ナイスな心意気(5人)

ナイスな心意気 ③

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俺たちは、いつものように安らぎの時間を過ごしていた。

俺の前足の間でうずくまるサトシ。

サトシの匂いに包まれてまどろむ俺。

今日はカズナリまで静かに居眠りしている。

ああ、癒される穏やかな時間……。

そこへガチャガチャと玄関の音。

「ただいま~。」

マサキの匂いが風に乗って漂ってくる。

あれ?マサキだけじゃない?

俺は首を上げ、サトシを潰さないようにそっと起き上がると、玄関に向った。

玄関には、マサキに向って楽しそうに話すカズがにっこり笑って立っていた。

カズはマサキの友達。

たまにウチにも顔を出す。

ちょっと不思議な匂いのするヤツで、優しいんだか意地悪なんだかよくわからない。

来ると必ず、サトシを猫っ可愛がりする。

「おっ、ショウ、出迎えご苦労!」

「ショウしか出迎えてくれないんだよ~。ウチの子達、薄情でさ。」

マサキが笑いながら、俺の頭を撫でる。

俺はお愛想で、カズに向って尻尾を振って見せる。

でも、カズにはわかっているのか、俺が尻尾を振ってもニヤリと笑うばかり。

マサキみたいに頭を撫でたりしない。

あれ?何か……嗅いだことのない匂いがする……なんだ?

生き物……?

匂いの元は、マサキの大きな荷物からだ。

俺はその荷物の匂いをクンクン嗅いだ。

「こら、まだダメだから。お前達の新しい仲間だよ。」

マサキは楽しそうに笑って、俺を端に押しやった。

二人はリビングまで来ると、ソファーに腰掛け荷物を置く。

大きな荷物はテーブルの上に置かれ、袋が開けられていく。

さっきまで寝ていたカズナリも、何が起こるのかと首を傾げて様子を見ている。

サトシですら、めんどくさそうにしながらも、首を上げて様子を伺う。

俺もソファーの前に座り、袋の中を大人しく待っていた。

「お前、これ以上飼って大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。ちゃんとペットショップで聞いてきたから。」

ガサガサと袋を開けると、大きな水槽が顔を出す。

水槽の中には砂が敷き詰められ、ところどころに石や流木が置いてある。

「とりあえず、あっためてあげないと。」

そう言ってマサキは電源を入れた。

水槽の中が青白く光り、ソイツが水槽の端に浮かび上がる。

なんだ?こいつ?

石に紛れてわからなかったが、10センチ程のソイツは目をつぶってじっとしている。

俺は水槽に鼻を押し付けて匂いを嗅いでみた。

「こら、ショウ。びっくりしちゃうだろ?離れて。」

マサキが手で俺の鼻をむこうに向ける。

俺は首を振ってまたソイツを凝視する。

いつの間にか、サトシもテーブルの上に乗っかってソイツを見ている。

「へぇ、結構可愛いね。これ、なんて言う種類?」

「アクアフレイム。トウブクビワトカゲって言って、イグアナの仲間らしいよ。」

「え?じゃ、こんな大きくなる?」

カズが手を広げて見せる。

「なんない、なんない。大きくなっても尻尾入れて30センチくらいかな?」

白い砂の上で、エメラルドグリーンのソイツは置物のように動かない。

死んでんじゃないの?

