「season」
season(5人)【41~60】

season (52) - タイムカプセル 高校生編 -

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次の日、サッカー部の部員達が水場にやってくると、

サトシが居場所がなさそうに立っていた。

白いシャツに、長めの髪が陽に透けて、はにかんだ様に笑いかけられると、

部員達は相手が男だとわかっていてもドキッとする。

一人の部員が声をかける。

「あ、ショウだろ?あいつ、ボール片付けてたから、もうすぐ来るよ。」

「……ありがとうございます。」

サトシがふにゃりと笑うと、みんなポワ~ンとサトシを見つめる。

そこへショウがやってきた。

「…!……サトシ?」

サトシに気づいたショウが、サトシに駆け寄って行く。

「……どうしたの?」

思ってもいなかったサトシの出現に戸惑いを隠せない。

「うん。……ちょっと時間ある?」

サトシが上目遣いでショウを見る。

その可愛さに、今まで凹んでいたのも忘れて気持ちが踊る。

ショウは、ハッと気づいて周りを見回す。

みんなが二人を見ている。

いや、二人というより、サトシを見ている。

その目は、明らかに男を見る目ではない。

ショウはサトシを隠すようにクルッと後ろに向けると、

「俺、ちょっと用事があるから。」

部員達にそう言って、サトシを抱えるようにその場を後にした。

「先輩に怒られんぞ!」

後ろから、二人を追いかけるような声と、笑い声が聞こえてくる。

ショウは、怒られるくらいで済むなら、喜んで怒られるよ!と、心の中で叫んだ。



二人は歩いて中庭に向かう。

中庭は、夏でも日陰があって風が通る。

ショウはサトシに話しかけてもいいものか、考えあぐねていた。

何か話しがあって来たはずなのに、サトシは黙ったまま何も言ってくれない。

ショウは、サトシが話してくれるのを待つことにした。

二人が黙ったまま歩き続けると、すぐに中庭に着いた。

いつもランチを取るテーブルとは別の、木の下のベンチに腰を下ろす。

夏休みのせいか、時間のせいか、人影はなく、話をするにはうってつけだ。

「あ、……あのね……。」

サトシが思い切ったように話し始める。

「うん?」

聞きたいことは山ほどあったが、ショウはできるだけ穏やかに

サトシの話を聞くことにした。

「ショウ君……ごめんなさい。」

サトシがいきなり頭を下げた。

ショウは何がなんだかわからず、おろおろする。

「え?あ、え?何?何がどうした?」

ショウの慌てぶりにサトシが顔を上げる。

「なんで謝るの?」

ショウが大きな目をさらに大きくして、目をパチクリする。

その様子がおかしくて、さっきまで緊張していたサトシの心がほぐれていく。

「だって……ショウ君にひどいこと言って……。」

「ひどいこと?」

「うん……。」

サトシが下を向いて、足を揺らし始める。

「え?俺、ひどいことなんか言われたっけ?」

「……イヤって言って逃げちゃったり……。」

「ああ……。ひどくはないよ。」

ショウは優しく微笑んでサトシを見つめる。

「ひどくはないけど、何がイヤなのか、教えてくれる?」

「それは……。」

サトシは足を揺らしたまま、地面を見つめる。



ショウにイヤの理由など、言えるわけがない……。

でも何も言わないのも……。



サトシは必死で考えて、ごまかすよりは言えるとこまで言おうと思った。

「なんか、ショウ君の……見ちゃいけないもの見ちゃったみたいで……。」

「え?見ちゃいけないもの?」

ショウはまた目をパチクリする。

「うん……。」

「先輩と一緒の時?」

「うん……。」

「……Tシャツ、脱いでたから?」

「……わかんない。ショウ君の裸なんて見たこといっぱいあるのに……。

 だから、おいらが悪い。ごめんね。」

「じゃ、階段の時は?」

「あれは……。」

触れられて、意識したなんて言えっこない。

サトシの足が大きく揺れる。

「本当にごめん。」

言うと同時に足を止め、ショウの方を向く。

その目は潤み、眉尻は下がり、子猫のように小首を傾げている。

「許してくれる?」

「許すも何も……。」

ショウはサトシから視線を逸らす。

このまま見つめられ続けたら、理性の崩壊も時間の問題だ。

「俺は怒ってないから。」

「うそ……本当は怒ってるよ……。だって、おいらを見てくれない。」

「それは……。」

ショウはチラッとサトシを見て、また視線を外す。

そんな顔、マジで見たら3秒もたないから!

そう思っても、サトシが黙ってショウを待っているのがわかると、

ショウはため息をついてサトシの方を向く。

無心だ……無心になるんだ。

「怒ってないよ。」

ショウは笑顔でサトシを見る。

「うん……わかった。……でもなんか、ショウ君、洋服屋さんの店員さんみたいな顔。」

うふふと、サトシが笑う。

その顔に安心して、ショウも笑う。

誤解が解けて、本当によかったとショウは思った。



え?誤解……?見ちゃいけないものって……。

ちょっとは意識してくれてるってこと?

いやいや、何でも自分に都合よく考えちゃダメだ。

先輩の筋肉にびっくりしただけかもしれない……。



ショウはそれでも嬉しくて、サトシに向かって微笑んだ。

サトシもショウの笑顔にホッとする。

「じゃ、俺、部活戻るわ。」

ショウはゆっくり立ちあがると、サトシの頬を撫でた。

「ほら、髪の毛食べてる。」

風に揺れた髪が、サトシの唇の端に張り付いていたのを、指で撫でるようにはがす。

ショウは笑顔を残して、走って部活に戻って行った。

残されたサトシは、頬から広がる熱のせいで、さわぐ鼓動に戸惑っていた。

「おいら……ショウ君と旅行に行って……大丈夫なんだろうか?」

サトシは青空を見上げて、大きく息を吐いた。










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