「タイムカプセル」
台風ジェネレーション(5人)

台風ジェネレーション Valentine編 上

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「カズ~、俺、見たんだ!」

マサキが鼻息荒く捲くし立てる。

「何を見たんですか?」

私がめんどくさそうに顔をあげると、目を真ん丸く見開いて、

私の耳に口を寄せてきた。

「サトシがチョコ買ってるとこ!」

「まさか!」

私は読んでいた本を閉じて、マサキの目をじっと見る。

嘘をついてるようには見えない。

でも、バレンタインにサトシがチョコ?

「ありえない。」

「だって、見たんだよ!昨日スーパーで。」

そこへジュン君とショウちゃんがやってきた。

「カズ~、今日はさ、裏の公園じゃなくて、土手の公園にしない?」

私の机に手をついて、ジュン君が机にお尻を乗せながら言う。

「あなた達、家にいなくていいの?」

ジュン君とショウちゃんは二人で顔を見合わせる。

「なんで?」

ショウちゃんが首を傾げる。

ほんと、この人達、朝から女の子達がそわそわしてるの、気付かないんですかねぇ?

学校に持ってくるのは禁止だから、仕方ない?

いや、仕方なくない!

そう、今日はバレンタインデー。

女の子がチョコをあげて告白する日。

テレビでもたくさん、やってるでしょうに。

「チョコ、たくさん来るよ?」

ああ、とショウちゃんはうなずいて、それが?と言いたげに腕を組む。

「俺、要らないから。」

「え?ショウちゃん、受け取らないの?」

マサキがびっくりして、また目を見開く。

あ~、この人、すぐドライアイになっちゃうよ。

私はそう思ってクスクス笑う。

「うん。もらってたらキリないし、お返しもめんどくさいし。」

「俺は全部もらって全部食べる。チョコくらい受け取ってあげればいいのにね?」

ジュン君はニヤッと笑う。

ジュン君には伝説がある。

幼稚園の時、クラスの女の子全員からもらったという伝説。

私はそれ以上の伝説をまだ見たことがない。

「じゃ、ジュン君は家にいなくていいの?」

私が聞くと、ジュン君はまたニヤッと笑ってショウちゃんの肩に手をかける。

「大丈夫。みんな、帰った頃を見計らって来るから。」

「それじゃ、家の前に行列できちゃうじゃん!」

マサキも伝説を思い出したのか、おおげさにそう言って笑う。

「できるわけないだろ!」

ジュン君に頭を叩かれ、片目をつぶるマサキ。

このマサキだって、毎年相当もらってる。

言わないけど。

「だから、今日は土手の公園、な!」

ショウちゃんがそう言って、自分の教室へ帰ろうとする。

「でも、これ聞いたら、遊んでなんかいられないよ?」

マサキがムフフッといやらしく笑う。

「なんだよ。言えよ。」

ジュン君が私の机から降りて、ショウちゃんに並ぶ。

「昨日ね……サトシがチョコ買ってた。」

「サトシが?」とジュン君。

「サトシ、誰かにあげるのかな?」と泣きそうなショウちゃん。

「あげるとしたら、俺らの誰かでしょ?」と自信満々のマサキ。

「え?どうして俺らってわかるの?」

私がその根拠を問いただすと、マサキはしれ~っと答える。

「他にいないっしょ?」

……マサキに根拠を聞いた私がばかだった。

でも、マサキは時々異様な勘を働かせる。

野生の勘?動物的勘?

だとしたら……誰?

みんなで顔を見合わせる。

私は一人一人の顔を見ていく。

チョコをあげるということは告白するということ。

ショウちゃんが、サトシのこと大好きなのは一目瞭然。

なのに、残念ながらサトシは気付いていない。

あげる可能性はあるか……。

サトシを独り占めしようと、いつも頑張ってるジュン君。

それが、たまに成功してるのも私は知ってる。

ジュン君はみんなのリーダー的なところもある。

サトシには、そこが魅力?

マサキはサトシに似てるところがある。

周りにいる人を、優しい空気で包むという特技。

似たもの同士は気心知れる?

いやいや、私にだって可能性はありますよ。

なんてったって、キスしちゃいましたからね。

サトシは寝てたけど。

ゲームを教えてあげるのは、いつも私だし。

誰にでも可能性はある。

でも、決定打にかける……。

みんな、顔を見合わせたまま固まった。

この中の誰かがサトシのチョコをもらったら……。

「誰がもらっても、文句言わない!」

マサキが口火を切った。

「そう…だよね。サトシの気持ちなんだから。」

ショウちゃんが乗っかった。

「へぇ~、みんなそれでいいの?」

自信満々のジュン君がニヤリと笑う。

「なんだよ。その自信ありありな感じ!」

ショウちゃんがくってかかる。

この二人はいっつもそう。

サトシのことになると見境なくなる。

「俺はいいよ?サトシがショウちゃんにチョコあげでも。

 それはサトシの気持ちなんだから。」

ジュン君は顎をあげ、目を細めてショウちゃんを見る。

「なんだよ!その態度!」

ショウちゃんが、ジュン君の襟を掴んだところでチャイムが鳴った。

休み時間も終わりだ。

「私もいいですよ。文句言いっこなしで。

 さ、教室に戻ってください。今日の放課後、楽しみですね。」

私も強気の顔で笑ってみせた。

三人は私に向かってうなずいて見せると、バタバタと教室に戻っていった。

私は机に肘をついて考える。

サトシが、私以外の誰かにあげそうになったら……絶対阻止してやる。

知らない内にクックと笑っていたようで、前の席の男子が怯えた顔で振り返った










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