「ワン!(起きろよ)」

俺はソイツに声を掛けてみる。

「ほら、ショウ、ジュンがびっくりするから。」

今度は体ごと払いのけられる。

「ジュン?名前ジュンなの?」

「うん。この派手な感じはジュンでしょう。目力もあるし。」

マサキは笑ってジュンをじっと見る。

「俺がオウムで、こいつがジュン?納得いかないね。」

「いらしゃいませ~。いらっしゃいませ~♪」

突然カズナリが甲高い声をあげる。

「うるさいよ。おしゃべりカズナリ!」

「ちょっと、なんか、俺が言われてるみたいじゃん……。」

カズがジト目でマサキを見てる。

「ごめんごめん。」

マサキも笑いながら謝ってるけど、悪いと思ってないね。きっと。

「何?教えたの?」

「いや……、教えた記憶はないんだけど、よく言うんだよね。

 お客さんが来たり、CDかけると。こいつほんとよくしゃべるから。」

「うるさいよ!」

またカズナリが喚く。

「すげぇな。会話みたい。」

「な?わかってるみたいにしゃべるだろ?後。ウィンクもしょっちゅうする。」

「ウィンク?マサキはできないのに?」

カズがクスクス笑う。

「笑うなよ~。」

そんな話をしていると、サトシが前足でジュンの水槽を撫で始めた。

「サトシも気になるの?」

カズが優しく声を掛け、サトシを抱き上げる。

「ミャァ~。」

サトシが可愛い声をあげると、カズはサトシの顔に頬ずりしてチュッとした。

マサキもカズもサトシにこれ、しょっちゅうする。

キスって言うんだって。

俺にはしたことないけど、サトシにはキスしたくなるらしく、

抱き上げると決まってチュッとやる。

ちなみにカズナリもやられたことはない。

あいつにしたら、つつかれそうだもんね。

そんな話をしていると、ジュンが動き出した。

「お、動いてる。」

マサキが気づき、水槽を覗き込む。

ジュンはゆっくりと石の上に上っていく。

「あったかいとこに行きたいんだね。」

マサキは蓋をはずしてジュンを掴むと手の平に乗せる。

「ショウ、ほらご挨拶。ジュンだよ。」

そう言って、俺の鼻の前にジュンを差し出す。

俺はじっとジュンを見る。

ジュンもじっと俺を見る。

俺はマサキの手ごと、ペロッと舐める。

すると、マサキの手からジュンが落ち、サトシがカズの腕からすり抜けて、

ジュンに飛びついた。

「サトシ!」

サトシはその柔らかい前足で、ジュンをテーブルの上で捕まえている。

「え?……サトシ、つぶし…ちゃった……?」

マサキが急いでサトシを抱き上げる。

ジュンはじっとして動かない。

「死んじゃった……?」

カズもじっとジュンを見る。

ジュンはゆっくり目を開け、首を回すとサトシを見つめる。

マサキはびっくりしてジュンとサトシを交互に見ると、

そっとサトシをジュンに近づけていく。

「ダメだよ。サトシ。この子は仲間なんだから。ジュンだよ。」

サトシは不思議そうにジュンを見て、鼻を突き出してクンと匂いを嗅いだ。

ジュンはそれに合わせるように顔を前に出す。

マサキの言うキスをして、2匹は見詰め合う。

なんか、俺はおもしろくない。

クゥ~ンと小さく鳴いて、俺も2匹に近づく。

ジュンはゆっくり体を捻ってサトシに近づき、サトシの顔に体を摺り寄せる。

「お。気に入ったみたいだね。」

マサキはカズを見てニコリと笑うと、テーブルの上にサトシを乗せた。

じっと動かないサトシの後ろ足の間に、ジュンがもぐりこんでいく。

「なんだこいつ、スケベだな。」

カズがニヤニヤ笑う。

「本物のジュンと一緒~。」

マサキとカズがゲラゲラ笑う。

ジュンはじっとして動かない。

サトシも卵を温めるみたいに優しく体を横にする。

サトシに包まれたジュンは気持ち良さそうに顔を上げ、サトシの足を枕にして目をつぶった。

なんか全然おもしろくないんですけど。

俺はテーブルの上に鼻を乗せて、サトシの背中にくっつける。

「ショウ!ヤキモチ!ヤキモチ焼いちゃダメよ~」

カズナリが羽をバタバタさせて叫ぶ。

「あはは。こいつ頭いいな~。」

「カズみたいだろ?」

二人がまた笑って俺らを見回した。

ジュン……なかなか手ごわいヤツが現れた。










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