Welcome to our party ⑤

智が家のドアを開けると、家の中はシーンと静まり返っていて人の気配がしなかった。

玄関を見てみると、和也の靴だけが真ん中にハの字型に投げ捨ててある。

「ニノ……部屋かな？」

智はリビングのドアを開け、中を見回すが、和也の姿は見えない。

大きなテレビ画面も真っ暗だ。

リビングの電気を点け、階段を上がっていく。

和也の部屋の前を通ると、微かに機械音が聞こえてくる。

「ニノ？」

「誰～？」

中から和也の声がする。

智はドアノブに手を掛け、グルッと回すと、部屋の中へ入っていく。

「おいら。」

部屋の中はテレビ画面の明かりのみで、薄暗い。

暗がりの中で、和也をテレビ画面の青白い光りが照らしている。

「あ、おかえり～。みんなまだ帰ってないよ。今日の夕飯は俺だけど、

どうする？そろそろ作ろっか？」

和也は振り向きもせず、ゲームを続ける。

「ん～、お腹空いた……。」

智は和也の隣に座ると、和也の肩に背中を当てた。

「だぁ～っ！じゃま！」

「お腹空いて……動けない……。」

「わかったから！ちょっと待ってて。すぐ何か作るから……。」

和也はコントローラーを握り締めたまま、肘で智の背中を押した。

智は仕方なく和也の背中に寄りかかる。

「ねぇ……ニノ……。」

「はい？」

和也の顔を照らす青白い光りは、和也を寄り繊細に、気難しそうに映し出す。

「まだ、相葉ちゃん帰ってこないね……。」

「そうですね……。」

和也は不審そうな顔で、チラッと智を見る。

「早く帰ってくるといいね……。」

「もうすぐ帰ってくるんじゃない？さっきメール来てたよ。

　あ、翔さんは遅くなるって。潤君は今日は帰ってこれないかもって。」

和也は智に寄りかかると、コントローラーを床に置いた。

「どうしたんですか？」

「別に……。」

智も背中を押し返す。

「ニノぉ…。」

「何？」

「なんでもない……。」

「なんなんですか。」

和也は振り返ると智の脇腹をくすぐる。

「なんでも……クッ…ないよ……アハハハ。」

思いっきりくすぐられて、智が身を捩って抵抗すると、

和也は後ろから抱きしめるように、くすぐり続ける。

「ダメ……たんまっ！……ニノ！……アハ…ッ。」

智は和也の手を握り締めると、思いっきり引き離した。

「ニノ～！ただいま！ご飯……」

雅紀が勢いよく和也の部屋のドアを開ける。

和也が後ろから智を抱きしめ、脇に添えられた手はＴシャツを捲り上げる、

仲睦まじい姿が雅紀の目に入る。

「あ……ごめん……おじゃましました…。」

そのままそっとドアを閉めていく。

「待て！相葉ちゃんっ！何か誤解……。」

智の声を最後まで届けることなく、ドアはガチャリと閉まった。

「ニノ……ごめん…。」

「何が？」

「相葉ちゃんが誤解した……。」

「こんなのいつものことでしょ？誤解する方が変なんだよ。」

「でも……いいの？」

和也はニコッと笑って智の体をギュッと抱きしめる。

「あなたが心配する必要、全然ないから。って、考えすぎ！」

また和也が智の脇腹をくすぐると、智は耐えられなくて和也の腕から逃げ出す。

「んっもう！ニノ、エッチ！」

智は両手で脇腹を隠した。

「あんたがそんなんだから誤解されるんだ！」

和也は智を指差して、ゲラゲラ笑った。