだ。ショウからのメールか。

え?もう帰ってくるの?まだ帰ってこなくていいのに。

そうだ、散歩!早めに行ってもらわないと!

俺は自分のリードを玄関から持ってきて、

キッチンにいる人間のサトシの足を、またチョンチョンと叩く。

「え?散歩?」

人間のサトシはう~んと考えながらレタスをむいていく。

「ショウ君が帰ってくる前にご飯の用意したいんだけどな……。」

大丈夫だよ。ご飯なんてちょっとくらい遅くなっても!

ショウが帰ってくる前に、ささっと行ってささっと帰ってこようよ。

俺はしつこく前足で人間のサトシの足を叩く。

「やめときなよショウちゃん。ショウと一緒に散歩に行けばいいじゃん。」

ソファーの上からサトシが俺を見る。

「いや、先に行ってささっと帰ってくるよ。サトシは留守番してて。」

楽しい散歩をショウにも、他の飼い主にも、邪魔されてなるものか!

俺だって人間のサトシと二人の時間を楽しみしたい!

この時間なら、まだ他の犬達の散歩の時間より早い。

飼い主達は夕飯食べてるか、準備してるか……。

マサキの散歩は時間が決まっていないから、いろんな時間に散歩に行く。

だから、人間達がいつごろ夕食時なのかもわかる。

外を歩いてたら匂いがするからね?

あ、ここの家カレーだ!とか。

「おいらのすること、なんでショウちゃんが決めるの?」

サトシの目が光る。

「え?いや……サトシ、散歩に行っても歩かないし……。」

やばい!サトシの機嫌をそこねたか……。

「夜はおいらの時間だよ?おいら絶対行くから!」

サトシが一際高い声で鳴いた。

俺は溜め息をついて、人間のサトシを見上げる。

「どうしても今行きたい?」

俺は大きく首を縦に振る。

振る度びリードが揺れてカチャカチャと音がする。

「ご飯食べてからじゃダメ?」

俺は再びリードを鳴らす。

「仕方ないな……。」

人間のサトシが俺の口からリードを取ろうとしたとたん、ガチャンと大きな音がする。

俺と人間のサトシがその音のする方へ振り向くと、

サトシが棚の上に乗って、キラリと光る目でこっちを見ていた。

その下には、フォトフレームが落ちて、周りがキラキラ光ってる。

ガラスが割れたんだ。

「サトシ君、危ないからこっち来て。」

人間のサトシがすかさずサトシを捕まえに行く。

ガラスを踏まないように棚まで行き、サトシを抱き上げる。

「ショウ君、サトシ君を捕まえてて。」

人間のサトシはサトシをソファーの上に乗せると、急いでリビングの脇の扉を開ける。

俺はサトシの首を軽くくわえ、言われた通りに捕まえる。

サトシは嫌がることなく、くわえられている。

「これで、散歩に行く時間はなくなったね?」

サトシがニコッと楽しそうに笑った。

「わざとやったな!」

「ショウちゃんが我がまま言うからだろ!」

サトシは体を捻って俺の口から逃れると、俺の鼻先をペロッと舐めた。

「ショウちゃん、いい子で言うこと聞こうね?」

ウィーーーーーン。

人間のサトシが掃除機をかけ始めた。



『ショウが帰ってくる前に散歩計画』は見事に失敗し、

人間のサトシが床を雑巾で拭き終わった頃、ショウが帰ってきた。

「ただいま~。」

俺は習性で玄関へ向かう。

ショウは俺を見るなり俺の顎を掴んで顔を近づける。

「お前、サトシに我がまま言わなかったろうな?」

我がまま言おうとして、サトシに玉砕されました!

言わない代わりにショウの手を振りほどく。

ショウは俺のことなど構わずに、リビングを見回し人間のサトシの姿を探す。

洗面所から出てきた人間のサトシは、

「おかえり~。」

と、ショウにキスして抱きしめた。

「ごめんね。まだ夕飯の準備できてないんだ。」

「いいよ、いいよ。サトシだって忙しいのに、こいつらの面倒まで見てるんだから。」

ショウがチラッと俺らを見る。

「そんなことないよ。この子達がいて楽しいし。今は急ぎの仕事がないから。

 でも、まだ散歩に行ってないんだ。」

「俺が行ってやろうか?」

うわ!最悪……。

ショウと二人で散歩なんて、俺の楽しみ奪う気か!

「う~ん、いいよ。後で行く。おいらも散歩行きたいし。

 ショウ君だって疲れてるでしょ?」

「サトシの顔見れば、疲れなんて吹っ飛んじゃうよ。」

そう言って、ショウは人間のサトシにまたキスする。

今度のは何してるかわからないキス。

「あ……あんっ………ダ…メ……ご飯……。」

人間のサトシの体がどんどん後ろに反っていく。

「お前らイチャイチャしすぎ!おいらの飯、早くよこせよ!」

ちょっと不機嫌なサトシが大声を上げる。

「ほらぁ~。ショウ君も着替えて。」

人間のサトシはショウから体を離すと、ニコッと笑ってキッチンへ行った。










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