「短編」
冬の歌(やま)

二人の記念日 ~ やま ~

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今日はクリスマス。

でも、俺も智君も仕事が忙しく……。

二人でお祝いする予定はない。

俺はなんとか、24日のうちに帰ってこれたけど、

智君はまだ帰ってこない。

シャワーを浴びて着替えると、ガランとしたリビングで、ソファーにもたれる。

こんな時はゆっくりビールを飲みながら、昔のことを思い出したりする。

知り合ってから、もう20年近く経つ。

あれ?俺らの付き合い初めっていつだっけ?

う~ん。京都?京都か?

気持ちが通じ合ったのは……京都の夜だよな……。

いや、待て。

海ですでに通じ合ってた?

でも、相手の気持ちは確認してないから……。

やっぱり京都か。

でも、付き合おうって言ってないよな?

ってことはまだ、付き合ってない?

付き合ってないのに同居?

同居というよりは同棲?

あれ?いいのかこれで?

記念日マニアの俺が、これでいいのか?

そんなことを考えながらビールを1本空けると、玄関のチャイムが鳴る。

こんな時間に?智君なら鍵開けて入ってくるはずなのに……。

俺が急いで玄関のモニターを見ると、智君が眉を八の字にして立っている。

「智君?」

俺は急いで玄関を開ける。

冷たい空気が、智君と一緒に玄関に入り込んでくる。

それと一緒に大きな荷物……。

「どうしたの?これ?」

「もらったんだよ。」

智君は温かい室内に入ったせいか、頬を子供のように赤くして、

うんしょ、うんしょとそれを廊下にあげる。

1m20cm位のもみの木。

二人でリビングに持って行き、ソファーの脇に置いてみる。

「結構いいんじゃない?」

智君が満足そうにニコッと笑った。

「飾りつけどうするの?」

俺が聞くと、智君はまたニコッと笑って、鞄の中から箱を取り出した。

「これ、飾ろうよ。」

そう言って開いた箱の中には、キラキラ光るアルミで飾られた、

色とりどりのチョコレートやキャンディ。

「マネージャーがくれた。」

智君が嬉しそうに、箱の中からステッキ型のキャンディーを取り出す。

俺もプレゼント型のチョコレートを取り出して、くくりつけていく。

10分もすると、ツリーは綺麗に飾られて華やかになる。

「おお~っ!いいんじゃない?」

俺が感嘆の声をあげる。

「いいよね?ちょっと足りない?」

「こんなもんでしょ?」

俺はにっこり笑って智君を見る。

智君もにっこり笑ってツリーを見てる。

「じゃ、カンパイしようか?」

俺はキッチンからワインとグラスを持ってくる。

「お?いいねぇ。」

智君はニヤッと笑ってグラスを受け取る。

俺がコルクを開けると、ポンッと音がして、瓶の中に空気が流れ込む。

二人分のワインを注ぎ、瓶をテーブルに置くと、

二人でグラスをかざす。

「今までいろんなことがありました。」

「え?挨拶とか、始まっちゃう?」

智君がクスクス笑う。

「喧嘩もしたし、仲直りもした。」

「ほとんど翔君が悪いけどね?」

「え~っ?俺?」

「そうだよ。翔君のヤキモチが原因じゃん。」

「ヤキモチ焼かせる方が悪い!」

「え?そうなの?」

「そうなの!」

俺が断定的にそう言うと、また智君がクスクス笑う。

「智君を傷つけたこともあったかもしれない。」

「ないよ。そんなの。」

「ほんと?」

「ほんと。」

智君が目をつぶってうなずく。

「普段はなかなか言えない、照れくさい言葉も、今日は特別な夜だから、

 胸を張って言いたい。」

「って、いつも言ってるじゃん。」

「言ってる?」

「言ってるよ。」

「なんて?」

「……アイ…シテル……って。」

智君が頬を染めて、下を向く。

「え?俺、いつ言ってる?」

「気づいてないの?」

「ない。」

俺、意識しないで、そういうこと言ってるのか?

「……夜……とか。」

「夜?」

「……ベッド……とか?言わせんなよ!」

智君が口を尖らせてそっぽを向く。

俺はフフッと笑った。

意識せずに言ってたね。確かに。

そういう時って、気持ちが溢れちゃうからね。

「じゃ、今日は違う言葉を……。」

智君が顔を俺に向け、次の言葉を待っている。

俺は目をつぶって息を吸い、ゆっくり吐くと目を開けた。

「智君、俺たち、付き合おう!」

「…………。」

「ね?」

「……はぁ~?」

「だから、付き合おう!」

「……付き合ってないの?俺たち。」

「う~ん、考えたんだよね?そしたら、どこから付き合ってたのかわかんなくなって……。」

「みんな、そういうもんでしょ?」

「だから、あえて、今日を付き合い始めにしようかと……。」

智君は大きな溜め息をつくと、ソファーにドサッと腰掛けた。

俺もゆっくり隣に座る。

「付き合い始めなんて、いつでもいいじゃん。」

「そうなんだけど……。」

俺が納得いかない顔をしていたのか、智君がクスッと笑って、

「じゃ、初めてチューした時でいいじゃん。

あん時から、おいら翔君好きだったもん。きっと。」

「智君~!俺も!俺もあん時、すでに智君、好きだったと思う!」

俺の顔を見て、満足したのか、智君がグラスを俺の方に差し出した。

「ね?じゃ、カンパイしよ?」

俺もグラスを差し出して、背筋を伸ばす。

「……聖なる夜に……メリークリスマス。」

「メリークリスマス。」

二人でグラスを合わせると、トライアングルみたいな綺麗な音が響いた。

ツリーの飾りがキラキラと輝いている。

今日は二人で始めてツリーの飾りつけした記念日……。

そんな記念日いらない?

いいの、いいの。そうやって記念日を増やしていきたいんだから。

あ、待てよ?

初めてのチューと付き合い始めた日が一緒っていうことは……。

記念日、一日減ってない?

俺は智君を見る。

智君は上機嫌でワインを口に運んでいく。

ま……いっか。

俺もワインを口に含む。

智君……その髪も、指も、透き通るような声も、俺の心を熱くしてくれる。

こんな気持ちにさせてくれるのは、智君、あなただけだよ?

俺は智君の肩に腕を回し、俺の胸の中へと誘なう。

さぁ、今日は俺と夢の中へ……。


メリークリスマス♪










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