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「短編」
冬の歌(やま)

メリークリスマス ~ にのあい ~

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「いらっしゃいませ~。」

クリスマスソングの流れる街。

赤、白、緑で飾られたこの時期は、どこか浮かれてて、なぜか忙しくって。

「はい。ありがとうございます。」

空からは、天使の贈り物がゆっくりと辺りを白く染めていく。

あまりの寒さに、私は隣に並ぶあったかい笑顔をチラッと見る。

あったかい笑顔は、全身で笑いかける。

「寒いね~。」

両手を擦り、足をバタつかせてニッコリすると、すぐにお客さんに声をかけられる。

誰でも声をかけたくなるような、その笑顔が眩しくて、私は目を細める。

「ニノ、そのカッコすっげぇ、似合ってる。」

そう耳元で囁く相葉さんに、私はちょっと頬を染める。

大丈夫。ちょっとくらい頬が染まっても、このカッコならばれないはず。

「そういうこと、簡単に言うんだから……。」

私が小さくつぶやくと、相葉さんはまた、ニカッと笑った。

それがなんだか悔しくて、

「あ~!でも寒い~っ!」

そう言って、冷たい手を相葉さんの頬に擦り付けた。



「だからさ、バイトしようよ~。」

相葉さんが持ちかけてきたバイトの話はクリスマスのサンタ。

サンタって言っても、ケーキ屋でケーキ売るサンタ。

ほら、よく見るでしょ?

クリスマスの間だけ、街中でサンタの格好して売ってる人。

あれ。

「時給による。」

私が真面目な顔で言うと、

「また~、ニノはそういうことばっかり言う。」

相葉さんは笑顔で私の両肩を握る。

「おれら、金欠なんだよ?クリスマスも年末年始もこれじゃ、遊べないよ?

 お金のない高校生なんて、なんにもできないんだから!」

「でも、寒い。」

「寒いから、時給もいいんでしょ?3日間だけでいいんだって!

 こんなおいしいバイトないよ?」

相葉ちゃんが私の手を握る。

「一緒に、やろうよ~。」

両手で私の手を包み込むと、大きく揺する。

「……しょうがないなぁ……いいですよ。」

私がしぶしぶ承知した風を装うと、相葉ちゃんが、ニカッと満面の笑みで笑う。

「ありがとう!ニノ!」

笑顔が眩しくて、私は目を細める。



「あれ?相葉さんは?」

気づくと、あなたがいなくなってる。

私は隣にいるケーキ屋のおじさんに声を掛ける。

「ああ、なんかね、今日は用事があるって、さっき帰ったよ。」

「か、帰ったぁ~?」

帰るってどういうこと?

あなたが誘っといて、自分だけ帰る?

ありえないでしょ!

「いつ?」

「え?ついさっきだけど……。」

私の勢いに、おじさんは似合わないサンタのカッコでたじたじする。

「ちょ、ちょっとっ!」

おじさんの声が遠くなっていく。

私は思わず走り出していた。

駅前の雑踏を掻き分けて、改札に向って。

改札を強行突破して、いつものホームのいつもの場所に走る。

まだいる?

いいや、きっといる!

私は夢中で走る。

すれ違う人達が、振り返るのも気にせずに、いつもの場所までひた走る。

こんなに走ったの、何年ぶり?

ホームに下りると、ちょうど電車が来たとこだった。

「相葉さん!」

椅子に座っていた相葉さんが、立ち上がった。

「相葉さん!」

私はもう一度、今度はもっと大きな声で名前を呼ぶ。

相葉さんが私の声に気づいて振り返ると、びっくりしたように目をまん丸にして立ち止まる。

「ニノ?……どうしたの?」

「はぁ……っ…どうしたのじゃないでしょ!」

私ははぁはぁいう息を、少しずつ整えていく。

「え?……ああ、ごめん。」

「はぁ…ごめんじゃないでしょ!」

私はゆっくり相葉さんに近づいていくと、

ホームの人は、どんどん電車の中へ消えて行った。

「バイトは3日間の約束じゃなかったっけ?」

相葉さんはすまなそうに顔を伏せる。

「ごめん……。今日は家で……クリスマスだから……。」

「はぁ?家?」

私が呆れて声をあげる。

「だから、ごめん!」

相葉さんは顔の前で手を合わせ、頭を下げる。

「断れなかったんだよ。」

知ってますよ。あなたが家族をとても大事にしてること。

「それに……。」

相葉さんはチラッと私を見て、言い淀む。

「それに、何?」

私は相葉さんの前で立ち止まる。

「なんでもないよ。」

「なんでもないって何?」

「だから、なんでもないんだってば!」

相葉さんは私から目を逸らして、チェッて顔をする。

「相葉さんは、今日、私と一緒に過ごしてくれないんですね。」

「え?だって、そんなこと、一言も……。」

「言わなくてもわかるでしょ?」

「わかんないよ。」

「今日は特別な日でしょ?」

相葉さんの顔が華やいで、ちょっと頬を染めながら私を見つめる。

「お誕生日おめでとう。」

私はニッコリ笑って、相葉さんの顔を見上げる。

「ニノ……。」

相葉さんは私をギュッと抱きしめる。

「覚えてないと……思ってた。」

「覚えてますよ。毎年、大きな声で言ってるじゃない。

 クリスマスと一緒にされるって。」

相葉さんはひゃっひゃと笑った。



降り続けていた雪は街を綺麗に染め上げる。

けれど、さっきまでの淋しさはうそのように、心がポカポカと温かい。

「なんか、ニノ、ケーキの上の苺みたい。」

相葉さんはまじまじと、私のカッコを見つめてる。

ハッと気づく。

サンタのままだ……。

私は急に恥ずかしくなる。

でも、ま、いっか?

このカッコなら、赤くなってもばれない。

私はもう一度繰り返す。

「相葉さん、お誕生日おめでとう。そして、メリークリスマス!」

そうして、相葉さんの唇にチュッと唇を重ねた。

「ニ、ニノ~!」

相葉さんが私をギュッと抱きしめる。

「一瞬すぎ~っ!もう一回!」

「もうダメ。」

私は片目をつぶって、ふふっと笑った。



ね、相葉さん。

来年もサンタのバイト、一緒にしよっか?

ね?










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